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封筒の中身それは希望が詰まっているのです。

「埋める場所?」


そういって不思議そうな顔をしていたのにしばらくして、何故か納得されたように頷く隊長さん。

「はい。いい埋め場所は、ありますでしょうか?」


「ちなみに侍女ちゃんが埋めるのはあの壺だよね?」

そうおちゃらけて言われるチャラ男さん。



「はい。あの?壺ですよ?なにか?」

「また怒られるわよ。」

そう心配してくださるポンキュボンのお身体をお持ちのお姉さん。

「大丈夫でございます。お嬢様は、なんだかんだで9時には寝ますので」



「・・・うん。・・・侍女ちゃんは、そういうとこあるもんね。」




「ん?なにかおっしゃいましたか?」

「いや、なんでもないわ。」


そう、みなさんわかっている通り、今日私が相談しているのは、暗部のお3人です。

名前は名乗れないらしく。

勝手に『隊長さん』『チャラ男さん』『お姉さん』と呼ばせていただいております。

ちなみに凛々しく渋いダンディーでイケてるお方は、『隊長さん』でございます。

最初は、『凛々しく渋いダンディーでイケてるお方』と呼ばせて貰おうと、思ったのですが、何故か拒否され最終候補の『隊長さん』と無難なネーミングになってしまいました。


ちなみに私もそれにあやかって『侍女ちゃん』と呼ばれております。

私的には、『利き毒マイスターさん』でも良かったのですが、チャラ男さんが、

「いや、気に入ってくれたのは、嬉しいんだけど長すぎ。」


とのご指摘を受け残念ながら、・・・本当に残念ながら、私の呼び名は『侍女ちゃん』になってしまいました。

しかし、本当に残念でなりません。


そんな私達は、現在少し開けた隠し通路の先の休憩場所に勝手にテーブルと椅子を置きそれにテーブルクロスをかけ、寛いでおります。因みにテーブルには、この間旦那様のお手紙を届けた際に手紙を人質にとって、身代金代わりにウィリアム様から受け取った茶菓子とアンドリュー様の侍女様から頂いたココアを飲みながら4人で雑談しております。


え?わたしが人に物をやるのがおかしい?

いえ、そんな事はありません。私はタダで手に入れた物は、皆様に分け与え、罪を分散・・・ゴホン。皆様にお配りする心の広さを持ち合わせております。

ですから、別におかしい所は、ございません。いたって正常でございます。

もちろん熱もありませんし、季節外れの雪が降った所でそれは、私の所為ではありません。


さてさて、話の続きです。


「確か薬学部の畑に埋めてたんだよね?」

「はい・・・。」

「そこじゃダメなの?」

そう、子供を諭すように言われるお姉さんに私は、唇を噛み締めながら答えます。

「それが、大変遺憾なことに誰かが私があそこにお金の入った壺を埋めているとリークされた方がおられまして。」

私はくやしくつい拳に力を入れ訴えました。


「いや、自分で結構大々的に宣伝していた様な気がするけど・・・」

しかし、それを否定するように何やらチャラ男さんが仰っておいでですが私には、きこえておりません。


「それでなんと!!トレジャーハンターと呼ばれる私のお金を狙う金の亡者どもが薬学部の畑に迫っているのです。」


「侍女ちゃんには、言われたくないわね。・・・金の亡者なんて」

「同意」

「・・・。」

散々な言われようですが、私は金の亡者では、ありません。少しほんの少しお金が好きなだけで、今まで生きてきた人生の中でお金の大切さを身をもって知っているだけございます。


「そんな訳で今は、薬学部の生徒さんが、関係者以外の立ち入りを禁止されているのですが、薬学部の生徒にもスパイは混ざっている様で。まったくなんといっていいのか・・・本当に残念な事ですが・・・お金は人を変えると申します。仲間を裏切るなど、人として人間としていけない事だとおもうのです。・・・なので誠に不本意ながら私が軽く成敗しておきました。」

