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完全無欠の革命歌  作者: ウエハル
序章
3/88

出逢い



まだ数時間歩いて学校内のプレハブ小屋に帰ってきた。

「うーん…君が吹っ飛ばしたのは間違いないんだね?」

腕を組み薬品片手に言った。

「はい、確かに2回も出来ました」

この機会を逃すわけにはいかない。母を捜す上においてもきっと役立つし、やっと訪れた千載一遇のチャンスだからだ。

だけど希望は薄れていく。

「ペルフ、この世には意味の分からない能力はいくらでもある。その助けた少女が「吹っ飛ばす能力を与える能力」だという可能性は、君に能力が覚醒した可能性よりも高いだろう」

「……」

何も言葉を返せなかった。ジョーンズ先生の言っていることはもっともらしいことだからだ。

この世には教室の片隅で友達と遊びで考えたアホみたいな能力が普通に存在する。リアスの希望は砕け散ってしまったのだ。

「アーリー・エクトス証券会社か……まあ、先に母親を捜す方が先決だろう」

そう言うとジョーンズは再びボールペンを机の上に置き、手を離した。ボールペンの倒れた方向はリアスから見てほぼ後方。先程とは違う方向のようだ。

「日もじきに暮れる、今日はこれだけだからね」

「…はい」

ぐうの音も出ないことを言われ落ち込んでしまったが、母親を捜すのが本意。警察や母親からの連絡がない限りいつまでも捜すつもりだ。

リアスは気を取り直し振り向くとドアノブに手をかけた。


すると日の光と共に人影が現れた。

「…遅い」

扉を開けると目の前にいた制服姿の少女は、ムッとした顔つきでリアスを睨んでいた。リアスと同じ紺色の透き通るような長髪に、全体的に少しツンツンとした髪の毛。優しく輝く水晶のような目、整った顔つき。身長はリアスよりも15センチほど低く、顔も小さい。一言で言えば可愛い。

「……」

これは確かに先程助けた少女だ。

頭が混乱し言葉が出てこない。「何故」という2文字が頭の中をこだまする。

「これ、君のでしょ」

リアスが目を丸くし突っ立っていると、少女は一つのカードを差し出した。

「僕の学生証だけど…なんで?」

少女が右手に持っていたのはリアスの顔写真が載った高校の学生証だった。更に頭が混乱してくる。

「さっきよく分からないけど手に握ってたの」

素っ気ない態度で話す。

「分からない?」

分からないなんてことはないだろう、盗んだ言い訳が分からない?なんて非道い奴なんだ。

「分からないものは分からないのよ、気づいたら手に持ってたから仕方ないでしょ」

申し訳なさそうな顔をすると、許してやりたくなってきた。

リアスは少女が握っていた学生証を返して貰おうと、手を伸ばし学生証を掴んだ。

「…あれ」

学生証を引っ張って受け取ろうとしても全く少女の手から離れない。強力なボンドで貼り付けてるみたいにビクともしない。

「?…なにしてるの?」

顔を傾げる。

「いや、全然離れないんだけど…!」

両手を使っても離れない。体全体を使ってもみたが、少女の手と学生証が一体化してるんじゃないのかと思えるくらいに取れなかった。

「え?…どういうこと?」

リアスを鼻で笑うと少女は左手で右手に持っていた学生証を取ってリアスに渡した。

呆気なさすぎる出来事にリアスも笑うしかなかった。

「そ、それで…なんでここに?」


「えーと、あ――

「ユノ様、そろそろ出発しませんとヴァイオリンのレッスンに遅れてしまいます」

少女の言葉を遮る野太い声。

少女の後ろから悠然とあの黒いスーツ姿の黒人が迫ってきた。

見たところ執事というかSPというか…大統領の護衛をしているような屈強で強面のサングラスをかけた黒人だった。


「君、そう…!リアス、私に雇われてみない?」

あの黒人の言葉を無視したと思ったら、訳の分からないことを提案してきた。

雇う?何故この僕を?

