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双刀炎神《デュアルブレイム》  作者: ゆりゅ
目覚めた魔の龍
14/15

4-3

 最悪だ。

 大怪我をする事よりも。

 男子生徒から痛い視線を送られるよりも。

 家というプライベートを壊される事が、嫌だ。 

 その宣言に、思考が止まる。

 その間にも、あのチビは家の扉を次々と開けていった。

「狭いわね──」

 色々物色した後、こう言い放つ。

「……お前。一応ここ家族向けの寮なんだが」

 持て余していた数々の部屋。

 その殆どは、埃だらけだ。

「アンタの家政婦、仕事サボってるんじゃないの?」

「──は?」

「何よ」 

 家政婦?

 今、その単語が出てくる理由がわからない。

「何だかよく知らんが、俺は今から掃除を始めるんだ。邪魔するなら帰ってくれ──」

「いや」

 端的に、即答。

「じゃあ……せめて、邪魔にならない所に居てくれ」

「いやよ」

 またもや、即答。

「お前はイヤイヤ期か!」

 思わず、そう突っ込んでしまった。

「はぁ。じゃあ適当に座っててくれ……」

 諦めた。

 多分、何を言っても聞く耳を持たないだろう。

 だが、一応客人だ。

 棚から粉を引っ張り出し、コップへ。

 お湯を入れ、混ぜる。

 そしてノアの元へ。

「……なにこれ」

 ノアの前に置くと、予想外の反応だった。

「ただの緑茶だ」

「何でお茶出したの」

「は? まぁ……一応、何も出さないってのは、アレだろ?」

「アレ?」

 どうでも良い事で、質問してくる。

 だが、世良は勝手にその意味を汲み取った。

「──そんなに、嫌だったか? 緑茶。いや、人から出された飲み物が」

 戦闘科では、飲み物にバレないように毒物を入れる訓練をやっている。

 きっと疑っているのかもしれない。

「……別に」

 予想とは反して、あっさりと緑茶を飲んだ。

 その時、ノアが一瞬だけ微笑んだ気がした。

「とりあえず、粗茶で我慢してくれ。俺は今から、やらなくちゃいけない事がある」

 世良は、ようやく家事を始める。

「あのさ。さっきから何やってんの?」

 突然、ノアが意味不明な質問をしてくる。

「何って──? 皿を洗ってるだけだが」

「……?」

 ノアの目が『何言ってるの』と言っている気がする。

 それはこっちのセリフだ。

「アンタってやっぱ変ね」

「急に何だよ」

「自分がやらなくていい事を、率先してやっているんだから」

 やらなくていい事?

 ──皿洗いが? 

「趣味っていうなら、納得できるけど」

 そういう事か。

 今、完全に理解した。

 話が噛み合わなかった理由、それはノアが──良いとこのお嬢様だからだ。

 きっと家事なんて、全部家政婦がやっていたのだろう。

 今の光景が、ノアにとって不思議に思うのも無理はない。

「バカを言うな。庶民ってのは、家事を全部1人でやるんだ。1時間、2時間かけてな」

「──そう」

 帰ってきた返答は、それだけだった。

 その瞬間だった。

 ──痛。

 右手に何かが突き刺さったような感覚。

 見てみると、円皿の右部分がバラバラになって壊れていた。

 ガラスだった為に、破片が右手に突き刺さっている。

 ──力を抜いていたハズだったのに。

 どうしてだ。

 そんな疑問だけが残る。

 きっと、古くなっていたからかも。

 そう、深く考えはしない。

 だが、世良が皿を割った光景を──ノアはただ、じっくりと見ていた。

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