明るい顔で軽く言ったので流されるはずだったのですが

「・・・。」

「成敗って?」

「何かしら?」


三者三様の対応でしたが、隊長さんだけは少し考えた仕草をなさり、静かに・・・静かにしかし何故か怒気のようなものを感じさせる口調で話し始められました。

「・・・この頃。薬学部の生徒の何人かが、何かを怖がる様になり、そのまま精神科に入院したんだが、もしかしてあれはお前か!!」


「・・・。」

私はつい黙り込んでしまいましたがすぐさま

「そ、そんな恐ろしい事が・・・何かの実験でしょうか?」そういい腕をさすりながら、私はそっと隊長さんから視線を逸らします。


「最初の間は、なんだ!何をしたんだ吐け!!」

「隊長落ち着いてください。」

椅子がバタンと倒れた音が室内に響きます。

隊長さんを押さえにかかる2人。今日は、隊長さん大暴れの巻です。

・・・さて、冗談はここまでです。そうしないと、主に私の背筋にヒンヤリとした汗が流れてきました。

逆らってはならない予感がいたします。

しかし、ここで予期せぬところから助け舟が・・・


「隊長ここは、俺に任せてください。」


そう言って、無駄に爽やかさを醸し出したチャラ男さんがわたしに向き直ると、そっと、懐から白い封筒が出てきました。


「どうぞ。これを」



わたしはテーブルの上に差し出されたそれを受け取り、ゆっくり中を確認します。




「こ、これは、いいのですか?こんなに・・・」




「はい。気持ちばかりですが・・・」

お気持ちばかりでこれとは・・・。チャラ男さん。私はあなたに畏敬の念を送ります。


「わかりました。仕方ありません。ここまでしてもらっては話さないわけにはいきませんね。」


私はそう言ってゆっくりと懐に封筒を仕舞いますが、隊長さんには冷たい目で睨まれてしまいました。


「さて。薬学部の生徒が奇妙な事を口走ったとか?」

ここは空気を変える為。ささと、話すに限ります。

「このやりとりは定番なのかしら」

「定番だろ。」

「聞いてますか?」

みなさんちゃんと空気を読んでください。

「あら、ごめんなさい。きいてるわ。」

「では。その薬学部の生徒ですが、『言ってる事がまちまちで皆違うものを怖がっている。』そうじゃありませんか?」

「その通りだ。」

私をキラリと睨みながら隊長さんはうなずきます。

「でしたら、それは、薬学部の近くに生えているカブラスカという木の根を燻した時に起こる幻覚作用でございます。その幻覚作用期間は、長く強力で個人差にもよりますが1ヶ月はそのままだとか、まあ、1ヶ月も繰り返し恐怖を味わえば幻覚作用が切れた後も、勝手に幻覚を見ている気になってしまう事もありますので効果が完全に切れるのは、いつになるやら私には到底想像できません。」

「おい。」

さらりと、軽く流されるように明るいトーンで話をしたはずなのですか、さすが隊長さん。やはり、私の考えが・・・。


まさか・・・隊長さんもお嬢様のように他人の思考をよめ・・・ゾク。

殺気!・・・これは殺気でしょうか。

え?このくだりに見覚えが、私もそんな気がします。

この既視感、もしやこの殺気はお嬢様でしょうか?しかし、まだ寝ているお時間で時間帯的にも、今レム睡眠に入ったところのはず・・・。

しかし、なんでしょう殺気を感じたのにこの安心感。慣れでしょうか?

