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双刀炎神《デュアルブレイム》  作者: ゆりゅ
目覚めた魔の龍
4/6

2-1

 数日後。

 背中と腕の傷もすっかり治り、いつもの日常へ戻っていた。

 ただ爪痕は残されている。

 破れた制服。

 壊れた自転車。

 周囲の人の視線。

 ──あの日を境に何かが変わった。

 ……ピンッ……ポーン

(誰だよ……こんな朝っぱらから)

 少し溜めてから、もう一度。

 独特のチャイムの鳴らし方にイヤな予感がする。

 昨日タンスから引っ張り出したままのワイシャツを羽織り、取り寄せたばかりの制服ズボンを履く。

 玄関まで行き、覗き穴から外を見る。

 するとそこに──やっぱり。

「……ぅ゙」

 ──結依が立っていた。

 不知火結依。同じ「闘戦学園とうせんがくえん」の一年で、幼馴染。科は俺とは別の「技術科エクスギア」で評価はAランク。

 そんな彼女がセーラー服を着て、チョコレート×ブラウン色の学生鞄を片手に持って立ちすくんでいる。

 今日は1人でいたい……が正直な感想だ。

 ならばいっその事、居留守を使おう。

 幸いまだ足音は立ててない。

 玄関部分には靴やら傘やらが散らばっている。

 そんな所をゆっくり忍び足で後退りすれば──転ぶのは必然的だった。

 ──ドンッ!

「うおっ!」

 玄関で足がもつれ、床に思いっきり体を打ちつけた。

「りゅ、りゅうちゃんどうしたの? だっ大丈夫?」

 ドアの外から、結依の声がする。

 駄目だ。音を聞かれた。

「あ、ああ、大丈夫」

 平静を装い、ドアを開けると……大きな包みを持って立っていた。

「で、何の用だ。後、りゅうちゃん言うな」

「ご、ごめんね。りゅうちゃ……あ、りゅうくん。今日来たのは昨日疲れてただろうし、夜ご飯とか食べてなくて、お腹減ってるかなって思って」

 ……ちゃんを、くんに変えただけだろ。

 昔から何も変わってないぞ。

 学園でのクールな姿と今の様子の落差が酷い。

「飯は……下のコンビニで──」

「それじゃ駄目だよ! 今日戦闘訓練の日でしょ? しっかり食べないと持たないよ!」

 言い切ったあと、ハッとして口を押さえる。 

「えっとね。お弁当作ってきたから、朝とお昼の分。良かったら……」

「わかったって。ちゃんと食べるから……ほら、早く帰った。ここ、男子寮なんだぞ」

「う、うん! また、学校でね! あ、あと──気を付けてね、最近『最強殺し』って言う学園最強だけを狙う狂人もいるみたいだから──」

 あぁ、今朝ニュースで流れてたやつか。

「分かった分かった。気をつけるから……」

「うん、あ、あと」

 結衣が一瞬、言葉を探す。

「その、今日の実習……一緒に任務受けませんか? Cランクなので危険も小さいですし、その……単位も貰えるので」

 結衣から意外な提案に、俺は目を見開く。

 俺は彼女から目を逸らし、応答する。

 無意識のうちに、両拳を強く握っていた。

「ごめん……今日は……無理だ」

 言葉は思ったよりも、簡単に出た。

 結衣が少し驚いた顔をする。

 それでも俺は視線を合わせなかった。

「……Cランクの任務だよ?」

「それでも、無理だ」

 そう言われるのは分かっていた。

 危険じゃない。

 失敗もしないだろう。

 ──それでも行けない。 

「悪いが……他を当たってくれ」

「うん……分かったよ。ごめんね急に変な事言っちゃって。またね、りゅうくん」

 ──ガチャん。

 足早に去っていく音を聞いて、胸の奥が少しだけ軽くなる。

 同時に、自己嫌悪が俺を襲う。

 ──逃げたな、俺。

 どうしてこう世話を焼いてくれるんだろうか。

 考えなくても分かってる。

 多分……あのときの選択が、今も俺を縛っている。

 ──グルルルッ!

 先程より大きく長く鳴って、もう限界に近い腹をどうにか持たせて、リビングの机で結依の持ってきた弁当を広げて食べた。

 食べ終えると、そのまま直通バスで学園へ向かった。

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