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午後2時30分。合田は北条がいる鑑識課を訪れた。だが北条はその場にはいなかった。
その代りにいたのは、清原ナギだ。
「清原。北条はどこにいる」
「トイレです。北条さんに何か用ですか」
「もう一度コンビニの防犯家カメラの映像を見せてほしい」
「分かりました」
清原は頷き、パソコン上にコンビニの防犯カメラの映像を表示させる。問題の不審な人物の映像が再生され、合田は映像を凝視する。そこに映っていたのは、長谷川真だった。
長谷川はタバコを受け取ると、何かをレジの近くに設置されたゴミ箱に捨てた。
「清原。悪いが仕事が増える」
その映像を見た合田は鑑識課から出て行き、部下の木原に電話する。
「合田だ。頼みがある。不審な男の身元が分かった。名前は長谷川真。不審な男が来店したコンビニのレシートを入手してほしい。彼はコンビニのレシートを捨てた。これは物的証拠になる」
『ということはこの事件は、長谷川と櫟井による犯行ということですか』
「それはまだ分からない。あの2人が殺したという証拠はない。その代り、あの2人が遺体を捨てたという証拠は集まりそうだ」
『分かりました。入手してみます』
合田が電話を切ると、月影管理官が彼の前を通り過ぎた。そして彼は突然振り返る。「長谷川って言いましたよね。そのことに関して情報提供しましょうか」
「月影。長谷川について何か知っているのか」
「長谷川は元受刑者。10年前女子小学生を誘拐した罪で逮捕され、懲役8年の罪に問われました。長谷川は大量の少女漫画が山積みにされた部屋で女子小学生を監禁していたらしいです。調べたら分かりますが、長谷川は岡野と同じ刑務所に服役しています」
「前科者の指紋は登録されていたな。すぐにでも物的証拠が手に入る」
その頃木原と神津は、コンビニヘブンマートのレシートを、コンビニの待合室の机の上に並べていた。このレシートの山からたった一枚の証拠品を探す。気が遠くなりそうな作業がこれから始まる。2人は手袋をして、一枚一枚レシートを見ていく。
それから1時間後、目的のレシートが木原の手により見つかった。
「このレシートです。2月4日。午前0時45分。エックス・マイルド。一箱」
目的のレシートが見つかり、木原たちは店長にレシートを返却した。その後で木原はビニール袋に問題のレシートを入れ、神津が運転する自動車に乗り込んだ。
「このレシートに付着している指紋が長谷川の物だったら、重要参考人として事情聴取できるな」
「そうですね。しかしこのレシート一枚で事件の真相を見抜くことはできません。この事件の背景には何かとんでもないものが隠されているかもしれません」