いや、でも、この殺気。お嬢様が放つ殺気とは鋭さが違うような気がします。

そして、私はその殺気の発信源を辿るべくゆっくりと視線を上げました。

すると、私の前には隊長さん・・・。

見つめ合う2人ですが甘い雰囲気はありません。私は慌て弁明をいたします。


「で、ですが、カブラスカには、特徴がございまして、なんと根で作られた幻覚作用効果もカブラスカになる実をすり潰せて飲ませれば取り除けるのでございます。」


危ないところでした。私には、隊長さんの放つ殺気が、目に見えるようでした。

「はぁ、・・・おい。この事をどっちかいって伝えてこい。」

「了解です。」

そういって、チャラ男さんが席を立ち一瞬で何処かに行かれました。さっきまでのチャラさがありません。

それにシュッてなんですか。忍者ですか?え?暗部?ああ、そうでした。

「ちなみに痕跡は探せば見つかるか?」

「痕跡・・・でございますか・・・。それは、難しいのでは無いでしょうか。」

私はニコリと微笑みますが、隊長さんはため息を吐きながら「はぁ、もういい。」と言われました。

どうやら、諦めた様です。

私では無いですが、そう私では無いですが犯人はきっと安心した事でしょう。

さて、なんとか場も和みココアの甘味が私の体にしみわたった頃。


話を戻すべくお姉さんが「でも、お金を薬学部に隠していて心配じゃ無いの?」っと私に質問されました。


「何故でしょう?」

「だって、掘り起こされたら、もう、駄目じゃない?」

「ああ、その点は問題ありません。よく言うじゃありませんか。『宝箱を開け終わるまでが冒険』だと。」

お姉さんが「ん?」っと顔をした後。

「それを言うなら、『家に帰るまでが遠足』よね?」

「そうとも言います。」

「そうとしか言わん。」

隊長さんにより、即座に切り落とされてしまいました。

「もしかして、なにかトラップが仕掛けてあるの?」

何故か興味を持たれたお姉さんが前屈みで聞いてこられます。

「ええ、罠が仕掛けてあります。」

私は、その前屈みになった事でテーブルに押し付けられる様にして大きさを強調してくる部分を観察しながら答えます。

「どんな?」

「それは、いくらお姉さんでも・・・」

そうです。いくら、そんなお胸をしておられても私は女性です。お色気作戦には、騙されません。

「これでいいかしら。」

そんな私にその『たゆんたゆん。』と強調されたお胸から出てきた封筒を差し出されます。しかし、私はその誘惑には屈さず封筒を受け取り中をちゃんと、確認いたします。

「・・・話がわかるお姉さんですが、これでは、無理な話にございます。私の財産がかかっておりますので・・・」

「じゃあ、この位?」

「いえいえ。これでは足りません。」


ー10分ほど交渉中ー



「これ以上は、出せないわよ。」

「・・・ふぅ、仕方ありません。お姉さんの頼みです。」

「中々貴方も取っていくわね。」

そうです。私はついにお姉さんの誘惑に屈してしまいました。やっぱり、私も女という事でしょうか・・・。胸が大きくなるクリームそんな夢があるものがあるなんてまだまだ世界は広く。そして、こんな誘惑には負けてしまう自分自身の修行の足りなさに反省するばかりでした。しかし、後悔しておりません。


「お姉さんこそ見事な値切りでした。」

なぜか私達は、握手をし合い相手を褒め称えました。

そんな私達を呆れながら見つめる隊長さん。

どこかお嬢様と、姿が被るのは何故でしょうか?

「何故、隊長をみて黄昏てるの?ちょっと、きいてる?・・・侍女ちゃん黄昏るのはいいのだけど・・・罠は?」

そんなお姉さんのツッコミで私は我に帰りわなの説明を始めました。

「ああ、罠でございますね。まず、探すところから始まりますが、目印になるものはありません。」

「え?ないの?」

「はい。」

「じゃあ、どうやって見つけるのよ。大変じゃない?」

「その点は問題ありません。頭に入っておりますので」

「え?」

何故か変な顔で固まっておられるお姉さんを無視して、私は説明いたします。

「ここら辺一帯の建物、道、地脈、木の一本一本の皺。木の枝の伸び具合まで記憶しておりますので道に迷うという事はありません。」

「は?」

「お前。もしかして、隠し通路見つけたのは偶然じゃないな。」


「・・・。なんの事でしょう。」

私は引きつりそうになる顔をなんとか誤魔化し笑顔で隊長さんを見つめます。


しかし、なぜでしょう。何故この方頭の回転が早すぎます。さすが暗部の隊長さんという事でしょうか。



「はぁ、面倒くさいが、これをやる。」

ため息をつきながら差し出された封筒を私は、受け取り、やはり中身を確認いたします。

私が提示しようとしていた金額もぴったりです・・・ぐぬぬ。やりやがります。隊長さん。

しかし、そんな均衡を崩す様に



「ついに隊長までお金を・・・」



いつの間にか帰ってきていたチャラ男さんが驚愕しながら私を見つめておられますが、私はそれを気にせずお金を懐に忍ばせます。

もう、やけっぱちです。なんでも話してやりましょう。


「では、先に隠し通路ですが、歩いてわかったんですが、廊下や二階に行くまでの階段の段差の数その他の違和感が有りました。微妙な空間の調整が行われ階段の段差が段数は、同じなのに東側だけ微妙に高くなったていたり、外の壁と部屋の広さが合っていなかったり、最終的に決定打になったのは、二階を歩いた時に偶にある少し音の違う場所でした。

