水戸黄門とは、水戸光圀様の事でございます。
久しぶりに水戸黄門をみて、つい一緒に『静まれ!静まれ!静まれ静まれ静まれ!!っと言ってしまいました。
「お辞めなさい。」
そう発言された瞬間。周りを囲んでいた人垣はモーゼの十戒の海を割った時かのように割れ、お嬢様はその中をまるでスポットライトがあたったかのように進まれます。
「なんだテメェらは!!」
「ひっこんでろ。」
三下のようなセリフを吐きながら唾を撒き散らす髭面の汚い男たちを、その身も凍るような冷たい目で見据え、お嬢様は、そのよく通る綺麗なお声で叱りとばします。
「こんな往来で若い女の子に寄って集って、貴方たちはなにをやっているのですか!!」
「うるせぇなぁ。テメェら、やっちまえ。」
しかし、お嬢様の言葉は、その男共には、伝わらなかったようでリーダーらしき人物が合図を送ると、私達に襲いかかりました。
私は、襲ってくる奴らをお嬢様から遠ざけ主に男の急所を重点的に狙いながら倒していきます。
急所に一撃を加えた瞬間。飛び跳ねたり、転がりながら痛がる男たちに追い打ちをかけるように踵落としを喰らわせ人数を減らしていきます。
「ぎああぁぁぁぁ。」
「いてぇ・・・」
「お、お前ら大丈夫か!!」
次第に男共は、私から距離をとりながら、下がっていきますが、油断は禁物です。
私は、胸ポケットに仕舞ってあった。カイザーナックルを嵌めまだまだやる気だったのですが、
「ちょ、ちょっと、やり過ぎよ。もういいでしょう。」
そのお言葉で仕方なく。私はカイザーナックルを外しました。
せっかくさっき喧嘩が始まったと聞いて、駆けつける時に買ったのに、使えないままなんて残念です。それも、買った店によると、どの様な具合かを調節をしてくれるらしく早く使って不具合を調整して欲しかったのですが、お嬢様のお言葉ですので逆らうわけにはいきません。
しかし、本当に残念でなりません。
「いてぇよ。」
「うぅ、たまが・・・たまが・・・」
軟弱なやつらです。せめてカイザーナックルを使い終わるまで我慢できないのでしょうか?
「な、なんだんだお前らは・・・」
お、そうでした。いまは、カイザーナックルを気にしている場合じゃありません。
「『なんだお前ら』とは失礼な。静まれ!静まれ!静まれ静まれ!静まれぇ〜い!この紋章が目に入らぬか!!控えおろう。」
そう、大きな声で大立ち回りをした私は、とある方から、作ってもらった紋章が入った小さな薬入れを取り出します。
もちろん。BGMを流す事もわすれません。
「なんだそれは!」
「この紋章こそ。この国の公爵。ペサリー公爵家の紋章。そうこの方こそ。かの公爵令嬢エリザベス・ペサリー様で表わされるぞ。ええい。者共図が高い。控えおろー。」
ふう、私は額の汗を拭き達成感に満足します。私は、やりました。やりきりました。見ていますか!!格さん助さん。
「き、貴族だと。」
「本物か?」
「公爵って言ってるぞ。」
私の発言を受けなにやら、ブツクサ言っていた男共は、
「とりあえず、お前らにげろ。」
「「「イエッサー。ボス。」」」
そういって、逃げたのでした。
まったく、そこは『ははー。』っといって、頭を下げるところなのに落ちがわかっていない。駄目な男たちです。
そんな中。優しいお嬢様は
「えっと、貴方たちは大丈夫?」
絡まれていた女の子たちを気遣います。
「は、ははははい。大丈夫です。助けて?いただき・・・ありがとうございます。」
何故かぎこちない感じでお礼をいわれるお嬢様は、なぜか引きつりながら、笑顔で答えておいででした。
「い、いえ、大丈夫ならいいのよ・・・。」
「ふふふ。これで悪は滅びました。」
