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神の悪戯  作者: 山本正純
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 2月5日。午後1時。ワイドショーでは東都西公園死体遺棄事件について報道していた。

『東都西公園死体遺棄事件について、警視庁は死体遺棄を行ったとして櫟井容疑者と長谷川容疑者を逮捕しました。尚警視庁はこの事件で被害者の岡野さんを殺害した日向沙織さんを殺人犯として指名手配すると発表しました』


 キャスターがニュースを読み上げると、新たなるニュースが届けられた。

『只今入ってきた情報によりますと、田中ナズナ衆議院議員が議員を辞職するとのことです。詳細は後日記者会見で発表されます』

 このニュースが流れ、喜田は刑事部長室のテレビのスイッチを切った。

「松本叶が事情聴取を受けているという情報は報道されていませんね」

「当たり前だろう。元総理の娘だ。彼女を事情聴取していると知られたら、政界を敵にすることになる。それだけは避けなければならない」

 

 その頃警視庁の取調室で松本叶は合田に取り調べを受けていた。

「なぜ日向沙織を庇った」

「あの人との約束を守りたかったから。あの人と出会ったのはアメリカだった。あの人も私と同じように大工健一郎衆議院議員のことを恨んでいた。私は大工の何でも利用する所が許せなかった。あの人は個人的な動機で恨んでいたらしいけれど。1年前にあの人と再会してから、ある約束をしたの」

「その約束は、野々原と日向が逃走した時に呟いた『籠の鳥』という言葉が示しているのか」

 合田の問いかけに対して松本は頷く。

「そう。籠の鳥は自由になれない。日向沙織は記憶喪失者。失われた記憶を取り戻すことができるのは、あの人しかいない。だから私はあの時あの言葉を呟いた。その約束が殺人犯の逃走を手助けすることになるとは思わなかったけれどね」


 その事情聴取の最中、千間刑事部長が取調室に入ってきた。

「そこまでだ。松本叶を釈放する」

 この千間の判断を聞き合田は驚く。

「松本叶は日向沙織の逃走を手助けした。その罪で裁かれるべきだ」

「ダメだ。元総理の娘が殺人犯を逃がしたという事実を隠蔽する。それが警視庁上層部の判断だ」

「理解できない」

「理解する必要はない。兎に角松本叶は秘密裏に釈放する。釈放は松本叶だけだ。櫟井と長谷川は釈放しない」

 千間は松本叶を取調室から連れ出した。こうして事件は一部の事実を隠蔽される形で幕を下ろした。


 それから1時間後、田中ナズナ衆議院議員は都内のホテルで記者会見を行った。

「なぜこのタイミングで辞職したのですか」

 新聞記者からの質問を聞き、田中ナズナは淡々と答える。

「福岡県議会議員として再出発したいと思ったので、突然ながら辞職することにしました」

「日向沙織さんをご存じですか。あなたと瓜二つの女性です。彼女と辞職とは関係があるのですか」

「日向沙織さんは田中ナズナ衆議院議員の妹ではないのですか」

 質問が飛ぶ中で、田中ナズナは沈黙する。そして彼女は突然記者会見を強制終了し、記者会見場を後にした。


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