この諸々から計算しまして、最短距離で移動・・・ゴホン。何かあった時に困ると思い調べさせて頂きました所。こちらを発見した次第でございます。」

「相変わらず、侍女ちゃんのよくわからない。スペックの高さはビックリするよね。」

「ねぇ。音の違いとかあった?無かったわよね?」


こそこそと、お姉さんとチャラ男さんが何やらしゃべっておられますが、私は、隊長さんを見つめたままそらしません。

何故なら、ただ長ったらしいグルグルと迷路のように入り組んだこの学園にただ昼寝の時間を確保するため隠し通路を探し見つけたと正直にいったならばこれは、もう本能的にやばいとしか言いようがありません。

ですが、見つけ方には嘘をついておりません。

そんな私を張り詰めた空気が包みます。



「・・・はぁ、まあ良いだろう。」




私の長い審議は終わりました。私はこの瞬間、なにかを勝ちとりました。

この気持ちをどう表現したらいいのかわかりませんが私は法廷から無罪です。っと白い紙に書いて皆様の前に広げたくなる位の高揚感がありました。

そんな私の緊張感が緩んだ隙を狙ったのでしょう。

隊長さんが、私の耳元で「次に正直に話さなかった時は、どうなるか考えておけ」と2人には聞こえないよう囁かれたのは聞き間違いではありませんでした。ガクブル・・・。

し、しかし、なんでしょう。恐ろしいさと同時に胸の動悸が抑えられませんでした。

もしや今まさに私の新しい扉が開こうとしているのかもしれません。

まさかお嬢様ではなく。隊長さんで開く事になるとは、そして、このドキドキとなる胸の高鳴りはもしかして・・・





『恋でしょうか?』





これは、帰ってからお嬢様に聞いてみなければなりません。



さてさて、すっかり忘れていた2人には罠はどうなったのかと聞かれ、また罠の話に戻る事になりました。

はあ、そのまま忘れて頂いても良かったのですが、人生そんな良い事は起こりませんでした。


「さて、罠でございましたね。私の壺は見つけるまでも大変でございます。しかし、もっと大変なのは、見つけて開ける事でございます。まず、蓋には、普通の蓋とは、違う重厚な金属を使っておりまして、もちろん防水加工済みなのは、皆さんわかっておられるとおもいます。そして、その重さはそこらへんのひ弱な男子では開けることができない重さになっております。ああ、もちろん鍵も付いてますよ。」

「えっと、侍女ちゃんは、その重たい蓋は開けれるんだよね?」

そんな当たり前の質問にも私は笑顔で答えます。

「はい。私はこう見えても力持ちにございます。昔。兄達に虐められ、よく岩穴の前に巨石を置き、閉じこもったものです。その度兄達は、巨石を持ち上げることができないため、両親にバレる前に私がでてくるように、岩穴の前で何か芸を行い。気になった私が出てくるまで面白おかしく騒いでおりました。」

「どこから突っ込んだほうが良いですかね?隊長。」

「しらん。」

なぜか諦めた表情の皆さんを不思議に思いながら私はつづけます。

「そして、もし開けることができたなら」



「・・・ああ、続けるのね」

「隊長が突っ込まないから」

「なぜ俺が言わなければならん。」


なにやら向こうで3人で話し合われている様です。


「ん?なんですか?」

「いや、ごめんなさい。続きをお願い」

「はぁ、では、開けることができたなら、開けた瞬間ピンクのカラーボールが顔面に飛んで破裂し染料をかけます。これは、実証経験済みなので間違いありません。まあ、顔面に当たらなくても当たった瞬間周りに広がり何処かに付着するでしょう。そして、このボールの染料は、中々色が落ちません。洗剤でも特殊な洗剤を使わなければ落ちない特別製でございます。落とす時の洗濯が大変でした。真面目に自分の物を使うものではないですね。次の仕掛けは、中に手を入れ油断した時に時間差で発生する罠で空気に触れると、気化する媚薬を仕掛けております。

これは、男女関係なく無差別に襲いたくなる危険な薬品でございますが、私のお金を守るためです。仕方ありません。」


「えげつねぇ。」

「侍女ちゃんは、大丈夫なの?」

「私ですか?私には、毒は効きませんし、襲ってこられても、理性をなくした獣風情片手で意識を刈り取るなど造作もありません。」

自信を持って私が胸を張ると、なぜか引きつり気味にチャラ男さんが私から距離をとられました。なぜでしょう?


