プロローグ
初作品です。見苦しいところがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
地球。
それは神秘の惑星。生物は生物と共存する。生物にとっての「生」というのは、時間そのもの。
色々な生物が共存するこの神秘の惑星「地球」の中でも、特に進化をし続けた生物がいる。それこそ、我々「人類」という生き物だ。
この惑星では、いくら神秘と言えども、ファンタジー級の魔法だったりそんなものは使えるわけもない。それこそ、「奇跡」もない…………。
「…ほわぁ…あわわわ…うーんん…」
とりあえず、眠くなる授業だなぁと心の中で呟く。盛大にあくびをした俺は、とりあえずノートに視線を移す。当然真っ白だ。
「はぁ」
無意識にため息をつく。これが俺の日常なのか。とてもじゃないが、面白くもなんともない。せめて彼女がいるリア充生活だったらまだ楽しいのだろうが、そんなことあるわけない。
という日常が当たり前だと思っていた俺の名前は「幸一」。「こうちゃん」だったり呼ばれてるが、正直どうでもいい。
俺はただ、望んでいるだけだ。世界が大きく変わることを。そう望んでから約数か月。勿論、何も変わるわけがない。
ちょうど季節は秋を迎えたばかりの西暦2016年。少々時代の進歩が速すぎたと思う。四年前には十年かかるといわれていたリニアモーターカーの建設も、最早今年中に完成してしまうという技術の恐ろしい進歩が目に見えてわかる。
特にこの世界は変わったことはない。ただ、日本があまりに進歩しすぎてしまった。何のきっかけもなしに、日本だけが―――変わっていってしまった。
今はお昼時。ちょうどお昼休みという一種の行事だ。当然、俺の周りには誰も寄ってこない。だが、近づく度に暴言吐かれるよりかはマシだ。
何回も夢見たことはある。俺は、どうやって人生を楽しめばいいのか。俺に、人間としての価値はあるのだろうかということさえ思ったことがある。
退屈な毎日、何も起こらないこの世界。そこで俺は、一つの希望を口に出してしまう。
「二次元に行きたいな……何もかも楽しそうだし…」
今の時代なら誰が口に出しても全く不思議ではない。四年前にも「二次元に行きたい」という願望を持った人は多数いたが、今ではそれ以上。約数倍にまで跳ね上がっている。
日本という国自体は、技術が進歩しすぎた故、経済的には行けているが、問題はそこじゃない。その問題となる点は、あまりに技術が進歩しすぎたための、いわゆる「職人不足」。その仕事仕事に特化した技術を持った人材が減ってしまったのだ。
それはまさに、「進化の副作用」ともいえるだろう。
……と、気づけば幸一は「なにもない空間」にいた。
「なんだここ…?」
幸一は辺りを見回すが、本当になにもない。真っ白で、部屋というよりも"空間"。
すると、幸一の目の前に突然と姿を現したのは一人の少女だった。背丈は低いが、美しいじゃなく可愛い系。茶に近い色をしたロングストレートの髪型で、幸一の学校の制服とは違う制服を着こなしている。
「……」
何も話さず、ただじーっと幸一を見続けているあの少女は、一体どこから来たのだろう…と幸一は考えるが、この空間に入り口もなければ出口もない。四方八方とすべてが真っ白なのだから。
つまり謎である。しばらくして、少女から幸一に話しかけてくる。
「…本当に、君は二次元に来たい?」
この少女は、二次元の人間なのか。それとも、世界の案内人?
どちらにせよ、幸一は今の少女の問いに答えないわけにはいかない。
「…あぁ。そのためにここに連れてこられたようだし」
適当に答えた。しかしこの少女は、細い目で幸一の顔を見つめている。
しばらくすると、少女は頷き始め、ボソボソと小さい声で何やら独り言を呟きはじめたかと思うと、幸一に視線を戻す。
「分かった。本当にいいのね。何があっても君の責任は取れないけど…」
「大丈夫だって」
「…きっと、君は向こうに行ったら色々と苦労すると思う。だから…」
「…だから?」
一呼吸おいて、少女はこう言った。
「"人を信じること"……忘れないでね」
その時の少女の顔は、何とも悲しそうな顔だった。まるで、これから幸一に何が起きるかを悟っているかのように。
だが、あいにく幸一は少女の顔を見ておらず、先ほどの表情を視認することは出来なかった。
「あぁ分かった」
幸一は了承すると、少女は幸一に背を向けて、最後に一言と呟いた。
「また家に帰ったら、もう一回心の中で最初の一言を呟いて。そしたら、今度こそ行けるから」
「…あぁ」
その一言を最後に、少女の姿はこの空間から消失し、同時に幸一の意識も消える。一瞬で、幸一は目を開ける。
目から認識した景色は、教室だ。これは、幸一のクラスに間違いがない。だが、先ほどまで授業中だったはずの教室は、放課後のムードになっていた。
ずっとここで寝ていたのだろうか。だが、あの空間にいた時間はたったの五分程度。それだけで、五時限目の授業が終わるとは思えない。
つまり、現実世界とあの空間は時間の進み方が異なるということだろうか。幸一は、頭をムシャムシャかき回して、とりあえず家に帰るという選択をする。
その時の幸一は、何とも言えない感情が胸の内に秘めていた。
これから日常が変わるという「喜び」。だが、同時に「不安」もあった。今まで散々≪二次元に行きたい≫と願ってきたのに、なんで突然行けるようになったのか。という不思議なことも色々ある。そして、あの少女の正体は……。色々考えているうちに、幸一は自宅に到着していた。
無意識に全力疾走していたのか、物凄く息を切らしながら玄関を開ける。ただいまと一言呟くと、即座に自分の部屋に駆け込む。ドアを閉め、ベッドに寝転がると…深呼吸をする。
そして―――願った。