学園準備と街散策
ジュリさんのメモをもらって、ルディと街へやってきた。王太子であるルディは街に行ってもいいのかと、思っていたが、メガネをかけて、髪色も変えている。旅で見慣れた髪色ではないから、ちょっと不思議な感じ。
「ナナを真似て、魔法で変えているんだ」
何度も練習をして習得したのだそう。私は習得するのに時間がかかったし、維持するのも大変、なのに。
「これで、心置きなく街に行けるね」
「そうですねー」
メモを頼りにお店に行く。筆記用具とノート…。次の店は…
護衛の仕事での給金があるので、それなりに余裕はある。そのお金が入っている布袋はシンプルすぎて味気ない。前世みたいな、おしゃれな財布がほしい。
「ルディ、財布を買いたいんだけど、お店どこかな」
「そうだな、革製品を扱う店ならあると思う」
革製品…
「それって高級なのでは?」
「いろいろだよ。とりあえず、行ってみようか」
ルディに案内されるまま、着いていったお店は、店舗自体大きい…。重厚な扉のお店。明らかに高級な物を取り扱ってそうなところですね……。
こんなところで買ったら、所持金が底をつくのでは?
「まあ、まあ、入ってみよ」
ルディに押され、店に入ってしまった。
中はキラキラ輝いて見える、カバンやバック…。
帯剣用のベルト!表面がキレイ!丈夫そう。細工もおしゃれ!………げっ値段高っ。20万って…
「ルディ…やっぱり…」
「財布はあるかな?」
あー…話すすめてる。ここで買える気しないんですけども…。
「形は似ているのですが、好みの色をお選びいただけます」
赤、黄色、青、緑、茶色くすみはあるが白…
「これらも革ですか?」
「はい、色をもつ動物を使用してます」
こんなにバリエーションがあるなんて、びっくりした。艷やかな革に色味が映える。欲しい気もする。
「値段を聞いても?」
「はい、1つ1万です」
〜〜むむっ。お得なような…
「学生なんだ、値段下がらないか?」
王太子が値切ってる?それは無茶なんじゃ…。
店員さん…悩んでる?
「お嬢さん、さっき帯剣用のベルト見てたってことは、剣ですか?」
「ええ…と。どちらもできます。この国に来る前は護衛騎士をしてました」
「では、1つ依頼したいのですが。その代わり……」
一旦店を出て、買い物の続きをする。最後のお店は……。……!店の窓から見えるアレは……。
女性用下着!?ジュリさーん!
「あ、あの…ルディ……ここは、私1人で、入りますね」
「あ、ああ。外で、待ってる」
ルディが違うところ見てる。確かに気まずいよね。
あれ?ジュリさん…なにか書いてる。
『フェルディオ好みの下着を買いなさいね』
な、なんてことを!
扉を開ける手が震える。
「いらっしゃいませー」
声高々に豊満ボディのお姉様方がいらっしゃる。店内は白がメインで、フリルやらリボンやらがいっぱいでまぶしい。
「あ、あの…上下セットで3着くらいほしいのですが」
ひとりのお姉様が近づいてきた。
「はいはーい。じゃまずは…計るわね。ねぇ外の男、彼氏?」
「え!?」
「いっしょに入ってきたよかったのに〜」
奥のカーテン裏に案内され、服の上から計測される。
「そうよ。彼ピッピが好きなの選んだらいいのにね」
違うお姉様の声がする。計る手際はいいけど、からかわないでほしい。
「じゃ、フリルかリボンかどれがいいか聞いてくるわね」
「いやいや!き、聞かないでください!あの人は案内してくれてるだけなので!」
「ふーん…」
「?」
お姉様たちの視線が痛いのですが?え?なに?近づいくる!
「お、お待たせしました」
外で待っていたルディが振り返り、驚いて固まった。お姉様方に、髪を緩くまとめ、前に流し、結わえているリボンに花の飾りをつけられて、顔に軽くお化粧をされた。
『原石!』と言われ、他にもコーディネートしたいというお姉様もいた。
「似合ってる」
「あ、ありがと」
この世界で初めて、お化粧して、人の手で髪をセットされた。恥ずかしくて、落ち着かない。
差し出してくれた手を取り歩く。
「買い物に付き合ってくれて、ありがとう…」
なんだか恥ずかしくて、俯いてしまう。
「私はナナと一緒に、これてうれしいよ」
カフェ行ったり、メモにはないルディが知っているお店に教えてもらった。
日が傾いたころ、公園のような開けたところにたどり着いた。
「…なあ、ナナ。考え直さない?」
「なにを?」
「……寮じゃなくて、王城から通えば」
どうして、そこまでこだわるのか…わからない。会えなくなることはないし、学園で会えるし…
「だから……。」
ルディの後ろに夕日が見える。夕日のせいで逆光になりルディの顔が暗く見える。
「……ぁ…!」
治ったはずの右肩に痛みが走る。体が震える。息ができない。
「ナナ!?」
暗い影から光る目…。魔法…。痛む肩。血の滴る感触。
……………。……。………。
耳の近くで聞こえる声…。温かい何かに包まれる感触。安心する匂い。
「ナナ、大丈夫だ。側にいるから」
「ルディ…」
いつの間にか、ルディに抱えられてベンチに座っていた。日は落ちかけている。
「ごめんなさい…」
「謝らなくていい」
あの時、頭をよぎった………あの日の光景…
「あの時のこと、もう大丈夫と思ってたけど……意外とトラウマになってたみたい」
「私もあんな思いは…、もうしたくない…」
抱きしめてくれる腕が強くなった。ルディも一緒に苦しんでくれてたのか。私を看病してくれていたとき、どんな思いを抱いていたんだろう。