そして、その頃やり切ったわたしは、ご機嫌よろしく。つい怪しい笑顔を浮かべてしまい、周りの人たちから遠巻きに見られておりました。
その後。暫くして、警備兵が到着して私達は、事情聴取という事で近くの詰所まで連れて行かれました。
◇◇◇
「ふう、お嬢様。思った以上に事情聴取が長引きましたね。」
「主に貴方のせいでね。・・・はぁ、恥をかいたわ」
私達はやっと解放され、また予定の道に向かいながら、歩きます。
実は、私達の事情聴取が長引いたのは、理由がございました。別に私達は、正当防衛という形で乱闘騒ぎには無罪を勝ち取ったのですが、ペサリー公爵家の名前を出したことが問題だった様で『勝手に貴族を騙った罪』という免罪を掛けられ危うく楽園・・・。いえ、牢屋へ連れて行かれるところでした。
お忍びでいくと、いい張ったお嬢様がちょと、上質な平民の服を着ていたのもいけませんでした。
一応『本物のエリザベス・ペサリー公爵令嬢様です。』とお伝えしたのですが、あの演劇風の言い回しが良くなかったようで、『はいはい。わかったから本名を教えてくれる?』と流されてしまい。最終的に公爵家まで確認をするため使いを寄越してもらい。使いの方に本人と証明してもらって、やっと本物の公爵令嬢だと理解して貰う事ができました。カツ丼も出ない永く疲れる事情聴取でしたが、無事。無罪放免となりました。
確認が取れた後。凄く頭を下げられたのですが、ここは広い御心のお嬢様。
『いえ、別人と思いたい気持ちは私にも分かりますので・・・はい・・・大丈夫ですわ。大丈夫です・・・はい。ええ、ありがとうございます。・・・強く生きますわ。』
と何故か警備兵の方と人生相談をされておいででした。どうしたのでしょうか・・・。私は、お嬢様の為になら若干の謝礼を頂くかもしれませんが、いつでも相談に乗る気、満々なのですが、私には一度も相談されたことはありません。
繊細なお嬢様の御心を開くには私ではまだ修行が足りず、この私の虚しい心をまた萌えあが・・・燃えあがらせるのでした。
「まったく。分からず屋の警備兵さんでしたね。」
「いえ、いい方でした。」
そんな軽口を言いながら、わたしは、あの乱闘を思い出します。
「しかし、見事な再現ぶりでございました。さすがお嬢様。台本が無いなんて思えない出来栄え。わたくし、感服致しました。」
「なんかよくわからないけど、馬鹿にされているような気がするわ。ついでにあれは、なんだったの?」
「『あれ』でございますか?」
やはり、『アレ』とは、隠語でしょうか?
もしかして、お嬢様は私が男の急所を重点的に狙っていたのを知って、『自分もやってみたい。』そう言われてるのでしょうか?
実はお嬢様はムッツリ・・・。
殺気!・・・これは殺気でしょうか?
え?もういい。そんなこと言わずお付き合いください。
では、最初っか・・・
「そう『あれ』よ。あの言葉回しなんなの?」
ああ、そっちでございますね。びっくりいたしました。
しかし、まさかお嬢様に定番を邪魔されるとは、私もまだまだでございます。
はぁ、仕方ありません。話を元に戻しましょう。
「あれは、とある方から教えていただきました。異世界にある。時代劇っというものらしいです。」
「いつもながら、きいていいかしら・・・何故貴方が異世界のその時代劇に詳しいのよ」
「それは、お嬢様。別に話してもいいのですが・・・」
ここで少し俯きながら哀愁漂う雰囲気と定番のBGMをかけることが大事です。
勿論。ポケットには携帯型のプレーヤーを入れております。
「・・・わかったわ。いくら払えばいいのかしら」
諦めたように財布を出されるお嬢様。
「500円でございます!!」
「え?」
とても驚いた顔で私を凝視されるお嬢様。
私何かしたでしょうか?
