一話 「最初の出会い」
このサイト様の使い方すらまだ熟知していないです。
暇つぶし程度に目を通して頂けたら、私は嬉しい限りです。
―――二次元に行きたい。
幸一は、今この≪二次元≫に存在している。想像していた通りでは、美男美女が街中を歩いていて、ある程度自由な世界……。
だが……。予想を遥かに裏切る光景が幸一を待っていた。
「ゲームかよこの世界は」
まるで、「ロールプレイングゲーム」の世界だ。
確かに幸一は今、街にいる。老若男女勢揃い、いい街だ。いい街なのだが、何故か武器を普通に売っている店がそこら中にあるのが幸一でも分かる。
ここで一つ、幸一の頭に浮かんだ疑問。それは、"此処が本当に二次元なのか"という謎。それとも、幸一が勝手に妄想していた≪二次元≫という世界は、存在してはいなかったのか。だが、あの「少女」は確かに「二次元に行きたい?」と言っていた。ということは、間違いなくここは≪二次元≫である。
「騙された…?」
恐る恐る最悪の事態を考える幸一。武器が普通の街で売っているということは、街の外に出たらモンスターが無限に存在しているのか。こんな自分に本物のモンスターを戦えなんて無茶な話だ。
そして幸一は、わずかだが「現実」に帰りたいと思うようになってしまった。こんな殺伐とした世界は嫌だ。それだったら、何も面白くないが平和なあの「現実」に…。
幸一は俯いて頭を抱えようとしたその時、背後から声をかけられる。
「あれ?新人さん?」
「…ひっ!」
突然声をかけられ身体が異常に反応してしまった幸一は、姿勢を崩して地面に倒れこむ。
「だ、大丈夫?驚かせちゃったのならごめんね」
「…い、いえ…大丈夫…です」
女の人…と幸一は声をかけてきた人物の姿を視認する。
綺麗に焦げ茶色に染まったロングストレートのしなやかな髪。背丈は幸一と変わらない程度だが、胸が一般人よりか少し大きい…というか随分胸が強調されている服装を着こなしているためか、少し大きく見えるだけだ。スタイルはいいな…などと変な妄想をしてしまう幸一は、首を横に大きく振って視線を女の人に戻す。
新人さんと言ってきたが、まさかこの女の人は教官か何かだろうかと幸一は思うが、予想を遥かに超えたとんでもない人物だった。
「なら良かったわ。私は、この世界に来た人を助ける…ナビゲーターかな?まぁそんなとこ」
「は?」
ナビゲーター。
この世界に来た人を助ける、ナビゲーター……………。
幸一は考えることが出来ない。つまりどういうことだろうか。この女の人は、自分の正体を知ってるのだろうかなどと想像を繰り返すが、結論には至らない。
思考を膨らませていくうちに、女の人から直々に説明が入った。
「ちょっと分かりづらかったかな…。大体君みたいな新人さんはこの街に来てそんな姿勢でいることが多いのよね。だから一発で新人さんってことが分かるようになっちゃって…。んで、私はその新人さんたちを助けるって言ってもあれだけど…まぁ色々なことを教えてあげる人って思ってくれればそれでオッケー」
その言葉で幸一はようやく理解する。そして、少し安心した。
この女の人が言っている限りだと、この世界にやってきたのは自分だけではないということが分かったからである。ということは、その人たちもあの「少女」に導かれた人間なのだろうか。
「…ちゃんと、わかってくれたかな…?」
「あ、あぁ大丈夫です大丈夫…」
「なら良かった。それじゃあ…とりあえずこの街を見て回りましょうか」
「あ、はい」
幸一は女の人の手を借りて何とか立ち上がり、とりあえず辺りを見回す。
不思議な世界だな―――と心の中で呟きつつ、幸一はしばらくこの女の人に着いていくことにした。
「とりあえずこれで一通り見たよね」
「た、多分」
一周して思ったことと言えば、この街は大きくないことだ。最低限必要な施設があるくらいで、人口も多くなければ人が賑わう場所も限られている。そこで、俺はこの女の人に聞きたいことをすべて聞いてみることにした。
「あの、聞きたいことあるんですけどいいですか」
「ん?いいけどー」
「この街の外に出たらモンスターとか出るんですか…?武器とか売ってあるとこ結構あるし…」
「出ないわ」
「は……。はぁ?!」
答えは俺の予想していたこととは真逆だった。
俺はすっかり武器はモンスターと戦うためにあるものだと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。とすると、別の使い道があるということだろう。だが、それよりも俺はこれからどうすればいいのか。街の外を出歩こうにもどこに何があるのかさっぱり分からないので、迷子になるのは確実か。だとすれば、俺はこの街から出られない……?
恐怖しか感じなかった。とりあえず質問できることは今のうちにしておこうと思って俺は大量の質問を女の人に投げかけた。
幸一による質問攻めが終わり、この街の中でどこに何があるのかと一通り説明が完全に終わった頃には、もう夕焼けが見える時間だった。
「とりあえず今日はおしまい。今日は私の家に来たほうがいいかもね」
「わかりま――――」
幸一は一瞬考えてしまう。このままだと、この女の人の家に泊まりに行くということになる。≪二次元≫だったらありそうな展開だと思ったが、あくまで今幸一が目にしているのは「現実」によく似ている。「現実」だとしたら、この状況は……と考えているうちに幸一は顔を赤くしていた。
しばらく考え込んだ結果、泊まることにした。
「……わかりました」
「うんオッケー」
この女の人は一体どういう神経をしているんだろうと幸一は深く悩みつつ、まだ聞いていなかった最後の質問をしていた。
「最後に、名前を教えてくれないですか?」
「あぁそういえば私も聞いてなかったね。私の名前はリーファよ」
「俺は幸一です」
「幸一…くんね。これからよろしくね」
「あ、はい。よろしく」
この出会いが、幸一にとって≪二次元≫での運命的な出会いになるのかはさて知らず、互いに握手し終えると、幸一は明日への一歩をようやく踏み出した。
投稿し終えた後で手を加えたり、修正するところがあるかもしれません。ご了承ください…。