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カルロスの欠片➀

執筆中小説を漁っていたらこの物語にまつわる話がそれなりの量書かれていたので、せっかくだから載せるだけ載せておきます。本編の蛇足程度にお考え下さい。更新速度は未定です。

「流石神童」

「天才だ!」


 聞き飽きた言葉だ。そんなもんはもう言われなくても分かってる。親にも同じような事を言われ続けてきた。

 そう、俺は誰よりも強い。強いはずなんだ。

 ……なのに。


「カルロス・マルテル。不合格」


 おいおい、どういうことだ? 俺が不合格だ?


「もう一遍言ってみろ……」

「ほう、もう一度聞きたいのか? 珍しい生徒もいるものだな。では言おう。君は不合格だ」

「あ!?」


 思わず校長の胸倉に掴みかかる。しかしその手は非力にも別の手によって引きはがされた。


「どういうつもりだマルテル? 不合格と言っただろう? これ以上は私どもも処置を考えねばならない」

「チッ」


 せめてもの仕返しにと悪態を吐き、仕方なく部屋を後にした。

 ふざけやがって……この俺が失敗? クソッ、流石に油断してたか……。


「まぁ仕方ないだろ? だってお前まだ十三じゃん。九年ってだけでもすごいんだから気にする必要はないって」

「そうだぞ、俺なんかもう学院にいられない歳なのに失敗しちまったしな」


 雑魚共がこぞって俺に嫌味でも言いに来たか。さぞかし愉快なこったろうよ。


「なんにせよ、まだまだ時間はあるんだ、心配す……」

「うっせェ! 雑魚はぬるま湯にでも浸かってぬくぬくしてろ! 俺はテメェらとは違うんだ!」


 そう、俺は最強だ。そんなぬるい励ましなんかいらない。

 あんな言葉の数々は全部ただの"逃げ"だ。逃げに徹する奴らは所詮それまでの雑魚。雑魚に存在価値は無い。


「おいカルロス、流石に……」

「うっせぇ雑魚。それともなんだ、決闘(モバラザ)でもするか? もし俺が負ければ俺の全部くれてやるよ。……だが、テメェが負けた時にはお前の全てを頂くぜ?」


 俺の放つ言葉に誰も動かない、動けない。

 ほら見ろ、誰一人俺に挑もうとしねぇ、そこに君臨するだけで他を畏怖させる。これこそが絶対の王者、最強。

 ……だが、俺は卒業試験に合格できていない。クソッ、ふざけやがって……。

 まぁいい、最強であっても油断くらいある。何にせよ今は、これからはもっと強く、最強の上を目指す。ただそれだけの事だ。来年にはぜってぇ卒業だ。


――――不合格。


 なんでだよ……なんで俺はまたクソみてぇな言葉を告げられてんだ? 一年間ずっと今日のために、合格するためだけに鍛錬してきたんだぜ?


「校長、何かの間違いじゃ……」


 だって俺は十分やった。満足にやれたはずだ。余力だってまだまだある。あんな試験なんざ朝飯前だ。確かに去年は礼儀も酷かった気もするからそれもマシにはしたはずだ。


「間違いではない。君はもう少し自分を見る事だな」

「ですが……!」

「また去年のように言えばいいのか? 何の生産性も感じられんがな」


 校長はこちらを見下すかのように睨み付ける。


「いえ……」

「ならけっこうだ。では私は会議があるので失礼するよ」


 それだけ言うと、校長は部屋を後にする。取り残されるのは俺一人。

 

「なんでだよ……」


 俺が最強なんだ。俺ならなんだってこなせる。それは誰しも口をそろえて言ってきたことだ。今までもそうだっただろう、現に問題も無く九年まで上がって来れてる。


 だがなんでここで止まってんだ? 九年の中にも俺に肩を並べる奴は一人もいないってのに……待てよ、そうか、だったらたかが学院行事の一つの卒業にこだわる必要なんかないんじゃねぇか? そうだよ、卒業なんかしなくたって俺が最強なんだ……。最強である必要条件に卒業なんか要らねぇ……ハハ、なんでそんな簡単な事に気付かなかったんだよ……。


「俺が、俺こそが最強だ!」


 意味もなくわめく。だが恐らくこれは八つ当たりなんだろう。


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