「金でもなんでもあげる、とりあえずあの男を追い払ってくれない?体で払えって言うなら、少しは考えてあげる」

そう言うと少女はリアスを盾にするように背後に回ると、背中を強く押した。

「ちょっ!」

バランスを崩しリアスは男の目の前に来た。間近で見るとNBAの選手みたいに筋肉質でかなりデカい。

リアスは不器用にはにかみながら後ずさりする。

「誰だお前は?ユノ様をたぶらかそうというのならそれなりの覚悟はできているんだろうな?」

男は首をコキコキと鳴らし眉間に皺を寄せるとリアスに更に近づいた。

真下から見たビルみたいにそびえ立つ体はリアスを無言で威嚇する。

「有名な教授に会うと言ってどこかへ行ったと思ったら…こんな有名もへったくれもない男と密会していたとは」

男は不満げに言うとサングラスを外した。

サングラスの下から出てきたのは、サングラス。サングラスを2つかけていた様子はなかったが、確かにサングラスの下からサングラスが現れたのだ。

男は顔色一つ変えずに、唖然としているリアスに先程まで男自身がかけていたサングラスをそっとかけた。

「…え?」

少し愛想笑いをする。

「サングラスは「美」…割れるサングラスもこれまた美しいのだよプレイボーイ…」

リアスの脳を更にこんがららせることを言ったと思うと、男は腰を引き、肘を曲げ拳を握り締めた。

「サングラスと共に散れ…」

サングラスをかけられたリアスの暗い視界にも男の拳が自分自身へと伸びているのは分かった。

「ちょ、待って!!」

リアスは咄嗟に両手をクロスし、顔面を守った。

殴られる覚悟はできていたが、いつまでたっても衝撃がこないのでリアスは手を戻した。

「あ…あれ?」

黒人の男はまるであの時の厳つい男と同じように、数メートル吹っ飛び芝生の上に倒れていた。鼻血は出ていないがピクリとも動く気配はない。

眉一つ動かさずに倒れている男をリアスは心配そうに見つめる。

背後から唐突に響いた声にリアスは体を震わせた。

「やればできるじゃん!」

少女はニッコリと笑いながら腰に手を当てリアスを見つめていた。

やはり自分がやったのか?そんなことを考える寸暇もなく、次の出来事は起こった。

リアスは何かに引っ張られた。掃除機に吸引されるようにして。

「えっ、ちょっと!」

少女の胸元にリアスが顔から突っ込んでいた。少女の柑橘系の良い香りが鼻につき、柔らかい感触を顔全体で感じる。

いきなりすぎる事にリアスは動揺し、少女の腰辺りを掴み顔を人生を賭けて引き剥がそうとする。少女もリアスの頭を掴み剥がそうとした。

「っ!んー!」

胸に圧迫されて声がうまく出せない。

それほど大きな胸ではないが、なかなかの胸からリアスの顔は一向に離れなかった。

「え?あっ、まさかこれが報酬?よく分からない趣味してるわね」

何かを察したように少女は大人しくなる。

「んんんー!」

違う、と言いたがったがまるで顔が離れない。さっきの学生証が離れなかったようにボンドで貼り付けられたみたいに顔が離れなかった。

息もそろそろ苦しくなってくる。

「うおっ!」

突然顔が離れ、リアスは尻もちをついた。少女の軽蔑するような眼差しが突き刺さる。

「いや、違うって!これ君の能力じゃないの!?」

言い訳みたいに言い放つ。

「え…いや、違うけど、あんたのじゃないの?」

相手方も今更だがおかしく思ってきたようだ。

「え?僕は能力持ってないよ…」

「え??」

「いや、僕の顔知らない?世界で一人だけ能力を持ってない人間って……」

言いたくはないが解決しなさそうなので仕方なく暴露した。

「あー!これも運命ってやつね」

「え?」

「これホントは言っちゃいけないんだけど、同類なら言ってあげる、私も能力がない人類。お揃いってことね」

「え…?え?」

まるで意味が分からない。能力を持たないのは世界で一人だけじゃないのか?

「まあそりゃ混乱するよね、私とあなたは同じ能力ってわけ」

「「ん…?」」


「「さっきの誰の能力!?」」


黒人の男の能力はサングラスを無限に生成する能力です。

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