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神の悪戯  作者: 山本正純
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 男子トイレ内で野々原はサマエルに電話した。

「僕です。サンプルを入手しました。これからそっちに送ります」

『こっちの準備も終わった。サンプルが届いたら結果待ちだ』

「ところでそちらはどうなりましたか」

『4人とも準備は整っている』

「そうですか分かりました」

 野々原は電話を切り、男子トイレから退室した。


 丁度その頃合田は大野からの電話を受けた。

『被害者遺族の白石の父親ですが、3年前に交通事故に遭って亡くなっていることが分かりました』

「そうか。父親が事故死していることが分かった今、白石の被害者遺族による復讐殺人という線は無くなったな」

『それはどういうことですか』

「19年前の事件で殺害された白石が父子家庭だったということは知っているな。白石には親戚がいなかった。つまり被害者遺族による怨恨が犯行動機ではないということだ」

『合田警部の捜査に進展はありますか』

「例の不審車の所有者が櫟井連という男だということが分かった。彼に話を聞きに行ったが、門前払いにされた。彼は松本元総理の豪邸で仕事をしているから、政界絡みの事件なのかもしれないな」

『櫟井連ですか。櫟井連さんは白石未来さんの友人ですよ。白石さんについて調べていたら分かりました。この事件は19年前の被害者の友人による怨恨殺人かもしれません』

「確かにその可能性もあるが、お前らは東都刑務所に行き、岡野のことを聞いてこい」


 その頃野々原は再び豪邸のダイニングルームに戻ってきて、5人に話しかけた。

「今後のことをお話する前に一つ確認をさせていただきます。この5人の中に岡野という男を知っている人はいませんか」

 その突然の問いかけに櫟井たちは戸惑う。

「野々原さん。何が言いたいんだ。まるで警察みたいなことを聞いて」

 櫟井の言葉に残りの4人は納得した。

「櫟井さん。これは重要なことです。この豪邸の人間が疑われている現状から考えると、警察はなぜ岡野さんがこの豪邸を訪れたのかを調べます。もしもこの5人の中に岡野と繋がるミッシングリンクがあるとしたら、それを把握しておかないと、今後の作戦に支障が出ます」

 野々原の意見を聞き、長谷川と櫟井と相川の3人が手を挙げる。

「これは面白いことになりました。まさか遺体を遺棄した2人が岡野さんと関係があるとは。まず櫟井さん。あなたと岡野さんの関係について教えていただけませんか」

 岡野との接点がある3人はそれぞれ事情を話す。櫟井は19年前の殺人事件で岡野に友達を殺された。長谷川は岡野と刑務所で同じ部屋で暮らしていた。相川は岡野たちが収容されていた刑務所の刑務官だった。

「なるほど。ということはこの3人の中で贖罪の山羊に相応しいのは櫟井さんということになりますね」

 事情を把握した野々原の憶測を聞き、櫟井はあわてる。

「贖罪の山羊というのは何だ」

「またの名をスケープゴート。すなわち生贄です。警察があの防犯カメラの映像を解析して遺体遺棄の共犯者の長谷川さんを特定するのも時間の問題。ということで櫟井さんを主犯とすることで事実を隠蔽しようではありませんか。幸運にもあなたには動機がある。どうですか。お嬢様のために贖罪の山羊になる覚悟はありますか」

「分かった。そのシナリオで進めよう。いざとなったら俺が主犯ということで警察に出頭すればいい」

 その櫟井の覚悟の声を聞き、日向沙織は再び額を右手で触った。


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