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双刀炎神《デュアルブレイム》  作者: ゆりゅ
目覚めた魔の龍
11/15

3-4

 視界が、ゆっくりと戻ってくる。

 焦げた匂いと、土の冷たさ。

 結衣は地面に横たわったまま、微かに目を開けた。

「起きたか……結衣」

 聞き慣れた声。

 少し掠れて、荒い息を吐いている。

「りゅう……ちゃ」

 無理に身体を起こそうとして、脇腹に鈍い痛みが走る。

 血──。

 手についた血を見て、結衣は小さく息を呑んだ。

「あんまり動くなよ。今、ノアが周辺を確認してるから」

「ごめん……迷惑、かけたよね」

 その言葉に、世良は言葉を貯める。

「違うんだ」

 世良は深い息で、力強く声を発する。

「俺が、迷ったから──お前を傷つけた。本当に、ごめん」

 その言葉には、彼の後悔が深く刻まれていた。

「謝らないで。私が、勝手にやったことだから」

 結衣は、自身の行いを振り返る。

「相談しなかったのは、迷惑をかけたくなかったから。なのに、逆にすごく迷惑かけちゃったね……昔から、そういう事多くてさ……お弁当も美味しくなかったよね? 今まで黙って受け取ってくれてありがとね──」 

「違う」

 遮り、短く、即答だった。

「迷惑なんかじゃない。いつも助けられてたのは俺の方だ。今日だって、お前の作った弁当すごく美味しかったんだ。だから──」

 何かを言いかけて、世良は言葉を切る。

 視線を泳がせた後、まっすぐ結衣の目を見た。

「だから、その……いつもありがとう」

 その言葉に、結衣は救われる。

 戦闘の痛みなど、忘れるほどに。

 その一言が、心の奥底へ通じた。

「……ふふ、そっか」

 純粋な眼差しで、誤魔化しなんてない。

 その真っ直ぐな姿を見て、結衣の中で、点と点がつながった。

 避けられていると思っていた。

 実習を拒否され、距離を置かれていると感じた。

 あの、不自然な沈黙。

「私、勘違いしてたみたい」

 そう、結衣は小さく呟いた。

「明日の分も作ってあげる。ちゃんと──感想伝えてね」

「……努力する」

 短い返事。

 でも確かに、その一言は優しく柔らかった。

 戦いは、終わった。

 そして、2人の間にあった誤解の糸は、静かに解けたのだった。

 それと同時だった。

 結衣の意識が、再び遠のいていく。

 世良は、一瞬焦った。

 しかし、抱き抱えた瞬間、疲労で眠ってしまっただけだと理解し安堵する。

 ──良かった。

 結衣を守れた。

 けれど、胸の奥に残る違和感は拭えない。

 血など流していないのに、確かに目覚めたあの感覚。

 ──条件は、一つではない。

 何故かそう確信してしまった。

 答えは出ない。

 だが、確かなのは。

 あのフード男との決着が、ついていない事だった。

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