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完全無欠の革命歌  作者: ウエハル
共感の子供
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幽霊屋敷へお宅訪問 その2




絶えず気味の悪い囁きが響く中、リビングに入って部屋を片っ端から見回す。


「…ぁ……ひゃぅ…………」

相変わらずコリオは恐がっている。

「お前の鏃で跳ね返せばいいだろ。先越される前に言っとくが、これがアリスの能力。あらゆる音を創り出し、あらゆる音を遮断できる。『ソニック・ハイウェイ』だ」


アレクが若気の至りで命名した能力名。昔っから名前に似合わない場所だが、アリスは気に入っているらしい名前だった。

ちなみにこれ以外にも音を読み取る力がある。おそらくアリスは超音波を反響させて二人の位置を掴んでいるはず。


「よしっ。冷たいけどこれで余裕よ」


コリオはまるで勝ち誇ったかのような笑みを浮かべる。

コリオ『セヴンズ・スター』の鏃を耳が痛くなるくらいに押し当て、音を遮断した。完全というわけではないが、いちいち怯えることもなくなるだろう。

オンボロのクローゼットやジャングルみたいなベランダまで虱潰しに探したが、さすがに1階にはアリスはいないようだ。


「一階にはいない。次は二階を捜すぞ」

「うん、分かった」


コリオの返事が聞こえたので、アレクは後ろを振り向く。しかしそこには、コリオの姿はなかった。

霧消。なんとなく心配はしていたが、まさかホントにコリオが引っかかるとは思いもしなかった。それほど巨大な屋敷ではないが、さっきまで見ていた姿は見当たらない。


「チッ。あの馬鹿野郎が……」


そうだ、元々はここに二人で来たのが失敗だった。音を創り出せるならばアレクの声を創り出して誘導することも容易に行える。

勿論アレク本人の声とコリオ本人の声は消されているはず。


「こっちだよ」


コリオの声が奥から聞こえた。

だが当然の如く無視する。音は気にしてはいけない。アレクはコリオが気絶でもしていないか心配するが、それよりも先にアリスの捜索を優先する。


人間はほとんどの情報を視覚から得ている。聴覚を消してもなんら問題はないだろう。

アレクは自分の耳の辺りに指を触れさせ、能力を発動させる。望みの内容は聴覚の遮断。アレクの『ファイネスト・アワー』もかなり自由な能力になったもんだ。


「…………」


喋らないし喋っているのかも分からない。

二階に続く階段を上っていると、上の暗がりから不規則に動く奇妙な影が見えた。

死の危険はほぼ無いので、アレクは自信満々で身構える。

暗くてよく見えない。ホラー映画の典型のような演出だな。そういえば動物を操る事も可能だったはず…。


パサパサッ―――と乾いた音がアレクの頭上に来た時、暗がりから姿が露呈する。


コウモリか。しかも足に何か持っている。


大きく薄い翼を広げ、痩せこけた足に光沢を放つ小さな何かを掴んでいる。それが10は下らないであろう数、アレクの周りをしつこく飛び回っている。


「キキキキキキッッ」


よく分からないが鋭く不気味な声を上げている。

それが合図だったのか、ポロッと足に掴んでいた物体を離した。下にはアレク、徐々に光沢の姿が見えてきた。


予想通り!カッターの刃ッ!


しかし落とすだけではない。超音波で刃を振動させ、カッターの切れ味は何倍にも上昇させているはず。つまりは自家製超音波カッターというわけだ。

全くなんでもありの能力だ。ちなみに人間を容易に殺すことはできるが、アリスはそんなことはしない。今だって出来るはずのカッターの位置調整をしていないから、カッターを当てるつもりは無いようだ。


但しここは階段。万事休す。

コウモリが群がってきたのとカッターの刃が降ってきたことによりアレクは蹌踉け、足を踏み外してしまった。


「ウォオッ!」


自分には聞こえない声を上げ、階段から落ちる。

これはマズい。どう考えてもアリスの能力は強すぎる。

空中にいる間、スローモーションじみた感覚に陥った瞬間アレクは頭をフル回転させ、望みを実現させる。


「できる範囲で、超音波を吸収する…!」


音を通過させる望みはあるが、それは無理みたいだ。聴覚の遮断を取り消し、新たな望みを実現させた。

超音波を反射させず、体に取り込む。体に異変があろうとも、もう問題はない。


「アリス。お前の居場所を思い出したぞ……!いっつもそうやって遊んでたよな…!」


階段から転げ落ち、体中を強く打つ。

それと同時に、姿を捉えた。一瞬迷ったが、人型ならなんでもいい。

一階まで転げ落ちた後、素早く体勢を整え床を蹴った。


「解答は、後ろだ」

ガシッと、その細く艶のある肌に触れ、腕を掴んだ。

「プッ……はい不正解。フフッ、お兄ちゃんならそうやってくれると思ってたよバーカ。超音波が途絶えた位置を捉えればいいでしょ、アハハハハッ」

何も無い空中から久しぶりな声が聞こえる。

「…無駄に頭はちゃんと良くなってたみたいだ。お前は変わらず馬鹿だがな」


「あれっ、あれれェッ!?なッ、あれ?」

掴んだ腕は、迷子になっていたコリオのものだった。頭のネジが抜けた阿呆みたいな顔で驚いている。

どうやら誘導されていたらしい。まんまと罠にハマった。アリスはそこまで人と触れ合いたくないのか、ただの頑固者なのか。 


「事情聴取ぐらいさせろっつーの」



間違った知識等があったりもしますが温かい目で見てください。

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