ナナの心に、エンディングへのルート
この国に来て、よかったこともあった。でも、私が国に来たばかりに、その人の道を歪ませてしまった。
私が来なかったら、あの人たちは普通に学生として、卒業して、結婚して、幸せな日々が送れたはず。
私がその道を……
この責任は、私に背負えるのか。
自問自答はグルグルと頭を回っていく。
ただ単に剣や魔法を扱うだけではいけない……ことはわかっている。
覚悟が足りないだけ。
喉が胸が苦しい……
部屋から出る気力がなくて、体がダルい。
誰にも会いたくない。
何事もないように顔を作れない、普通に話ができる自信がない。
ふいに涙が流れたり、止まったり……
………カチャ、キィィ…
私の頭に温かい何かが触れた。
「ナナ…。少し食べよ?」
ルディ……
いつの間に?どこから……?
今は顔を見られたくない…だから……伏せて顔を上げないまま、腕の隙間から見た。
壁の絵画が、扉のように開いている。
「呼んだけど、開けてくれなかったから」
隠し通路に隠し扉?そうか……そうだよね。王城はルディの家だもの。
この部屋も繋がっているんだ。
「ナナ…?」
声に出さず、首を横に振った。
「何日も食べてないよね?」
この部屋で何日たったのかなんて、わからない。気がついたら夜で、いつの間にか日が昇る。
ちゃんと寝てるのかさえも、わからない。
食欲も出ないから、食べる気もない。
マットレスが沈んだ感じがした。顔を伏せてるから何が起きてるかなんてわからない。そんなことも、どうでもいい………。
温かい何かに包まれて、頭や背中を撫でられて、触れる。ルディ………?
何も言わずに、そばにいてくれている。
しばらくしたら、部屋から出ていくと思ってたけど、ずっと側にいる。
『返事は、母さんの呪いが解決したら…』
……そうだ、呪いも解決できた。『返事』をしないといけないのに、言葉が思いつかない。
「……」
「返事はしなくていいから…」
なんで優しいんだろ。放っておいたらいいのに。ルディの優しさが苦しい……ツライ。
ルディの優しい声に、包みこんでくれる温もりに、香りに、それに……
「?ナナ」
私は……この国に来る前、ルディに初めて会ったときのことを思い出していた。その後、場所が代わり『好き』と言ってくれた公園のこと。
命の危険があったこと。
気がついたときには、布団の中で、久しぶりに寝た気がする。瞼が重い。
伸ばした腕の先に何かが当たった。柔らかいような、堅いような?
ようやく瞼を開け、何か当たったところには、ルディが寝ていた。
「!!」
部屋を見渡しても、いつも寝ている部屋。ベッド。壁の絵画。
「おはよ」
寝起きのルディが私を見つめている。
どうして、ここにいるのか、ルディといっしょにベッドに……
……!もしかして……?
「だだ寝ただけ、だからね?」
寝ただけでも…だめなんじゃ……いくらなんでも…
ルディが起き上がって、カーテンを開ける。窓から陽射しが入って……目を細めた。陽射しを久しぶりに見た気がする。
部屋に籠もっている間、カーテンは閉めっぱなしだった。
「よく寝れたみたいだね。ぐっすり寝れるなら、今夜からいっしょに寝ようかな?」
それは…!
「……!……」
声が出ない。ずっとしゃべってなかったから?空を切るように、口は動くけど声は出ない。
どうしよう…何も答えれなくなっちゃった。言葉で伝えれない。
もう…ダメだ………ボロボロだ。
こんな私でごめんね。ルディの人生までも歪めて…
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呪いの首謀者は、流刑。その親も重刑が与えられる。あの賊は、準男爵が抱えていた賊だとわかった。
店の商品を自分の手を汚さず盗み、横流しをしていた商会の残党。準男爵も関わっていた。商会を捕まえたことで、資金供給が止まり、逼迫していた。その元凶を叩いたナナを消そうとしていた。呪いは娘の独断。しかし娘の憎悪に乗り、消そうと賊を娘に与えた。
ナナは泣いたあと、また寝てしまった。
「おそらく、精神的なものでしょう。時が経ち、落ち着けば、また声が出るようになりますよ」
部屋へ閉じこもっていた間に、こんなことになっていたなんて、思っていなかった。それだけ、あのことがショックたったとは……。もっと寄り添えていたら、防げていたのか。
「後悔してもしかたないでしょ?これからのことを考えないと」
わかっている。私にとって、ナナにとって良いことは、何か………
③→
②→
①→
※ルートストーリーを分けてるだけです。