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2月4日。午前1時。東都西公園の駐車場に一台の自動車が停車した。
その自動車に乗っているのは2人の男。助手席に座っていた長谷川は自動車から降りると、後部座席のドアを開け、後部座席に置かれた寝袋を担ぐ。
「本当にやるのか」
長谷川が聞くと、運転席に座っている、櫟井連が頷いた。
「仕方ないだろう。お嬢様のためだ」
「そうじゃない。ここ以外にも場所ならいくらでもあるって言っているんだ」
「馬鹿か。ここ以外にどこがある。お嬢様との接点がある場所を選んだら元も子もない。それにここから脱出するには警察の検問を通らなければならない。警察の検問に捕まったら、全てが終わる。ここに捨てるしかないのさ」
「分かった。道具は後ろに積んである。早くしよう」
櫟井連が道具を担ぐと、2つの影は公園の森に向かって歩いた。
3分後2人は森の中に立っていた。2人はスコップを手にしている。長谷川が寝袋を開けるとそこには男の遺体があった。
これから2人は男の遺体を埋めようとしている。2人がスコップで地面を掘ろうとした時、櫟井の携帯電話が鳴った。
「お嬢様。今作業中でございます。ご安心ください。我々に任せておけば完全犯罪ですから」
『分かった』
お嬢様と呼ばれた若手議員松本叶は洋館の一室で電話を切る。そんな彼女の前には一人の灰色のスーツを着た男がソファーに座っている。その男の名前は愛澤春樹。テロ組織退屈な天使たちの幹部だ。
「愛澤さん。すみませんね。こんな時間に呼び出して」
「構いません」
「これからどうしますか」
「隠蔽するしかないでしょう。死体遺棄をしたのはあの2人の意思です。その意思をあなたは無駄にするつもりですか。ただ捜査を担当するのが警視庁捜査一課三係だったら厄介です。ご存じでしょう。政界の人間でも」
「彼らの正義は政界の闇までも暴くそうですね」
「大丈夫です。僕はあなたの味方ですから。味方になる条件として、1週間ほど執事として雇ってもらえませんか。もちろん変装をします。ご希望ならあなたが望む顔のイケメン執事に変装しますが」
「分かった。今日から働いてくれ。顔は任せる。ブサイクでも構わない」
「分かりました。約束は守ってください」
愛澤春樹が変装をするための部屋を借りた頃、レミエルは首都高速を愛車であるポルシェ・ボクスターで走っていた。その助手席にはウリエルが乗っている。ウリエルはサマエルからの電話を受けていた。
「間違いありませんか」
『間違いない。これが神の悪戯という奴だろう。そのことでラグエルが潜入捜査をしている』
「結構早いですね」
『それを含めての神の悪戯だ。これは想定外だから早めに対処した方がいい』
「了解です」
ウリエルは電話を切り、運転手のレミエルに報告する。
「サマエルからです。神の悪戯は早めに対処しろとのことでした」
「対処のためなら狙撃してもいいんだよな」
「構わないそうですよ。許可は受けています」
「それはよかった」
レミエルは笑いながら愛車を走らせる。夜明けは近い。