「媚薬は毒扱いになるのね。ってか媚薬も聞かないなら何の薬なら効くの?」

「そうですね。風邪薬等はききますよ。それに人間思い込むというのが一番の万能薬と言いますので毒も効かないと思えばもしかしたら効かないのかもしれません。なのでものは、試しです。・・・お一ついかがですか?」

「やめておく。俺は、まだ死にたくない。」

「わ、私も遠慮するわ」

「おれは、いいから侍女ちゃんだけで食べて」

そう言って、この間くすねておいたシシリー産の毒の入ったお菓子を差し出したのですが皆様に断られてしまいました。美味しいのに・・・。モグモグ。

この味を分かち合うときは、いつか来るのでしょうか?

「しかし、侍女ちゃんは、なんで侍女をしてるのか不思議だよね。薬師とかの方が向いてるんじゃない?」

そう問われたのですが、それは、残念事に無理なのです。

「私も薬師を目指した事はあったのですが、薬師になるには学校に行かなければならず薬師の国家資格までいるそうで私にはお金もなく無理な話でした。」

「そうなんだ・・・」

俯き気味になった私にお姉さんが、優しく頭を撫でてくれました。

やはり、母性はあの巨大な胸に宿るのでしょうか?

私はそっと、自分の胸を見つめ、ため息を零しました。

そんな暗い雰囲気を消し去ろうとしたのかチャラ男さんが私に尋ねます。

「でも、何故侍女?」

「ええ、聞きたいのですか?」

「ええっと・・・。いや・・・。じゃあ、これで・・・」

「仕方ありません。今日は特別にこの半額でよろしいです。」

もう皆さんお金を出す事が当たり前になってきておられます。

こうやって、少しずつ周りを変えていく。それが私の明るい将来に続く道なのは、わかっているのですが。

「まじで給料前だから助かるわ。ありがとう」

ただ、こう笑顔で純粋にお礼を言われると、私の良心に少しばかりの棘が刺さる思いでございました。

意外にチャラ男さんはいい方なのかもしれません。

私は彼にチャラ男さんなどと不名誉な名前をつけてしまいましたが、これから彼の名誉の為。親しみを込めてチャラさんとお呼びいたしましょう。きっと、喜んでいただけるでしょう。

さて、私はお金をもらった分話さなければなりません。

私は決意を新たに喋り始めました。


「それは、ある日でございました。私はお腹を空かせ、とある酒場まで行ったのです。ですが、お金が足りなくご飯にはありつけず壁を見つめそれがいつしかクッキーに見えてきた時でした。壁になにやら貼ってあった紙がみえたのです。よく見ると年齢性別を問わない求人募集の紙でした。それを読むと、破格の給金で、剥がされたあとはなく。だれも応募していないいつから貼ってあるのかわからないようなもはやボロボロになっていた求人でした。しかし、それがその時の私には、『ここに働きに行け』という神様の思し召しにもみえたのです。」

「へぇ。公爵家の侍女なんて、凄いのになんでだろう?」

「いや、おかしいわよ。何故侍女募集を酒場でするのよ。」

「そう言えば・・・。」


「因みに最初私は侍女要員ではなかったのです。募集されていた要員は、『毒を飲める人大募集!!君もいろんな毒を飲んでGo to heaven!!毒見役大募集!家族に遺言とお金を残すのも愛情だよ。』とかいてありました。」

「それはそれは、なんて言うか・・・」

「えっと、ほんとにその求人でいったの・・・。」

何故か引きつり笑顔の皆さんです。


「ええ、そうですよ?そして、そこにいらっしゃったのが旦那様でした。

旦那様は当時10歳だった私にわざわざ目線を合わせてくださり言われました。

『君のような若い子がいいのかい?』と、しかし、私は言いました。

『年齢とか関係ありません。経験はないですが頑張らせてください。』と、こうして公爵家に雇われることになり、いつの間にか『ただ毒味だけさせるのも、この子の成長によくない。』そう何故かこんな貧乏人の私にも公爵様は、親身になって頂きまして、侍女の教育を受ける事になったのです。」

