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*憎しみの方向*

 陛下が決めた『心のない婚約はしない』、という考えで王太子のフェルディオ殿下に婚約者はいなかった。令嬢の誰しもが、好きになってもらうように、愛されるように努力をしている。

 わたしもその1人。低い位の貴族でも王族1人になれるチャンスがある。マナーもダンスも努力した。


 フェルディオ殿下が、3学年になったのに学園には来なくなった。隣国の学園に留学生として行ったのだと、後で知った。1年間会うことすらできない。怒りと苛立ちが沸き起こった。

 それは他の令嬢も同じ。しかし別の心配もあった。留学先で知らない令嬢を好きになるのではないかと。



 心配は『本当』になってしまった。隣国から戻ってきた時に、馬車に女性を乗せて、陛下にまで会わせ、しかも王城に泊まったとも。


 噂は本当だ。王城に行っていた姉が、メイドや騎士の話題になっていたことを聞いたと言っていた。殿下はその女を慈しむかのような目で見て、抱きとめたり、食事を運んだりと甲斐甲斐しく世話をしていたと。


 殿下に好かれるために、努力をしていたのに!たかだか1年間だけで、殿下の寵愛を受ける、あの女が許せなかった。この憎しみは私だけじゃない。あの女が孤立するように、噂として流した。

 落ち込む姿をみて、気持ちよかった。さっさと諦めて帰ればいい。



 たけど、私たちに立ち向かった。物理で。強すぎた。前衛のあの女とロイという男。後衛はフェルディオ殿下1人。あの女は、複数人を一度に相手をしているのに敵わない。しかも『心を鍛えろ』と言う。

 ふざけるな!こっちは、好かれるために、親からおしつけられるように、マナーもダンスもたくさん勉強したんだ!


 私は少しずつ準備した。体力も魔力も落ちたけど、あの女のために。バカにしたあの女に復讐するために。


 あの女が嫌いなやつはいくらでもいる。あの巻き髪の女は、その1人だ。あの家が贔屓にしている、商会に職人が作ったと、コンパクトミラーを渡すように指示した。呪いを仕込んだ鏡だ。あと、珍しいものとして、お腹が少し痛くなる薬として勧める。

 以前、『痛い目に合わせたい』と言っていたのを聞いていた。それは絶対食いつくだろうとふんでいた。その薬は麻痺毒。


 あの令嬢もあの女も罠にかかった。毒は目眩まし、本当は呪い。でもこの呪いも目眩まし。もう1つ呪いを仕込んだ。殿下が王城で解呪すると分かっていたからだ。もう1つの呪いは、私が持っている核を壊さない限り解けない。あの女を国に連れてきた殿下も許さない。苦しむ女を、何もできないまま、後悔すればいい。


 それでもあの女は登校してきた。隣国の王妃と妃陛下の後ろ盾を受けて。

午前だけ授業を受け、午後には殿下と馬車で帰る。毎日。『後ろ盾』で殿下と正式に婚約をしたという噂が一気に広まる。噂は本当なのでは?となっていった。

ますます、あの女の憎悪が増した。


 出店の売り上げが伸びず苛立っていた人。その人は魔道具研究をしていて、試作品を作っていたことは知っていた。「この魔道具!人気になる!」のひと声に自信がついたのか、出店で披露した。

その前に、その魔道具に仕掛けをした。対になる魔力石を仕込んでおいた。どうどうと、お披露目しているところに、あの女が近づいてきた、タイミングで私が持っていた魔力石を通じて、誤作動を起こさせた。


 あの女に当たればいい、怪我もすればいい、永遠に起きなければいい…あの女とおさらばできる。


 だけど、知らない魔法師と剣士が邪魔をした。私はその瞬間…意識を失い、気づいたときには、自分の家にいた。誤作動を起こすために、魔力を使いすぎたらしい。


 数日後、学園に行くと、あの女はいた。よく見たが怪我もない。いつも通り、学園は午前だけ。呪いはまだ続いている。

 また、次の方法を考えよう。今度は失敗しない。今度こそ……今度こそ……

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