表裏一体 不離一体? その2
「なっ、なんだ君たちは!」
慇懃無礼に現れた2人の敵は、引退したのに顔を出す部活のOBみたいに居丈高に話し出した。
「まあ、形から入るのは大切だ、まずは俺達以外で髪色が紺色じゃあない奴は出て行け」
黒髪の男はアレクと初老の男に向かって顎をクイッと上下させる。
「何を言っているんだ!ここは私の事務所だぞ!」
「ああ、そう。そりゃあ申し訳ない」
そう言いながら黒髪の男は初老の男に近づくと、足下を確認した。
不思議な動作をリアス達は呆然と見つめる。
「ルーク、あとはよろしく」
視線を足下に向けたまま黒髪の男は言い放つと、一瞬で消えた。
「!」
リアスとユノは見慣れた光景だったため、ほぼ無視したが、アレクは目を点にする。
瞬間移動したように、今度はあの初老の男と共にその場から消え去った。見るのは二度目、しかしからくりが全く理解できない。
単純に複数人で瞬間移動する能力?知覚できなくする能力?様々な憶測が頭の中で飛び交い、心中穏やかではなくなる。
「リアス、ねぇちょっと」
ユノの朝の母親のような声に目を覚まされ、残った桃色の髪のルークという男に視線を移す。
簡単に言えばジブリ映画にでも出てきそうなイケメン。顎の辺りまで全体的に伸びたストレートの髪は、飾り気がなく真面目な感じがプンプンする。そしてそのイメージを増させるような深紅のケープコートと所々に包帯に似た物を巻き垂らした黒いズボン。
睨み合っているだけでは進まない。リアスが口を開く。
「ユノが目的と言っていたが…どういうことだ?」
リアスが一歩前に出た。
「…その言葉以下でも以上でもない。…キミ……その女に惚れているのか?」
ようやく出したその声は浄く心に訴えかけるような声だった。
いきなりの質問にリアスの顔が緩む。
「…え?」
「いや…昔の仕事柄、悩みを聞いたりすることが多々ある……なんとなく分かるんだよ。キミ達2人は何か……神に選ばれたように関わりざるを得ない関係だ」
聖職者でもやっていたのか、核心的な言葉はさらにリアスの心を動揺させる。
「リアス、何言ってるか分かんないから、ほら」
ユノが懐から銅色に輝くいくつかの金属を取り出した。先端が尖った細長い物体。
リアスにはそれが一瞬何か理解できず、顔を顰める。
「何これ?みたいな顔してるんじゃあないわよ。どう見ても弾丸でしょ?さっさとこれであいつを撃てってことよ」
「あ、あぁ……えぇ」
あの男が敵だということをすっかり忘れていた。弾丸で射抜くというのは少々心が痛むが、自分たちが痛むよりはいいだろう。
リアスは弾丸を受け取ると、親指と人差し指で後端をつまんだ。
「…」
自然な流れで撃とうとしているが、いささか自信が出ない。
リアスは感覚でなんとなく指先に力を込めた。
パシュンッ――と弾丸が空を駆け拍子抜けな音を出す。意外にも弾丸は高速で、なおかつ一直線でルークのもとへと飛んでいく。
「能力の覚醒からまだ14年…ヒトの適応能力は非常に高い…」
弾丸が見えているのかと疑問に思うほど、ルークは余裕をかます。
ルークに当たるはずの弾丸は、直前で金属音と共に弾かれた。見えない壁に阻まれたように、急に角度を変えて弾き飛ばされた。
「そのヒトも神には逆らうことは決してできない………神意の下に…死んでもらう」
何かが通過したように、ルークの髪が後ろにたなびく。
するとルークの目の前に陽炎に似たモヤがかかる。それは徐々にルークの前から横にずれ、白煙と共に人の形に成っていく。
人の形になったその者は、コートを羽織り、老けた顔をしている。完璧に人間で、半透明で空気の歪みにも思える見た目をしている。
「何あれ…幽霊?」
ユノは目をこらす。
床に足は付いているが、突然何も無いところから現れたとなればルークの能力だと判断すべきだろう。
3人目という考えは出ず、焦燥を感じる。
「!……いや、まだいる」
リアスは天井を見上げた。そこには3人の人間が縦横無尽に飛び回っていた。
軍人の格好の者もいれば、ドレス姿の者、さらにぬいぐるみを抱いた子供もいた。3人はこちらには目もくれず、天井近くを笑顔で飛び回る。
「預言は決して外れることはない…『ロスト・プロフェッツ』はキミ達を殺すために呼ばれたのだ…」