「きっと、公爵様が良心の呵責に耐えきれなくなったんだわ」

「なんか、最初の方壮絶な勘違いがあるような気がするんだけど、おれだけかなあ?」


なにやら、ブツブツいっておられます。

勘違い・・・?なんの事でしょう。

公爵様は少し腹黒いですがとても、素晴らしい方です。


「そんな訳で、毒見役をしながら侍女の研修が始まったのです。

あの時の侍女長様からは、いつも、大変かわいがられ毎日お辞儀の練習。紅茶の美味しい淹れ方などを習い私も、根気よく教わっておりました。」


「なら、なぜそんな泣きそうな顔をしているんだ。」


あの時の思いは、口に出したくても、だせません。


「しかし、その日々も永くは続きませんでした。」



「あっ隊長無視されましたね。」


「そんなかこ・・・いえ。楽しい日々が過ぎ去るのは、はやく。私が、中々覚えられない間に侍女の研修期間の期限が迫っておりました。侍女長様は大変心配され日々目が釣り上り眉間には皺が増えるほどでした。」


「それはちがうんじゃ・・・それも眉間に皺って、もしかして侍女ちゃんの所為なんじゃ」


「皺と目が釣り上がるって相当キレてるわね。」


「期限が来れば何故か毒見役もクビになる儚い身でございましたが、私は精一杯いろいろな事を教えていただきました。礼儀・作法・掃除・洗濯・料理などなど様々な事をその時教えていただきました。」


「チャラ男も無視されてる〜。」


「お前がチャラ男っていうな。チャらくない。」


「そしてある日。珍しく屋敷内はドタバタしており、人手が足りないようでした。ですから、珍しくウィリアム様が私にお駄賃をくださりこれを買ってきてほしいと頼まれたのです。

私は、すぐに買いに行き戻ってきた所。何故かウィリアム様は驚かれその場に居合わせた侍女長様も、珍しく目もつり上がってないお顔でお迎えしてくださりました。」


「ねぇ・・・一体お使いで何があったのかしら?」

「俺がわかるわけないだろ。」


「その後。またいろいろありまして、試験前日。何故か侍女様の手元にはたくさんの硬貨が入った大きな袋がありました。」




◇◇◇




『いい?100円あげるから、お茶の準備をなさい。』

『畏まりました。』

私は、急いで食堂に向かうため自身の能力。影移動を使いお茶の準備をして戻りました。

『お待たせ致しました。』


『・・・。』


『クロマッカ地方のブレンドティーでございます。侍女長様がお好きですよね?』


『なんでそれを・・・。』

『クロマッカ地方は、侍女長様のふるさとでございますよね?多少癖がありますが、ほのかに香る爽やかな香りはあの地方独特の茶葉にしかない味わいがございます。』

そう・・・。いつも、この紅茶を飲まれる度皺が一本減っておりました。

私はよく侍女長様から相手を思いお茶を淹れなさい。そう何度も言われておりましたのをおぼえており選んだ紅茶でございました。


『・・・ええ、そうね。淹れ方も味も合格です。これは、これで怖いわね。はぁ、・・・じゃあ、次は場所を移して洗濯を200円でお願い。』


『畏まりました。』


私達は、洗い場に向かい。洗濯を行いました。その時。流動操作と、私が特性でお作りした洗剤を使いながら、洗濯物を洗い終えると、何故か侍女長様はその白さに唖然とされ涙ながらにブツブツと言われておいででした。

その後は、いろんな事を頼まれましたが、その全てに合格点をもらっていったのです。



『貴方。これは、最後の私からの誠意とおもって、ききなさい。公爵家の侍女に正式になるなら、給金が研修時より3割増致します。貴方は、明日クビになるか。合格してこの差額分を貰いながら真面目に働くか今日中に考えて明日の試験に挑みなさい。そして、今日は、もう眠りなさい。わかりましたね。』

『はい。わかりました。』


あの時の、気迫は、いまでも身震いしてしまうほど、恐ろしい気迫でした。


そして、私はその言葉を胸に試験に挑みました。


『給金3割増。・・・給金3割増。』


◇◇◇





「そして、私は次の日。試験官の方からの正式な合格を貰い、公爵家にお仕えする事になったのです。」


「つまり、研修期間さぼっていたんだね。」


「それは、違います。研修期間は、10時から15時までの侍女長様が手があく短い時だったからといって、わざとギリギリに合格した訳ではありません。」


「その言葉・・・。なんか自白しているよな。」


「・・・その時の、侍女長様がうかばれないわね。」

まったく、なにをおっしゃっているのでしょうか。侍女長さまはそんな柔な方ではありません。そう・・・。


「大丈夫です。その後も侍女長様にはよくしていただき、・・・グス。特に合格してからの可愛がりは、それはそれは・・・グスグス・・・想像を絶する可愛がりでした。侍女長様が引退なさる時には私は号泣して・・・グス・・・1日仕事が出来なくなりそうなほどでした。」