「どうなさいましたか?」
「いえ、いつもなら、『私とエリザベス様の仲でございます。サプライズプライスという事で、いつもなら1000円いただくところを身内割引と称しまして50%引きの・・・な、なんと500円!!500円にて販売中に御座います。』とかなんとか言って、私に売りつけるからきっとやるのかと思ったのだけど、大丈夫?熱でもあるの?かえる?」
「はぁ・・・お嬢様。私がどこでもそのような事をしていると思われているのですか?」
「ええ、思っているわよ。」
私が、そういうと間髪入れず即答なさるお嬢様。
「まったく、お嬢様。お嬢様が私をどのように思っておられるのかわかりませんがここは外ですよ。そんな事をしたら、目立ってしまいます。」
「え、ええ、わかっていたのね。」
「それで、また警備兵さまが来られることになりましたら、今度こそ。警備兵様のお仕事の邪魔にございます。」
「ええ、ごめんなさい。・・・まさか貴方にそのようなマトモな説教をされるとは思わなかったわ。」
お嬢様は世間を知らな過ぎます。田舎なんて少し奇抜な格好をしただけで世間の目は冷たいと申します。
私も一度。あまりの寒さに冬眠をした際。知らないうちに頭からキノコが生えたことがあり、寝起きで気付かずそのまま1日を過ごしてしまった恥ずかしい過去がございました。
その時のあの世間の目は、大変厳しいものでした。
「いえ。わかっていただけただけで、いいのでございます。」
「ええ、今度から気をつけるわ。」
苦虫を噛み潰したかのように苦い表情をされながらお嬢様は了承されました。
「今度から、お気をつけられるようお願いします。さて、お嬢様。いい加減。その500円はお預かりしても宜しいでしょうか?」
私は、お嬢様が財布から取り出したままの500円を見つめながらお嬢様にお聞きいたしました。
「ああ、ごめんなさい。はい。500円」
慌てて差し出された500円の重みを私は静かにたしかめ懐に仕舞います。
「では、何故私が『異世界の時代劇に詳しいか』という事をおしりになりたいんでしたね。」
「ええ。」
「それは、私が薬学部の畑に初めて訪れた時でした。」
私はあの頃を振り返りながら話します。
「あえて、何しに行ったかは、聞かないわ。」
「さすがお嬢様。御察しの通りでございます。私はその日。畑の規模。粘土。排水性を見に行っておりました。」
「むしろそこまでする必要があるのかしら?」
「何をおっしゃっているのですか。お金を守るという大事な事を土に託すのです。色んな最悪のシュミレーションをしておかないと、預けることは、できません!!」
「そうね。・・・私には理解できない事だわ」
「お嬢様、なんでも、始めない内から諦めることはいけません!!仕方ありません。ここはお嬢様の為。涙を堪え無償でお教えしましょう。」
私は、真摯に訴えます。無償・タダ・・・
わたしは、決して泣いたりしておりません。
これは、汗なのです。
「い、いえ、いいのよ。私は、このままで大丈夫。遠慮しておくわ。私には、お金を土に埋める事は一生無いと信じてるから。」
「・・・お嬢様。不測の事態はいきなりやってくるのです!!」
「それでもよ!!」
「それでも、でございますか・・・。」
私はその言葉を受け足元がふらつき・・・ふらふらとよろけながら数歩下がりました。
「お嬢様はそこまでそこまでの決意を・・・。」
「そんなになるほどのことなのかしら?・・・えっと、どうしたらいいのかしら、『貴方が考えてるほどじゃ無いと思う』といってもいいけど、いいわ。仕方ない・・・。」
なにやら、ブツブツと、呟いたお嬢様は、私に視線を合わせ。しっかりと私を視界に捕まえ言われました。
「そこまでよ!!」
その時のお嬢様は後ろに後光が見えるようでございました。
やはり、私はお嬢様には敵いそうにありません。
「お嬢様。私はお嬢様がこんなに立派に成長なさって嬉しく思います。」
私は、ポケットからハンカチを取り出し目頭を押さえました。
「なんか、心が痛いわ・・・。」
そう呟かれた言葉は、私には届いておりませんでした。
◇◇◇
そんなこんなで私達は、カフェに入りました。
さすがに往来で目頭を抑え涙を流す私は目立ってしまい。それでまた警備兵の方々が来られると、また騒ぎになってしまう為近くのカフェにとりあえず避難いたしました。
「たまには、コーヒーも美味しいですね」
「そうね。なんか疲れが取れるようだわ・・・。」
「そう言えば。お嬢様。お話が途中でございました。こちらでコーヒーを飲みながらお話しても大丈夫でございますでしょうか?」
