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双刀炎神《デュアルブレイム》  作者: ゆりゅ
目覚めた魔の龍
15/15

4-4

 翌日。

 最悪な気分で起きた俺は、居候娘にも飯を作ってやっていた。

「ほらよ、目玉焼き。知ってるか」

「バカにしてるの?」

「いいや別に」

 少しくらい弄ったってバチは当たらんだろう。

 その時、世良とノアの端末に同時に通知が入った。

『戦闘科──赤瀬ノア、世良龍人。至急、市街地外縁、廃墟地区へ調査に乗り出せ」

 短い文言。

 だが、それだけで理解出来た。

 ──初任務か。

 ノアの言っていた通りだ。

 装備を整え、指定された廃墟地区へ向かう。

 市街地外縁。

 一ヶ月前、異形が学園島の生徒たちを襲った事件が起きた場所に──魔力反応が確認された。

「随分あっさりした任務ね」

 歩きながら、ノアが言う。

 その声に緊張はない。

「調査だけ、って書いてあったしな」

「ええ。でも今になって再び魔力が強まったってことは、もしかしたら……」

 含みのある言い方だったが、追及はしない。

 今さらだ。

 現地に到着すると、予想以上に静かだった。

 崩れたビル、割れたアスファルト、錆びた街灯。

 だが、風すらない。

「……人の気配、無いな」

「そうね」

 ノアは周囲を一瞥し、端末を操作する。

「魔力反応が弱くなっている。完全に空振りね」

 その言葉で、逆に嫌な予感がした。

「魔力──抑えているのかも」

「その可能性は低い」

 あっさりと返される。

 調査は淡々と進んだ。

 破壊痕、残留魔力、異形の痕跡──どれも決定打に欠ける。

「本当に、何もないな」

 そう口にした瞬間だった。

 共鳴するかのように、愛用武器『黒刃レイブレード』が微かに──震える。

 と、同時。

 確かに、見られている。

 だがそれは、敵意とも殺意とも違った。

 世良は、無意識に足を止める。

「……?」

 胸の奥が、ざわついた。

 嫌な感じではない。

 むしろ──懐かしい。

 あり得ない。

 そんな感覚を覚える理由なんて、どこにもないはずなのに。

「どうしたの」

 ノアが、振り返る。

「いや……なんでもない」

 そう答えながらも、世良は周囲を見回す。

 崩れた建物、瓦礫、影。

 どこにも人影はない。

 なのに。

 ──いる。

 そう確信してしまった。

 異形ではない。

 刺客特有の圧迫感でもない。

 同じ側に立っている何か。

 その瞬間、頭の奥に、忘れかけていた記憶が掠めた。

 兄。

 行方不明になった、兄さん。

 死亡扱いされたが、遺体は見つかっていない。

 それなのに、なぜ今──。

「世良」

 ノアの声で、我に返る。

「気のせいよ。魔力反応は出ていない」

「……そうか」

 確かに、ノアの魔力探知でも分からないなら。

 気のせいかもな。 

 だが、それでも。

 世良だけが、はっきりと感じていた。

 同じ力が、近くにあったことを。

 それは、かつて兄が持っていたものと──。

 酷く、よく似ていた。

 やがて、その感覚は霧が晴れるように消えた。

「終わりね。今日は」

 ノアは淡々と告げる。

「……今日は、か」

「ええ。今後もあるでしょうね」

 それ以上、彼女は何も語らなかった。

 世良が感じた違和感についても、触れなかった。

 帰路。

「なあ、ノア」

「なに」

「この任務、本当にただの調査だったのか?」

 一拍。

「ええ」

 即答だった。

「でも──」

 ノアは続ける。

「調査されていたのは、私たちの方」

 その言葉に、世良は背筋が冷える。

 兄の気配。

 刺客の視線。

 伏せられた情報。

 初任務は、何も起こらないまま終わった。

 だが確実に──。

 何かは、もう動き出している。

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