表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全無欠の革命歌  作者: ウエハル
序章
6/88

装填せよメタル・スター その2




釘は高速でリアスのもとへと飛び出した。

「(めり込んだ釘が跳ね返った!?)」

ちょうつがいにめり込まれた釘はトランポリンで跳ねるように跳ね返った。

ユノは手をかざし負傷しているリアスに向かった釘を「引き寄せ」ようとする。

「ノンノンノンノン~」

ミュラスは陽気に指を振った。

あくまで引き寄せるだけであり、速度を完全にゼロにすることは不可能。つまりはユノに的が変わっただけに過ぎない。

「っ…!」

すぐさまベッドに乱雑に乗っていた毛布を引き寄せ手に掴むと、釘に被せるようにしてガードする。

毛布が割と分厚かったため、釘は2本だけ先を出した状態で止まったが、一本だけ貫通してしまった。

「くァッ…!」

ユノの肩に突き刺さった釘は血を伝わらせる。

「けっ!」

気にくわない顔をするとミュラスは屈み、素早く既に手に持っていた大量の釘を床にめり込ませた。


手のひらサイズ以下の物体を他の物体にめり込ませることができ、めり込んだ物体は約3秒後、かなりの速さで跳ね返る。それがミュラスの能力『リロード』


床から跳ね返った無数の釘は、雨のようにリアスに向かった。

「ウォッ!」

リアスは左手を釘に向け、「反発」させた。

反発した釘は空中で勢いが止まり、床に落ちる。だが床に落とせたのは目の前にあった釘だけ、残った釘はリアスの脇腹に当たった。

「ビンゴォッ!!」

ミュラスが満面の笑みでガッツポーズをしたその直後、隙を見せずにリアスはミュラスに向かって走りだした。

反発を喰らわせればいい。それだけで相手はノックアウトだ。

「バカだな!」

ミュラスは再びポケットの釘に手を伸ばす。

しかしそこに釘はなく、顔をしかめる。

「あァ!?」

「釘は貰った…!」

血を滴らせ、ユノは唇の端を上げる。ユノの左手には大量の釘が手を切り裂きながらも握られていた。

ミュラスは眉間に皺を寄せるが、不適に笑んだ。


「保険は大切だぜェェーーっ!!?」

そう言うと、指を下の前歯に押し付ける。キーボードを押すときのように、歯は歯茎にめり込んだ。手のひらサイズ以下であれば人体でもなんでもいい、例え歯でも骨でもなんでもいいのだ。

ミュラスは方向を合わせるために即座に下を向き、顎をしゃくれさせた。

少し斜め気味に歯は抜け、走り寄ってくるリアスに向かって飛んだ。その歯は差し歯、血を伴うことはなく簡単に吹っ飛んだ。

リアスは当然の如く飛んできた歯を反発させた。

「無駄ァッ!」

ミュラスは口を大きく開け、両手を器用に使い下顎の10本以上の歯を押し込んだ。顎が外れるのではないかと思うくらいに口を開け、口角を広げた。

鋭利な物体が体に食い込み、悲鳴を上げる。


「アガホァァアッ!!!」

歯ではなく蛍光灯がリアスではなくミュラスの体にほうに食い込んだ。既にユノがリビングにあった丸型蛍光灯を引き寄せていたのだ。

割れた蛍光灯の破片は背中に食い込み、ミュラスは前方に倒れ床に頭をぶつける。

それと同時にミュラスは歯を食いしばった。

「あっ…!」

口の中の歯が全く無い感触に違和感を覚えたミュラスは、察した。忘れていたのか、ただの反射だったのか、口を閉じてしまった以上、もう逃れることはできない。


「初戦は上出来ってとこかな」

ユノの勝利の宣言と共に、ミュラスの差し歯は自身の上顎に刺さった。

鈍く気色の悪い音と痛みはミュラスの体を突き抜ける。

「イガァァアーーッ!!!!」

無様な悲鳴は家中に響き渡る。ユノとリアスは痛みを我慢しながらそのザマを見つめる。

「ミュラス…目的はなんだ?「あの人」ってのは誰だ?答えないと殴るッ!」

勝ち誇った言葉に、ミュラスは額に血管を浮かび上がらせる。

突如、ミュラスは飛び起きた。

「まだ負けてねェェーーッ!」

理解しがたい何かの信念はミュラスの闘志を滾らせる。するとミュラスは震える指を顔に向けたと思うと、右目に決死の覚悟で指を突っ込もうとした。

「ユノ!頼んだよ!」

リアスは痛む右手を構え、左手で狙いを定めると、リアスは自殺まがいのことをするミュラスに向かって走りだした。

それは、事前に遊び半分で言っておいた必殺らしい技。

「答えなくても殴る!!」

リアスが叫ぶと、ミュラスの体はリアスのもとへと吸い寄せられた。

大きく振りかぶると、顔面に向かって拳を伸ばす。

「ウォォォオーーッッ!!!」

最後にめり込んだはのはリアスの拳だった。

骨を砕く重い一撃は走馬灯を見せる隙も与えずミュラスを吹っ飛ばす。反発入りの拳はユノの吸引でさらに威力を増す。

顔面を殴られた激痛は歯が突き刺さった以上の痛みで、ミュラスの顔は見る影もなくなっていた。

体をガタガタと震わせ、口を開いた。


「俺は……強ェんだ……自分で言―――

「あーうるせぇうるせぇ、黙ってろ」

清々しくも心に鍵をかけた暗い声。

突然コーヒー片手に現れた2人目の敵。ロングコートを着た怪しげな雰囲気の男。

「まだ一日目なのに…」

ユノは気怠く色を失う。リアスも同様にその男を睨んだ。


「じゃあ明日……あー、やっぱ明明後日来るわ、じゃあな」

男は倒れるミュラスの横に立つと、その男とミュラスは一瞬で消えた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