保健專は人気者!
「はあ…」
私はため息をつきながら通学路をとぼとぼと進む。細い道で下を向きながら歩いていたから、周りなんてよく見えない。まず、上を向いて歩こうなんて気は全くない。前を見ないで大丈夫なのかって?覚えているから大丈夫!
そして私が角を曲がった時、その角にあるまたその角から手が出てきて掴まれた。
「うひゃあ!!」
私は俯きながら歩くを意地張って貫き通すことができなかった。抵抗することが出来ず、そして中へ…。
「って、先輩!?」
その手は先輩だった。
「おはよ!」
先輩は、私の通学の邪魔したことを悪びれもせずに笑顔で挨拶をした。
「お…おはようございます」
私は警戒しながら挨拶を返した。先輩はまだその手を離さず、さらににっこり笑って口を開いた。
「昨日の話、覚えてる?」
「う…」
私は少し紅潮して後ずさった。勿論、先輩の手はそれを許すはずがない。私は逆につんのめって先輩に抱かれる形となり、寄りかかる。
あれから、先輩が先に笑顔で帰って行った。…から、冗談だと思っていた。…思ったいたのだ…。あれはなかったことにしたい…。
あ、もしかして先輩は今、それを冗談だったと言ってくれるのかも…!?…なんて私は勝手に想像して喜んだが、それは先輩の笑顔による声で砕かれた。
「今、ここで俺にファスキス頂戴?」
…そして、かろうじて私に残っていた明るさまで奪われたのだった。
「え…?」
「昨日の話、覚えてるんだよね?良いでしょ?」
「い、いや、よくないです…」
私は後ずさりしていく。先輩の手は私を掴んで離さない。
「…え…と…」
どんどん険しくなっていく先輩の顔を見ながら私は慌てて思考をフルに活用する。その途端、私はあの時の事を思い出した。
「私がその気になるか、ファスキスを奪われたら…か」
「え?」
それは、悠磨があの時言っていた事。そう。その気とファスキス…だ。私は先輩の手を振り払って駆け出した。
「おい!!俺は先輩だぞ!そんなことしていいのか?」
それでも私は足を止めずに走った。そんな諦めない私を見てか、急に先輩は声を変えた…というか、変わっていないけど、雰囲気が変わった。
「…本当は、あの時奈津さんがあの他校の悠磨ってやつと一緒にいなかったら、告白するつもりだったんだ…」
「え…?」
私はその新事実|(?)に驚いて足をとめた。
「だから校門で待ってたんだけど、彼が奈津さんを見つけて先に走って行ったから…」
「そ…それだったら後日また来ればいいじゃないですか?」
「いや、そうして日を改めたら、もしかしたら君らはもう付き合っているかも知れないじゃないか…」
先輩はしゅんとして呟いた。まあ、その可能性はなくはなかったが、付き合っていない可能性の方が高かったと思う。
「だから…」
先輩は私に手を伸ばした。また腕をつかまれそうになった私は、すぐに避ける。先輩は顔をゆがめた。
「なぜ、避ける…?」
「…」
そのくらいは察してほしかった。
「なぜ避けるんだ!?俺は先輩だぞ!!!」
まえに、先生に聞いたことがある。愛し、恋した人間は、時に人をおかしくする…と。恋人でも、限度はあるのだ。境界線はあるのだ。それが、ただの友達に過ぎない人であれば、もっと。
「…私は、大切にされたいので」
私は再び走り出した。あの人を探して…。
「悠磨!!」
私はその人、悠磨のもとで膝に手を当て、息を整える。
「え…奈津?どうしたんだよ、今は朝なのに…」
ああ、やっぱり、この人は私を心配してくれる…。顔を覗き込んできた悠磨は、私が笑い出したから頭にはてなマークを浮かべた。
「悠磨!」
私は自分から悠磨の唇にキスをした。
「な…なっ!?」
ここはかなり広い道だった。だけど、ひとめは気にしない。
「悠磨、私ね、悠磨がいい。あんな先輩、いやだ!」
悠磨は少し紅潮して、それから頭をかいた。
「…あんな先輩と比べられてんの、俺…?」
「あんなって…?」
私は訊き返した。そしたら、私の視界は悠磨の顔一面で…。人生二度目のキスをした。
「そんなこと、どうでもいい。…それより、俺はおまえのキス奪ったぞ?どうすんだ?」
ああ、そんなこと…。
「自分から来たんだから、良いに決まってんでしょ?」
私はまた、キスをし返した。
…あの事は、後で思い出してすごく恥ずかしかった。けれど、めでたく付き合うことに!…もちろん悠磨と。
そして、悠磨が言っていたあの事なんだけど、悠磨と先輩が初めてあった時2人で何か話していた時あったでしょ?その時に、自分が告れなかったのは悠磨のせいだ!って言われたらしい。まあ、悠磨のあのやり方はおかしいとは思うけど…告れなかったのは悠磨のせいにして言えなかった先輩のせいだと思う。私と先輩の関係はというと…。私はその後、転部したから私の先輩ではなくなった。勿論、挨拶も交わさなくなった。
今は、時々悠磨とデートもして…。先生にもこの事話してあげた。学校での生活は楽しいし、私は幸せ者です!
こんにちは、桜騎です!今回、保健專は完結しました!これで、貯まっていた連載小説も一つ減りました。そして、お待たせしました!次の小説もよろしくお願いします!