私はその時を思い出しハンカチで涙を拭いました。

「・・・侍女ちゃんが、悪いからね。」


そんな涙を拭い、落ち着いた私はそろそろ帰る支度をします。

「長話してしまいました。皆様には私のお話に沢山の寄付をしていただきありがとうございます。つきましては、領収書も発行しておりますがどうしましょうか?」

「経費で落ちるかなぁ」

「落ちないと思うけど、何故か犯人不明だけど・・・。事件を解決してるから一応貰っときましょう。」

「じゃあ、一応全て出しておきますね」

私はサラサラとペンを走らせ、手渡すとお皿やテーブルを片付けます。


ついでにテーブルは、ワンタッチの折りたたみ式でございます。

お値段は一万円をお勉強価格3割引致しまして、七千円で販売中でございます。

え?いらない?

仕方ありません。今日の所は諦めましょう。

「そう言えば、最初の話って、壺を埋める場所だったけど、決まったの?」

「は!そうでございました。」

途中抜けて会話に参加できなかったチャラ男さんが聞いてきましたが、私としたことが、忘れておりました。どうしましょうか・・・。


「そういえば、決めてなかったわね。」

「出来れば静かなところが良いのですが」

「じゃあ、学園の隅にある。沼に沈めてみれば良いんじゃない?縄とかつけて」


「は!!それは新しい発想でした。早速行ってみます。」

そう言って駆け出していく私を見送りながら、お姉さんがポツリと


「ねぇ、あそこって底なし沼って言われてなかったかしら」

「え?そうだっけ?」

「そうよ。もし、縄が外れて、そのまま沈んでいっても、私知らないから」

「隊長!!」

「骨は拾ってやる」

「・・・やばい。早く追いかけないと、何されるか。想像しただけで恐怖でねれねぇ」


そんな会話がなされているなんて知らない私はスキップしながら最高速度で沼にむかったのでありました。



◇◇◇

そして、その日の朝。



「お嬢様。実は相談したい事がありまして、・・・私、恋をしたようです。」

「は?」

「ですから、私、恋をしたようです。」

私が決死の思いでこの言葉をお伝えしているのに、お嬢様はまだ半分寝ておられるようです。

「私、悪い夢を見てるのかしら?」

「お嬢様。夢ではありません。」

そういって、失礼ながら、お嬢様の頬を後が残らないよう強めで抓らせて頂きました。


「痛い・・・?痛いわ!!頬を抓らないで!!夢じゃないのはわかったから!!・・・まったく朝からなんて、問題発言を・・・」


これにはテクニックが必要になりますので、良い子の皆さまには真似をされないようにおねがいいたします。


そして、私が良い子に注意喚起をしている間になにやら、最後の方は聞こえませんでしたが、ブツブツと言いながら、おこってらっしゃるようです。

抓り過ぎたでしょうか?


「恋だという証明はあるの?」

「実は、あの方(の言葉)を思い出すと、動悸が止まらないんです。」


「あなたのため・・・。いえ、正直に言うわ、相手のため・・・。そして、私のために」

何やら決意を固めておられるようです。

どうしたのでしょう。



「きっと、それは、恋じゃないわ!!今すぐ考え直しなさい!!相手に迷惑がかかります!!」


なぜか必死に間違いだとおっしゃるお嬢様は、私が納得されるまで説得されることになり、朝から壮絶な説得劇が繰り広げられました。


まったく寂しがりやなお嬢様は侍女離れができるのでしょうか?

私に春が来るのは当分先のようです。


皆さま。応援。感想ありがとうございます。

ちゃんと、読ませて頂いております。

そのうち落ち着きましたら、返信をさせていただきます。

そして、今日はびっくりな事に何故か日間ランキングの10位内まで上がり、もはや、びっくりし過ぎて恐怖を覚えております。

ですが、嬉しいです。

こんな話ですが、一応出来たてホヤホヤの作品を投稿さていただきます。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

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