「ええ・・・。わたしも、今あまり動きたく無いわ。」
「では、その日わたしは薬学部の畑でも地質的にお気に入りの場所を見つけ。少し気が緩んでいた帰りの道でございました。その時。ふと、帰る途中の森に違和感を感じたのであります。」
◇◇◇
『誰かおられるのですか?』
わたしは何かの気配を感じ素早く、違和感がある方に短剣を向け、ゆっくりと後退しました。
『まさか。バレるとはおもわなかったなぁ。君はどっかのメイドさんかな?こんな夜中にこんな場所でなにをしているのかな?』
それは、夜中の『私』と『かの方』との不思議な初めての出会いでございました。
しかし、暗闇でしたが、私はかの方の姿を見てすぐに正体にきづきました。
『あっ、もしかして、学園長様でございますか?』
私は、お嬢様の入学式に見たかの有名なこの学園の学園長様の姿を思い出し、目の前の人物が怪しいものではないと確認できましたので短剣をスカートの中に直すと、向き直りながらお尋ねしました。
『え?うん。そうだね』
なにやら、戸惑ったような声を出されながらも警戒をされている学園長様に私は名乗りを上げました。
『初めまして。わたくし、エリザベス・ペサリー様付き侍女をしております。こんな夜更けに学園長様は、夜の見回りでございますか?』
『・・・うん。まあ、そんなとこかな。』
意外にフランクな喋り方の学園長様に私は内心親密感を勝手に感じながら。
『そうでございますか。大変でございますね。わたくしも、お嬢様が寝静まってからしか壺を埋めに行く場所を調べる時間が取れないので大変でございます。』
◇◇◇
「ごめんなさい。ちょっと、話を追って申し訳ないんだけど。」
「なんでございましょう?」
「そんな昔から私が寝ている時に壺を埋めていたのはもう諦めるわ。」
そう、ため息をつきながら、おっしゃるお嬢様は何故か疲れておられるようでした。
「はい。」
「しかし、あなたが壺を埋める為の時間が取れないことを。さも私が悪いかのように言われるのは、なんか私の中のプライドが許さないわ。」
そう言われり、お嬢様にわたしはあの頃を思い出しゆっくりと諭します。
「しかし、お嬢様。お嬢様は、入学当初色々準備や地盤作りで忙しかった為。私も一緒に準備に追われておりましたし、夜は夜でお嬢様は、不安で寝つき悪く。中々寝ることが出来ず『ねれないから』と、他の事をしようとし始めるのを止める事で大変だったのは、事実でございます。」
は!っとなされたお嬢様は少し神妙な顔で
「・・・あなたにそんなところで迷惑を掛けていたなんて知らなかったわ」っといわれました。
「お嬢様。いいのでございます。過去の話でございます。」
私は笑顔でお答えします。
「そう、ごめんなさいね。」
「いえ、私はお嬢様の侍女でございます。ので」
そう答えたのに何故か眉間に皺をよせ何やら呟いておられます。
「・・・でも、なんかしっくりこないわ」
しかし、変に考えさせるといけません。
「さて、お嬢様話の続きにございます。」
「え?ああ、そうだったわね」
◇◇◇
『えっと、ちょっと、聞き流すには可笑しい言葉があったからきいていいかなぁ?』
『なんでしょう?』
私は、学園長様が言われるおかしい言葉がわからず首を傾げました。
『・・・何故壺を埋めるのかなぁ?』
『そこに壺があるからでございます。』
わたしは、間髪入れず即答しました。
『えっと、ごめん。それじゃあ、わからない』
何がわからないのかわからなかったのですが、わたしは考え、気づきました。
『ん?は!!そうでございました。公爵家では私の壺を庭に埋める癖は、有名でございましたので、説明しなくても皆様わかってくださいまして、申し訳ありません。』
わたしは自分の失敗に冷や汗をかき、必死に謝罪致しました。
『いや、ごめん。理解力無くて。』
なぜか、ショックを受けたように頭をさげる学園長様に。
『いえいえ。学園長様といえば。ハイエルフの賢者様と有名でございます。そんな方に私の事がわかっているなどと思っている私の不徳の致すところでございます。』
私は頭を下げ深く反省を致しました。
『それは、貶しているわけでは・・・無いんだね。』
何か声が聞こえ、つい顔を上げた時。何故か私を呆れた顔で見つめる学園長様のお顔がありました。
『はい?なにかいわれましたか?』
『いや、なんでもないよ。』
『では、何故。壺を埋めるかでございましたね。しかし・・・いや・・・でも・・・』
『え?どうしたの?』
