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カレス~ニューヨーク聖爵血戦~  作者: 心之助
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第三章『奇跡の出会い』

 参加者は13人、願いが叶うのは生き残った一人のみ。


 こんな狂った儀式に巻き込まれた彼ではあるが、特に迷いはない、どうせ残り一週間の命だ。


 三年前、この『不滅の体』をある魔術師から貰った時点で、そう言う契約を果たしてしまっているからだ。


 ━━よろしい、よくぞワタシの儀式に参加してくれた。ワタシは嬉しいよ、今から指示する場所に向かえ、そこに君が戦う為に必要な『力』が待ってる。


 ファール神父の指示で訪れた場所は、墓場であった。


 ニューヨーク郊外から離れた墓所。人気がない場所、時間帯は深夜・午前2時。


 ━━あ、釘を刺すようで申し訳ないが、君に与えるその力。それを一般人に見られないように頼む。


 と、ファール神父に釘を刺された。だから人々が寝静まったこの時間に来たのだ。


「......これを、ここに置けばいいのか?」


 彼の目の前には一つの大きな碑石が立てられていた。そこには第二次世界大戦の戦死者の名前が彫られている。


 そして、彼の手には一つの石、と言うより何かの『欠片』だ。これが何の欠片かよく分からないが、彼は大戦で死んだ英雄達の名前が刻まれた碑石の前に、その欠片を置いた。


「..........確か、血を捧げるんだっけ?」


 一滴、一滴でいいからその欠片に血を捧げる。これが何の魔術的な儀式かは知らないが、彼は少し困っていた。


「......俺の体には『血が僅かしか残ってないしなぁ』.......」


 そう、彼の体には血が少ないのだ。彼の体は骨と皮だけ、血液の殆どが干上がってしまい、彼の体の中には極小の血液しか流れていなかった。

 普通の人間なら死んでてもおかしくないが、彼は死ななかった。いや、今の彼は死ねないのだ。


「.......そう思って、少し肉を喰ってきたが.......出るかな?」


 そう思いつつも、彼は自分の親指の皮に噛みつき、その干し肉のような皮膚を食い千切った。指の骨が見えるくらいに、


 普通なら血が出る筈だが、やはり出ない。


「......足りなかったか? .......いや」


 出た。窓に貼り付く結露のような小さな血が少しだけ滲み出てきた。


 このまま放置しても水滴となって落ちる事はない、なので彼は骨が剥き出しの親指を欠片に擦り付けて、直接血を付着させた。


「..........ッッ!?」


 すると、碑石を中心に半径二メートルぐらいの魔方陣のようなものが地面から浮かび上がり、外周の円陣から強烈な光が、目が眩むような光が円の中の彼を包み込む。


「ぐ、あぁ━━━━━━!!」




『「――」私の事は良いから、貴方だけでも、生きて』


『嫌だ! 僕は諦めない! こんな理不尽な結末があってたまるか!! 君を失えば、僕は、生きる意味を失う........っ!』




 ━━なんか、懐かしいな。もう君の顔も思い出せないが、不滅の肉体を得て、この世の地獄を見て、心が枯れ果て、それでも、それでもここまで来たのは.......君の..............


「頭を上げよ! 絶望に屈せぬ魂の持ち主よ!」


 ━━聞き覚えのない女の子の声が聞こえる。


「己の信念を地に付けるにはまだ早い! 地ではなく天を見よ! 吾を見よ!!」


 ━━誰だ? 光が強すぎて、見えない......


 顔を上げても、あまりにも眩しすぎて前が見えない。


 だが、そこに誰かいる。力強い少女の声が聞こえる。渇いた心を鼓舞するが如く生命に満ち溢れた声だ。


「ふむ、何とも哀れな主だ。だが案ずるな! 吾が来たからにはもう安心である!」


 光が晴れる。そこに居たのはやはり少女だ。碑石の上に一人の少女が立っている。


 しかし、明らかに普通ではない出で立ち。


 外見は10代後半ぐらいか、白銀のドレスに甲冑鎧と赤いマントを纏い、金髪と赤毛が混じった妙な頭髪。そして月光のように綺麗に輝く碧眼を持った、見る者を引き込むような麗しさと神々しさを持った不思議な褐色肌の少女だ。


「何ともまぁ、この吾をこんな陰気臭い所で喚ぶとは、此度の主は辛気臭い奴と見た。とぅ!」


 少女は碑石から飛び降り、彼の前に着地した。


 ふわりとスカートの裾が舞いながら降りた彼女は、その顔をキスするぐらいの距離まで彼の顔に近付けた。


 あまりの出来事に戸惑う彼、彼女は何者なのか?


「......ふむふむ! 顔は悪くない。ちゃんと肉を付ければ吾好みの男になると見た!」


「........君は?」


「.......え?」


 彼の問いに少女は驚いた様子で後退し、何度も瞬きをする。


「んー? 吾の事を知らぬのか? なのに吾を喚んだのか? んー?」


 少女が何度も首を捻る。これがファール神父が言っていた『力』なのか? どう見ても華奢な少女だ。


「ふははははは!! まぁよいわ! 吾は寛大だからな! では心して聞け! 吾は『イスカリオテのユダ』の役に任命された過去の英雄! 今は真名は語れぬが、よろしくな主よ!」


 イスカリオテのユダの役? 過去の英雄?


 ユダと言えば、キリストの12人の弟子の一人、その役に任命されたって、どういう事だ?

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