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②−2 再会のイザベラ

 余裕を持たせて日程を組んでいたのに、予定より多めの休憩を取ったせいで、到着が遅れてしまった。

「もう!遅かったじゃない!」

王妃なので、一応謁見。その時も馬車酔いでふらふらで、ルディに支えてもらっていた。


 応接室へ案内され、そこで王とイザベラの子(王子)と会わせてくれた。イザベラはすっかり『母』の顔つきになっていた。

 私の声が出ない経緯を、ルディから説明をしてくれた。ルディがイザベラに会いたいと言ったのは、危険な目に合わせ、精神的とはいえ、声が出せない状態にさせてしまったことへの謝罪をするため。もう一つ…

「王妃が、私に留学に誘ってくださったことで、ナナと会えた。そのお礼をしたかったんだ」

「まさか、ナナに執着するなんて思わなかったわ」

やたら、イザベラと私のもとに、しれっといっしょにいたり、私の休暇についてきたり……

どうして、私なのか……私が何かしたのか……分かるわけもなく。とにかく、あの頃は護衛として、イザベラを守ることに心血を注いでいた。

「私を守ってくれた、ナナを今度は殿下が守ってくださると思っていましたのに」

「申し訳ない」

いや、イザベラに謝ったって、この1年のことはルディは悪くない。多少はあるんだろうけど……。



 イザベラは紙とペンを出してきて、私の目の前で何かを書いた。………この字は…日本語?

『お父さんとお母さんに会えた?』

〈会えた〉

イザベラが書いた字の下に、私が書く。

『云うの忘れてたけど、あなた……続編の〝ヒロイン〟だからね』

返事を書こうと、ペンを持って構えてたのに、イザベラに目をやった。

『あの学園で起こったことは、フェルディオルートのイベント。もちろん、毒と呪いも』

考えないようにしていた。続編があると聞いていたし、ルディが続編の攻略キャラとも聞いていた。

まさか、私が〝ヒロイン〟だったなんて……思いもよらなかった。


まあ…でも…、ね……

〈あの毒と呪いのせいで、夏季休暇がつぶれた〉

『酷い目に遭ったってのに、それ?』

〈あと、ルディにつらい思いをさせた〉

ルディには日本語はわからないから、紙のやりとりを見ても理解はできない。

『で、告白された?』

〈うん……〉

告白された、雨季に。〝好きなんだ〟と、抱きしたられ、ルディの言葉を思い出した。

『返事、した?』

一瞬、ペンが止まった。

〈まだ〉

「そう……」

字ではなく、ため息のように言った。ホントはイザベラは、このストーリーもこの後の展開も知っているんだろう。

私の声が出ないのも、ストーリーの内なんだろうか。

「お疲れだろうし、部屋を用意させたわ。ゆっくり休んで」

「ありがとうございます。王妃様」

退室した、私達を使用人が部屋へ案内する。来賓用の部屋。

護衛のときは、イザベラの公爵邸に泊まっていたから、この王城の部屋は見たのも泊まるのも初めてだ。



 ルディは使用人に促され部屋の中に入っていった。ここはルディ用なのか……。

立ち去る使用人に『私の部屋は?』尋ねたが、ルディがいる部屋を指して、立ち去ってしまった。へ?

ルディもボーゼンとしてる。

まずいのでは?男女いっしょの部屋なんて。

ここの部屋はルディに使ってもらって、私は何処かの宿にでも…

ルディが部屋から出ようとする私の腕を掴んで止めた。町で買ったノートに、

『私は街の宿に行くから』と書いたが、反対されたので、致し方なく同じ部屋を使うことになった。


馬車酔いでふらふらの私をベッドへ寝かせる。食事は私のためか、部屋に運んでくれて、ルディといっしょに食べた。


少し良くなったところで、衝立の向う側で寝間着に着替えた。ルディはソファで寝ようとしている。

ルディを手招した。

側に来たルディに『寝つくまで、側にいてほしい』と横になっている私の横を指さした。


意図はない。ないけど、高級なソファだけど、私だけベッドに寝るなんて気が引けてしまう。


いつも私を優先して、自分の事は後回しで……

そんなルディをソファに寝かせるなんてできないよ。


たぶん私が寝たら、ソファへ行ってしまうんだろうな。少しでも、やわらかいベッドで寛いでほしい。




ん…朝かな。

頭に何かあたった。耳……髪をさわられて…、うなじ?


背中が温かい、ん?腕がある?

後ろから伸びる腕に抱きしめられている。

顔だけ振りむくと、ルディが後ろで横になっていた。


ソファで寝てるのだと思っていた。まさか…この状態で寝てたの?

『寝るまで側にいて』が、そのままいっしょに寝てしまってた?……そう思ったら、恥ずかしくなってきた。

余計なことを言わなければよかった……

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