『いえ、せっかく学園長様にお逢いできましたので・・・ぐっ。ここは出血大サービスで・・・グス。無償でお教えします・・・。』
私は無償でお話はする覚悟を決めるため、必死に頑張ろうとしましたが、しかし、体は言う事を聞かず、拳に力が入り、目からは涙が溢れました。
『え?なんで泣いてるの?』
『大丈夫でございます。・・・グス。無償でお教え致しますので、暫く・・・グス。涙が止まるまでお待ちください。』
『・・・うん。とりあえずハンカチ使って』
そう言って、差し出されたハンカチで、鼻水を噛んでしまったのは、今では、2人の笑い話となっております。
そして、私も泣き止み話を始めました。
『それは・・・
・
・
・
・
と言うわけで私は壺を埋めなければ落ち着かなくなってしまったのです。』
『なるほど。なんか多分に私情が入ってだけど、壺の中身を一応危険物じゃない事を軽く見せてくれるなら、埋める事を許してあげるよ。それでいいかな?』
『本当でありますか!!実は、壺を埋める事は皆様に否定され、実は私は、何処か可笑しいのかと心配していたのですが、こうして理解してくださる方も、いるのだと思うと・・・』
その提案を受け、私は感動で早口になりながら、この情熱を、学園長様に伝え感動の涙を流し、歓喜に震えたのでございました。
『えっと、そこまで感動させといてなんだけど可笑しいからね。』
そんな事をおっしゃっていた声は私には、聞こえておりません。ええ、皆さんわかってらっしゃると思いますが、私の耳は都合のいいことしか聞こえません。
ですので、聞こえておりません。
◇◇◇
「そんな素敵な出会いでした。」
「貴方・・・学園長にまで迷惑をかけてたの」
「いえ、ご迷惑などかけておりません。今ではたまに盆栽、将棋、お茶を一緒にする仲にございます。」
「はぁ、それでどうして、異世界の時代劇を知る事になるのよ。」
「それが学園長様は、実は異世界からこちらの世界に転生なるものをされたらしくて」
◇◇◇
『そうそう、あの時はビックリでね。小さい頃は、両親があまりに綺麗で母親なんて母乳を貰うだけでドキドキだったよ。』
『そんな小さい時からの記憶を持っておられるのですか。』
『うん。まあ、その時から、もう精神年齢は、30近くだったしね。』
『それは、すごいですね。』
『ほんと、びっくりだよね。パソコンをしながら引きこもってたのが、何故かハイエルフだからね・・・最初は、『エルフの里でハーレムを築いてやる』と色々してしまったよ。』
そう、黄昏るように遠くを見つめる姿に・・・。
『若気の至りって奴ですね。』
『・・・うん。そうだね。特に昔はモテたよ。ハイエルフだからね。』
私はついそんな言葉を吐いてしまい、悲しそうなお顔をさせてしまった事を今では少し言い過ぎたと、後悔しております。生き恥・・・。いえやはり一番適切な言葉だったかもしれません。
『しかし、やっぱりエルフの里は僕には退屈でね。外に出てから、いろいろやったよ。電気や機械を発明したり、水戸黄門みたいに悪事を暴いたり。』
『水戸黄門とは、何ですか?』
『ああ、水戸黄門はね。』
◇◇◇
「そのあと、聞かせていただいたお話は、大変壮大で素敵なお話で私は各地を回りながら、悪事を暴く水戸光圀様と、それに仕える格さん助さんに感動致しまして、それに加えて、学園長様の迫真の演技力には、私の涙腺は壊れ最早スタンディングオベーションを感動のあまりしてしまうほどでした。」
「貴方。学園長に何をさせているのよ。」
私は、あの時の感動をお伝えしたかったのですが、やはりお嬢様には、伝わらなかったようで呆れた顔をされてしまいました。
しかし、私は諦めません。
「特に私のお気に入りは、着物なるものを着て、『お代官様。・・・おやめください。』『まあ、良いでは無いか』『いや、やめて。』『良いではないか。良いではないか』『いや〜。あ〜れ〜。』っと回りながら、帯を解くところでして、学園長の着物姿も素敵ながら、男性なのに帯を解かれながら色気を醸し出すあのお姿は、最早。目に焼き付いて離れないほどでした。」
「悪事を暴くストーリーなのにそんな卑猥なシーンが何故あるのかよくわからないけど、・・・少し私も気になってきたわ」
「お嬢様はむっつりさんですからね。」
つい発したその言葉を聞いた瞬間。お嬢様の目は吊りあがりキラリと私を睨みつけます。
私は、いきなりの事で少し胸に動悸がはしり、ついこれは、『恋なのでは?』と誤解してしまう程でした。
しかし、お嬢様が言われたことなのに何故私は睨まれないといけないのでしょうか?
