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双刀炎神《デュアルブレイム》  作者: ゆりゅ
目覚めた魔の龍
6/8

2-3

 昼休みの学園は、いつも通り騒がしかった。

購買前の列、廊下を行き交う生徒、どこからか聞こえる笑い声。

──平和だ。

少なくとも、表向きには。

弁当は全部食べた。結衣のやつだ。

……それでも、なぜか足は自然と購買に向いていた。

(考えすぎか)

Cランク任務を断ったことが、頭のどこかに引っかかっている。

だが、あれは正しい判断だったはずだ。

俺は購買で買ったパンを片手に、人気の少ない中庭へ向かっていた。

「──世良」

背後から、知っている声がかかった。

振り返ると、そこに立っていたのはノアだった。

同じ一年だが、こいつは俺とは違う意味で有名だ。

戦闘科トップ。実力主義。

少女のような見た目で、Sランク。

「何だよ」

「少し、話がある、ついてきて」

その目は、やけに据わっていた。

中庭の隅まで歩いたところで、ノアは足を止めた。

周囲に人はいない。

「さっき、購買で不知火結衣を見たの」

「……それが、どうした」

ノアは一瞬、言葉を選ぶように黙ったあと、吐き捨てるように言った。

「アンタ、本当に気づいてないの?」

意味が分からず、眉をひそめる。

「何の話だ」

「とぼけないで。今朝から、不知火に嫌な視線が集まってる」

──視線?

一瞬、結衣の顔が脳裏をよぎる。

だが、すぐに打ち消した。

「……学園じゃ珍しくもないだろ。Aランクだし、技術科じゃトップクラスだ」

「違う」

ノアの声が低くなる。

「値踏みの視線。狙ってる目なんだよ」

胸の奥が、わずかにざわついた。

「アンタ、今日の実習。不知火と組む予定だったわよね?」

「……断った」

「知ってる。だから言ってきたの」

ノアは一歩、距離を詰めてきた。

「アンタが距離を取ったせいで、今、不知火は一人なの、その意味分かってるわけ」

「それの何が悪い」

思ったより、言葉が強く出た。

「Cランクだ。何も危険じゃない」

「──ランクの問題じゃない!」

ノアが苛立ち、声を荒げる。

「最近出てる《最強殺し》の噂、知ってるでしょ」

「知ってるさ。ニュースでもやってた」

「じゃあ分かるはずでしょ。奴は一人になったトップクラスの上位者を狙ってる」

一瞬、空気が止まった。

「……証拠は?」

「……購買で、三人。廊下で一人。あの子を見てた視線、全部覚えてる」

ノアは、真っ直ぐ俺を睨みつけてくる。

「アンタ、一体何から逃げてるの?」

「……は?」

「不知火から? それとも、自分から……?」

言葉が、胸の奥に突き刺さった。

「俺は──別に」

「……もういい」

ノアは吐き捨てる。

「あの子、今朝からずっと周りを警戒してる。ああやって自分1人で抱え込んでしまうの、みてられないの」

知らなかった。

いや、正確には──見ようとしていなかった。

「あの子を守る気がないなら、最初から関わらないでくれる? 私の任務の邪魔」

「……っ」

「関わった以上は責任を持ちなさい。それが出来ないなら──」

ノアは背を向け言い放つ。

「それまでの男だったって事」

その背中を、俺は呼び止められなかった。

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