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神の悪戯  作者: 山本正純
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 そのダイニングルームには、5人の男女が集まっている。

 ダイニングルームのソファーに松本叶が座っている。櫟井連と長谷川真の2人は木製の椅子に座っている。日向沙織は、銀色のトレイを持って部屋のドアの前に立っている。相川龍は本棚の本に手を伸ばしている。

 合田は室内にいる5人に対して警察手帳を見せる。

「警視庁の合田だ。櫟井連さん。あなたに殺人の容疑がかけられている。少し話を聞かせてほしい」

 その刑事の言葉を聞き櫟井は首を傾げる。

「何のことだか分からないな」

「とぼけるな。東都西公園の駐車場の防犯カメラにあなたの所有する自動車が映っていた。その自動車はこの豪邸に戻った。それが証拠だ」

「ニュースでやっていたよ。殺されたのは岡野という出所した受刑者だったって。仮に俺が岡野を殺したとしよう。だが俺には動機がない」

「車を見せてもらえないか。それに岡野が乗っていたという痕跡があったらあなたを逮捕する」

「それをしたかったら逮捕状を持ってこい。ただ駐車場の防犯カメラに映っていただけで、俺を犯人扱いするな。俺を逮捕したかったら俺がなぜ岡野を殺したのかを証明しろ」

 さらに合田は部屋に集まっている人々に呼び掛ける。

「皆さん。写真を撮影させてください。先日の死体遺棄事件の犯人が乗っていたとされる車はこの豪邸に戻った。つまりこの中に犯人がいるかもしれないということだ」

 その合田の推理を聞き執事の野々原は反論する。

「いきなり容疑者扱いですか。あなたは何をしようとしているのかが分かりますか。この豪邸は元総理大臣の自宅。この豪邸で暮らす人たちを疑わないでください。これ以上強引な捜査が続けば事件を隠蔽しますよ」

「殺人だ。一人殺されている。犯人はこの豪邸の中にいることは分かっている」

「だからその殺人犯がこの豪邸内にいる人間とは限らないでしょう」

 野々原の言葉を聞き合田は唇を噛んだ。

「兎に角そんな証拠だけで犯人扱いしないでください」

 合田は櫟井に話を聞くことができず、豪邸から追放された。


 閉まっていく門扉を見ながら合田は呟いた。

「あいつらは何かを隠しているな」

 合田が呟くと、そこへ、木原と神津がタクシーに乗って合田たちの前に現れた。

「合田警部。そこで何をしているのですか」

「お前らは岡野の足取り捜査を指示している。なぜお前らがここにいる」

「足取り捜査です。昨日午後10時40分頃このタクシーに乗って岡野がこの豪邸を訪問したという証言を得ることができました。それでその豪邸までをタクシーで案内していただきました」

「そうか。ということはこの豪邸内で岡野が殺された可能性が高いということか。俺たちは公園に駐車していた不審な車の所有者からこの豪邸に辿り着いた。車の所有者は櫟井という男だが、邪魔をされて詳しい話は聞けなかった」

「タクシー運転手の証言は、午後10時30分に岡野がタクシーに乗り込み、住所の書かれた紙を見せた。その住所を手掛かりにしてタクシー運転手は岡野をこの豪邸に送ったらしい」

「タクシーに乗り込む前の足取りは分かったのか」

「午後9時。岡野は午後9時に、自宅マンションを出発。近所のコンビニヘブンマートのポストに涙を流しながら手紙を投函していました。その後彼は菅野聖也弁護士とファミリーレストランで食事をしていたそうです。菅野弁護士にも話を聞きました。岡野は菅野弁護士にある男のことについて話していました」

 木原は手にしていた封筒から一枚の写真を取り出す。

「名前は相川龍。3年前まで東都刑務所の刑務官を務めていました。因みに菅野弁護士は先ほど報告に出ていた豪邸の住所が書かれた紙については知らないと言っています」

 その写真の男に合田は見覚えがあった。先ほど豪邸のダイニングルームにいた、白ひげが特徴的な50代前半の男。それが相川龍だ。


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