どう…向き合えばいい?
何日過ぎようと、私に向けられる目は、変わらなかった。気にしないようにしてみたが、どうしてもヒソヒソ声や視線が気になってしかたない。この視線はクラスだけでなく、他の学年からも向けられてる。
「早く隣国に帰りなさいよ」「なんであんな」
「いなければ」「邪魔」
ホントはルディに物申したいが、会いに行けば余計悪化しそうで怖い。怖いから、ずっと避けて、逃げてる。
学園でも寮でも、休めない。唯一気を緩めることができるのは自分の部屋だけ。
ジュリ姐さんの訓練も身が入らない。
剣と魔法の合同訓練の日が来てしまった。ルディもいる。あっという間に、他の生徒はパートナーを決めてしまった。本来なら、余らないはずの剣があぶれてしまった。
「あれ?ナナシ、相手いないの?」
ロイは剣だから、パートナーにはなれない。訓練は参加したいが……
「仕方ない、私が臨時でパートナーになろう」
声が聞こえただけで、固まってしまった。ヤバいヤバい、ヒソヒソも視線も痛いよ。
「イ、イエ…、オ腹、イタくナッタ ノデ 見学 シマス!」
ルディを見ずに、訓練場の隅に逃げた。
いつまで耐えれるだろ。卒業までこのままかな…。
「あら?どうしたの?」
寮に戻ってきた。気だるくて、集中できなくなって早退した。ここに戻るのも、足が重かった。
「部屋で、休みます」
部屋に入りすぐ鍵をかけ、窓にカーテンをかける。
……1人で抱えるな
……お前は一人じゃない
……もっと周りを頼れ
でも…、私がしなきゃ……
剣も……魔法も……そうしないと……
みんな…死んじゃう……
魔法が…使えない……どうしよう……
みんな……死んじゃう…
魔法が………
シスターが……
『貧困区のせいで!家族が苦しんでいるんだ!』
わたしたちも苦しんでる
『こんなとこがあるからいけないんだ!!』
「あなたがいるから」
「隣国へ帰りなさいよ」
やめて、わたしのせいじゃない
これで…何人目?…………シスター?……
グォーブさん!シスターが!
……あ、な、た、が、い、な、け、れ、ば………
外はすっかり暗くなってる。1回寝たから、すぐに寝れないけど、そのまま寝て過ごそう。お腹すいたけど…食堂に行く気力もない。
「ナナシちゃん、起きてる?」
ノックがして、ジュリ姐さんの声が聞こえた。扉は開けずに返事をした。
「窓、見れる?」
窓?重い体を起こし、窓へ近づきカーテンを開けた。真っ暗だ。星も月も見える。
「ナナ…」
見上げていた目線を、声の方へ落とした。
姿と声を聞いて、涙があふれ、止まらなくなった。
「ルディ…ごめ…なさ…い……ごめ…ん…」
「何に謝ってるのか…わからないな」
ほんとは合同訓練のとき、私とパートナーになってくれることが、うれしかったのに、周りの目や言葉が怖くなって逃げてしまった。きっとルディを傷つけた。そのことが、悔しくて…やりきれなくて、早退してしまった。
「私の方こそ、すまない。軽率だった」
窓越しに抱きしめてくれた。ますます涙が止まらなくなった。
ひとしきり泣いて、やっと涙が止まった。泣きすぎて目が熱い。鼻水が出てびちゃびちゃだ。
「思い切り泣いたら、なんかスッキリしました」
「本当に…」
ルディの頭にチョップをした。
「ルディも悪くない。悪いのは、あのご令嬢方です」
ノックがして、ジュリ姐さんの声がした。
「水と、食事持ってきたわ」
昼から何も食べてなかったし、散々泣いたので余計にお腹が空いてしまった。
鍵を開け、食事を受けとってかぶりついた。
「殿下、今回だけだからね」
「ありがと」
お腹が落ちつたら、今度は腹が立ってきた。よくも私を追い詰めたな〜
でも、どうしたら……
「ルディ…本当に、申し訳なく思ってるならお願いがある」
ルディとジュリ姐さんに私の考えたことを話す。
「……。まじで?それするの?」
言葉を出さず頷き、ルディを見た。
「私から話すよ」
お願い、とルディを見送った。