もう1つの核はどこ?
王城の1室で、母さんが解呪を受けている。そばでは父さんが見守っている。
ようやく家族がそろった。うれしいはずなのに、私の呪いを母さんが代わってくれたことが……なんとも言えない。
『別の核がある』
『早く見つけるんだ』
どこをどう探したらいいのか……
いつの間にか、ルディがそばに来ていた。
「核の話ではないが…あの誤作動をした魔道具だが、あの国で起こった訓練用の人形。暴走した方法と魔道具が誤作動を起こした方法は同じではないかと考えている」
「魔道具の魔力石と対になる石がわかったってこと?」
「いや、私が現場に駆けつけたときには、あの魔道具の魔力と繋がっていた形跡はあっただけで、わからなかったんだ」
魔力が見ても、時間が経てば魔力の跡は分からなくなる。誰が操作したのか……。
「誰かが意図的に仕向けたってことが、分かっただけ十分」
に、しても探す方法がわからない。
おおよその見当としては、学園の生徒。巻き髪の令嬢は『知らない』と言ってるし……あの令嬢も罠に嵌められた可能性もある。
呪いの核…は…持ち歩くのか、何処かに大切にかくしているのか?
「ナナ、しばらく呪いのことは誰にも言わないでほしい」
「どうして?」
「ナナに呪いをかけた犯人は、呪いで苦しんでいると思っている。もし、呪いがなくなったら、また違う呪いや何かで、ナナを傷つけるかもしれない」
そうかもしれない、でも、何も策がないままでは、何も進まない。
「逆にチャンスだと思う。また何か仕掛けようと、犯人が出てくるんじゃないかな」
「だから!それが危ないって言ってるじゃないですか!」
「でも、何もしないより、こっちが動いたほうが!」
父さんも、解呪師もこちらを見ていることに気づかずに、ムキになって言い合う。
「あの…気が散るのですが…」
解呪師の言葉で、言い合いをやめた。
「本当に心配なんです。前は2週間、今回は1ヶ月……もしかしたら、永遠に起きなくなるのではない……かと」
ルディの心配もわかる、もし逆の立場だったらと思うと……。でも、私だって焦っている。呪いを肩代わりした母さんを呪いから救いたい。
作戦も案もないし…、下手に動けばルディに心配かけてしまう。でも母さんを救いたい。
考えれば、考えるほど、ぐるぐる回って余計に考えが纏まらなくなる。
「ナナシ…」
「父さん…」
「今日はいろいろあったんだ、今はゆっくり休め」
父さんの言葉で、2人の部屋を出た。とりあえず、今日はもう、休もう。
魔道具の誤作動、父さんと母さん、呪い。今日1日に、一度にたくさんのことが起きた。
「ルディ…心配してくれてありがとう。私…頭を冷やす。それからもう一度考えてみる」
「ああ、私もだ」
ルディは私の額に口づけをした。
「学園の出来事は一旦忘れて、私のことだけ考えて」
顔を真っ赤になった私に手を振り、ルディは別の方へ歩いていった。
先程まで考えていたことが、ルディ1色になってしまった。考え事どころか、眠れなくなりそう。
学園祭は演武は行われたが、午後からの模擬戦は中止になった。あの騒動のせいでもあるが、他の魔道具が誤作動をしないか、点検するためであった。
出店申請にない、内容をした学生は、1学年の売り上げに追いつきたくて、自作した魔道具を披露し、売ろうとしていた。
その学生は半年の停学と、危険にさらしたとして、街での清掃ボランティアをすることになった。
私も休日だから、父さんと母さんの部屋に来ている。未だ、策は浮かんでない。
「暗い顔、しないの。この呪いはあなたを苦しめたいだけのようだから」
「どうして、わかるの?」
母さんの笑みは、今までたくさんの呪いを自分に移してきたからこそ分かるのか……。
「本当に死を望むものなら、こんなものではないのよ」
命令で、呪いを移すのは、呪いをかけた者や核を探すまでの時間稼ぎのため。最初はそうだったが、次第に『自分が苦しまなければ良い』と原因を探さなくなっていき、命の代替えとされた。命の危機と苦しみから逃れるために、逃げた。今まで移してきた呪いの原因を自ら探し呪いを解いていきながら。
「核を探すのは大変だけど、必ずあるから。焦らなくていい。それに……」
『呪いをかけた者は必ず、何かしらの影響を受けている』
母さんはそういった。解呪のため奔走していたときに、呪いをかけた者は身体的に、または精神的に影響を受けていた。ある意味、見つけやすいと言えなくもない。
「父さんは?」
部屋に来たときには、父さんの姿はなかった。
「殿下のところよ。男同士で話があるとかで…」
なんか変なこと言わないといいけど…特に父さん。