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双刀炎神《デュアルブレイム》  作者: ゆりゅ
目覚めた魔の龍
9/12

3-2

 金属同士が軋み合う音が、耳の奥で響いた。

 反射的に受けただけだ。

 考えるより先に、体が動いていた。

 世良龍人は、自分の手の中にある感触を理解するまで、一瞬の遅れがあった。

 ──受け止めた。

 結衣の前に、立っている。

 ナイフの刃が、わずかに震えている。

 その向こう側で、フードの男がこちらを見ていた。

 顔は陰で見えない、視線だけが合う。

 ただそれだけで、皮膚の内側が粟立った。

 まずい。

 頭の中に、警鐘が鳴り響く。

 ここで異能の力を使えば──結衣を巻き込む。

 距離が近すぎる。近すぎるからこそ、制御を誤れば終わりだ。

 背後に、気配がある。

 倒れた結衣がいる。

 呼吸は浅く、腹部付近の血の匂いが濃い。

 生きてはいる。だが、限界は近い。

 ──ダメだ。抑えられない。

 奴の刃が重い。

 致命傷を喰らってはいけない。

 過去の記憶が、嫌でも脳裏を掠める。

 守ろうとして──。

 力を解放し、取り返しのつかない結果を招いた。

 魔龍化。

 あれは、致命傷を負ったときだけ起きるものだ。

 そう思っていた。

 そうでなければ、困る。

 なのに。

 胸の奥が、異様に熱い。

 恐怖なんかじゃない。

 結衣が──あの状態でも、生徒を守ろうとしていた姿が、脳裏から離れない。

 彼女を傷つけたアイツを──許せない。

 内側から、それだけが溢れてくる。

 極度に昂った感情が、何かのトリガーを引いた。

 フードの男がわずかに距離を取った。

 警戒している。

 たった今の一瞬で、何かを感じ取ったらしい。

 ──まさか。

 体が、軽い。

 いや、軽いのではない。

 研ぎ澄まされている。

 傷はない。

 致命傷も、もちろんない。

 それでも、確かに──来かけている。

 世良は、歯を食いしばった。

 ここで踏み込めば、戻れなくなるかもしれない。

 それでも。

 背後で、結衣の微かな息遣いが聞こえた。

 頭の中で、もう時間がない──そう悟った。

 次の瞬間、世良は自覚するより先に──『黒刃レイブレード』を振り上げていた。

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