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カレス~ニューヨーク聖爵血戦~  作者: 心之助
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第一章『黄金の扉』

 チャイナタウンを出た彼に待ち受けていたのは、大量のパトカーと警察官であった。


「やっと動いたと思ったら住民に危害を加えたそうだな。さっき通報があったぞ?」


「.......」


 この警察官の顔は知ってる。この一週間、何度も自分をあの場所から動かそうとした警察官だ。


「さて、何故あの場所に居座っていたのか、そもそもお前は何者なのか、署で聞こうじゃないか」


 そう言いながら、警察官は彼に近付き、その手首に手錠をはめた。


「よぉし、ではパトカーに........ぬぐ!?」


 そのままパトカーまで乗せようとするが、また岩のように彼は固まってしまった。


「お、おい、またかよ! いい加減にしろ!」


「........」


 他の警察官も加勢して、彼を動かそうとするも、やはり動かない。ここまで来ると、もはや地面に根を張る一本の大樹のようだ。


「ぐ、あぁ.....ここで止まるな! 他の人に迷惑だろ!!」


 怒号を上げる警察官、しかし彼の目には警察官達の姿は映っておらず、代わりにチャイナタウンの入り口の向かいにある建物。


 その建物の前でこちらに手を振ってる人物がいる。


 枯れ木でボロボロの彼とは対称的で、恰幅が良く、綺麗な神父服を着た一人の長身の男性がこちらに手を振り、一枚のプラカードを取り出し、そこに書いてある言葉をこちらに見せ付けてくる。


『こちらまで来なさい。君の願いを叶えてやろう』


「.......?」


 理解できない。なんだあれは? そう思っていると、神父は二枚目のプラカードを取り出した。


『ワタシは君の全てを知っている。信じなさい、ここに来るだけで願いを叶えるチャンスを与えよう』


「......」


「「うわぁ!?」」


 あの神父が何者なのか知らないが、『自分を知っている』『願いが叶うチャンスを与える』。


 普通なら信用出来ないが、彼には迷いがなかった。その枯れ枝のようで、岩のような体が神父に向かって一直線に駆け出す。自分を取り囲んでいた警察官を吹き飛ばしながら。


「い、てて、おい! 止まれ!!」


「容疑者逃走! 繰り返す、容疑者逃走!!」


「発砲許可が下りた! 撃て!!」


 撃った。渇いた銃声がニューヨークの街に響く。


「.......」


 背後で発砲した警察官の銃弾が何発か彼に当たるが、それでも彼は止まらない。いや、そもそも銃弾が彼の皮膚に弾かれて他の方向に跳んでしまう。


「シット! なんだアイツは! スーパーマンか何かか!?」


「容疑者を逃がすな!」


 発砲は無意味と感じた警察官達は一斉に彼を追い掛ける。


 しかし早い、明らかに筋肉がない足で現役の警察官達との距離を離していく。


 そして、彼が先程の神父の目の前まで辿り着くと、神父は優しい微笑みを浮かべて彼に手を差し出した。


「よく来てくれたね。歓迎するよ」


「........あん.......たは.........?」


「ガッデム!! アイツ、神父様に危害を加えるつもりだぞ!」


「民間人に死傷者を出させるな!」


 背後から警察官達が後十歩のところまで迫ってきてる。


「手を取りなさい。さすれば黄金の扉が開かれん」


「........」


 彼は神父の手に触れると、突如神父が光だし、彼自身も輝き始めた。


「これは.......!?」


「おめでとう。君は選ばれし者だ。神の祝福を君に与えよう」


 後少し、後少しで警察官の手が彼に触れる所で、彼と神父は光に包まれ、その場から消え失せてしまった。


「な、き、消えた!?」


「どうなって━━━━━━ん? 俺達、今何を追い掛けていたっけ?」


「は? なに言っ━━━━━━? あれ、なんで俺達ここに居るんだ?」


 それは不可思議な光景であった。警察官達は先程まで、自分達が何を追い掛けていたのか、そもそも自分達が何故ここに居るのか、その場に居る全員が『忘れて』しまっていたのだ。


 先程までの一部始終は、全て忘却の霧に覆われた警察官達は、疑問だらけのまま元の職務に戻るのであった。

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