(0)私の答え
私のことを考え、時に強引なところがある人。私のどんなところが好きになってくれたのか、わからないけれど、答えの前に言っておきたいことがたくさんある。
………声が戻ったのだから、きちんと言葉にして。
「ルディ…先に言いたいこと、言うね」
改まっていうとなると、緊張する。
「今まで、私の為に考えて、いろんなことをしてくれて、ルディの国に連れてきてくれて、ありがとう」
たった1年しか経っていないけど、ルディと出会ったときから2年。
体中に響くぐらい、鼓動が速くなって……
「出会って2年だけど、ルディの声も瞳も優しくて温かい手も大好き。……、ルディのことが好き」
言った…言えた……私の気持ち…………
「……本当?」
「好きなの、ルディの声を聞いただけで安心するし、ルディの香りで側にいるって落ち着く」
見つめていると、ルディの目が潤んでる。
私は顔が…体が熱い……。鼓動はずっと速い。
ルディと別れたほうがいいかもと思ったこともあったし、どこかに出かけたときも、ルディのことが頭を過ぎる。
私もルディと同じように、どうしようもなく好きなんだと実感する。好き、大好き……離れたくない。ルディの横にいたい。
いつもはルディから抱きしめてくるけど、今は私から抱きしめる。それくらい、気持ちが溢れている。
「でもね、これからも、その先もいっぱい心配かけると思う。それでもいい?」
「もちろん、受けて立つよ」
私の頬に手を添えて、口づけをしてくれた。柔らかく温かいキス。
私の答えを告げて、次の日には婚姻前提の婚約者として発表された。私はまだ学生なので、婚姻ほ私が卒業してからと約束させた。
陛下の権限で、『すぐ婚姻させる』と言ったので、そこは全力で止めた。
婚姻のことは事前にルディと話合い決めた。というか、私がそうしたかったから。ケジメみたいな。
でも、婚姻前提の婚約者になったので、『お義父さま』、『お義母さま』呼びにしている。
陛下と妃陛下が、婚姻の条件をのむ代わりとして、絶対、そう言うようにと言われたからだ。
婚姻前提の婚約者になったことを手紙でイザベラに伝えた。イザベラからの手紙に……
『続編でのヒロインは〝あなた〟よ。1つ目のエンディングは婚約者。2つ目、真のエンディングは結婚よ』
と、書かれていた。
ルディとの結婚がこの物語の終わり。
ううん、違う。私たちは生きている。元は乙女ゲームのストーリーでも、生きている限り結婚が終わりではない。結婚もひとつのイベント。その先も私の物語は続いていく。
「ナナ、学園に行くよ」
結婚まで、あと2年。先の目標があるから、辛くても楽しくても、学園生活を送れる。ルディの横に立つためにたくさん学ばなければ。
いつも通りの送り迎え。馬車の中でのひととき…向かい合わせで座っていた席は、今は2人横並び。
授業の話。訓練の話。生徒会の話。そして…、
『好き』から『愛してる』に変わったのは、結婚間近になってから。
ルディは早い内から『愛してる』と言ってくれたけど、私がなかなか……気恥ずかしくて言えなかった。
『好き』と同じと思われるけど、全然違う。
『好き』が山の麓なら『愛してる』は頂上。
重みが違う。
言えるまでに、卒業するその時まで時間がかかってしまった。
卒業日の次の日が婚姻式。
その1カ月後に結婚式をする。そこで、国民に王太子妃としてお披露目となる。
そう考えると、もうすでに緊張してきた。
「気負うことはないよ。ナナはそのままでいいから」
そうはいっても、緊張するものはするし……
婚約者になってから、王太子妃の教育もしてきたけど、『大丈夫!』とはハッキリ言えない。
「自信は、様々な経験を経てつくものだよ」
前にもその言葉を聞いたな…
卒業式を終えたら、婚姻式に……やることはたくさんある。
今までも、これからもルディに支えられ守られて。私もルディを支え守っていく。
これから私とルディは夫婦で、パートナーなのだから。