表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/60

事態は動き出す

 年を明けて、授業が始まった。あっちの国は雪は降らなかったが、この国では雪が降る。ドカ雪ではなく、地面に薄っすら積もる程度。たくさん積もったら雪だるまでも作りたかったな。


 未だ授業は午前のみだが、王城で家庭教師から午後の分の授業を教わる。その後は、騎士団の訓練場で父さんとの訓練を行う。


 いつまで、こんな日々が続くのだろ。母さんの呪いも早く解決したい。母さんが元気になったら、いっしょに街へ出かけたいとも思う。



 ある日、あちらこちらで、呪いの話題が上がっていた。『学生が誰かに、呪いをかけた』去年にはなかった話題だ。そんな話をしていた生徒に詳しく聞こうとしたが、『誰かが言っていた』としか言わない。

 意図的に噂を流してしるのか?あるいは本当に?そうだとしたら、呪いをかけた当事者が1番不利になるのでは?


 噂の出処を探してみたが、全くわからなかった。

「おい、聞いたか?噂」

ロイも気になるようで、尋ねて来たが、私にもわからないと伝えた。

「噂の出どころを探してるんだけど…、」

出どころがわかれば、呪いのことが解決するかもしれないと思っている。


王城に帰った時にルディに聞いてみたが、わからないと言われた。それと『下手に動かないように』とも。


焦ってはイケナイとはわかっているけど、それでも今まで進展がなかったことが、噂として流れている。引き続き、噂の出処を探し、校舎中を歩き回っていた。


 噂が出始めて2週間すぎたころ、出どころを探し歩いていると、誰かがついてきている気配がした。立ち止まって後ろを振り返るが、人も人影も見当たらなかった。


 また別の日も。同じ気配がする。


 ルディから注意されていたにも関わらず、動いていたため、こってり怒られた。いつもの口調で。いつもの口調が怖い。怒鳴るような怒られ方の方が、どれくらい怒っているのかわかりやすいが、静かにいつもの口調だと、どれくらい怒っているかがわかりづらく、想像がつかないから、怖かった…。


『言うこと聞かないなら、登校させないよ?』


 なんて言うものだから、平謝りした。2回も危ない目に遭っているのだから、怒るのもムリはない。


 それから、また1週間たったころ、1人でいたわけでもないのに、校舎を歩き回っていたときの気配と視線を感じた。背筋が凍る。次の日にも、また次の日にも。



 目か……。入学してすぐの時には、周りの視線が痛かった。でも1番に思い出すのは、夕陽を背に、魔法を打ってたあの人の目。憎悪に満ちた目。

 思い出しただけで、手や足が震える。思い出さないようにしていたけど、意識すると、あの時の光景が思い起こされる。憎悪の目と一緒に痛みを思い出してしまう。

 魔法で攻撃され、肩を負傷した。夕日を背にしたあの人の眼光、憎悪の目。痛みに気を失った私を匿ったのは、ルディ。数週間治癒にかかって、私の右肩にはその時の傷が残っている。

 眼光と肩の痛み。



 こんなんじゃ、克服は難しそう…。


「どうしたのです?」

馬車に向かわないといけなかったのを忘れてて、考えにふけっていた。

「あ…えっと……」

「馬車に来ないので迎えに来ました。行きましょう」

私の手を引き歩き出した。また、気配と視線。さっきより、視線が鋭く感じる。

怖くなり、ルディを握っている手に力が入ってしまった。気配と視線から逃げるために、私とルディは足早になる。でも振り切れず、ずっとついてきている。追いかけている……。

「このまま、振り切りましょう」

あの気配と視線をルディも感じているみたいだった。気配はするのに足音もしない。一定の距離でついてきているみたいだ。いつ、魔法で攻撃されるのか…恐ろしかった。


 馬車に近づいたとき、気配が消えた。


 急いで馬車に乗り込み、お互いに息を調える。寒いけど、走ったので体が熱くなっていた。

「手が震えてたのは、あの視線ですか?」

「はい……。あの国でのこと…思い出して……いつ攻撃されるのか……怖かった……」

向かいに座っていたルディが、私の横へ座り抱き寄せてくれた。


 ルディの胸へ抱き寄せられたまま、ルディの温もりで少し安心した。


 あの時、気を失う直前に、ルディの声と温もりと匂いで、身を委ねていいと安心した。


外の景色がいつもと違うことに気づいた。

「…、道が違う?」

「え?」

ルディが御者に合図を送ったが止まることはなく、進んでいく。私も窓をみたが、王城への道とも、街の道とも違う。だんだん建物も少なくなっていく。馬車の速度も速い。


 馬車に乗り込むときには、王家の紋章の馬車だった。違う道を走っているのは、御者が入れ替わった?

「郊外へ行ってる」

そうルディは言っているが、私にはどこなのか、さっぱりわからない。


 突然、馬車が止まった。外を見ても知らない場所。木は生い茂っている。どこかの森なのか?

馬の走っていく蹄の音がした。私たちを逃さないようにしたのか…。用意周到。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