わかりません。
「・・・貴方は、私をどういう風に思っているのか話し合う必要があるようね。後からゆっくり話し合いましょう。」
こ、この目は、婚約破棄騒動の時に魅せられたあの誰もが凍り付くような鋭く逆らうものを許さない目ございます。
またあのくだりを・・・いえ、ここは新しい方でいきましょう。
「お嬢様は、今日は空が青いですね。」
私は、カフェの中からでは見えない空。もとい茶色の木目の天井を見上げて、言いました。
「貴方日に日に誤魔化すのが下手になってるわね。私は誤魔化されないわ。」
「そう言えば。お嬢様。今日は、フォンテンシュにいって、新しく発売されたチョコケーキを買われるんじゃなかったのですか?」
「ああああぁぁぁぁぁ。そうだったわ。なくなってしまうわ。こんな所でゆっくりしている場合じゃないわ。急いで向かいましょう。」
「はい。お嬢様。」
ふっ、お嬢様もまだまだでございます。
私は、慌てて出て行くお嬢様の後を追いかけ返事を致しました。
◇◇◇
「そう言えば、貴方。いまさらだけど、私は、お忍びで下町に行くっていったわよね?お忍びの意味を貴方は、わかっているの?」
「ええ、わかっておりますが?」
学園の寮に戻り買ってきたチョコケーキを試食しながらお嬢様は何故かふてくされておいでです。
きっと、帰りに『エリザベス・ペサリー様だ』『お!公爵令嬢!』といきなり知らない人に声をかけられたからでございましょう。
「じゃあ、「お嬢様。大丈夫でございます。」」
そんなお嬢様の言葉を遮り私は大丈夫とお伝えします。
「・・・何が大丈夫なのよ。」
「お嬢様。あの様に馬鹿・・・ゴホン。大胆に登場して、劇の様な言い回しをしたのです。誰も本物の公爵令嬢だとは、きっと思っておられません。皆さん。演劇の宣伝だと思われた様で気のいい八百屋のおじさんからは『いつやるんだい。おらぁ、演劇とかわかんねぇけど、面白そうだから、きまったら見に行くよ。』っと、いう講演を待ち望む声まで頂きました。」
「あ、貴方いつの間に・・・」
「それは、もちろん。お嬢様が警備兵の方に頑張って説明している時にございます。」
ええ、頑張って説明されている横で私はお捻りをいただいておりましたが、これは、もちろん。お嬢様には内緒でございます。
「頭がいたいわ・・・我が家の恥が・・・」
なにやら、頭痛が酷くなられたようです。
今日は早めにベットに入って貰おうと決意した私でした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ここで補足ですが、水戸黄門にたぶん帯を取るシーンあったかなぁ?と思っている皆さん
なかったかもしれませんが、お銀さんの入浴シーンは、説明がというか、再現する学園長の再現力がわたしには、どうやって再現させるか想像ができませんでしたので、帯のあ〜れ〜。ってやつにさせていただきました。
まあ、あのシーンがなかったら学園長の記憶であったとおもってると思っていただけたら助かります。