学園祭になつかしい人
騒動を聞きつけ、シーブルと教師たちが駆けつけた。申請とは関係ない魔道具を、生徒が勝手に改造し、市民や学生を危険にさらした。その出店は停止になり、生徒は教師とともに場所を移動し、お説教が始まる。
シーブルはその場にいた人たちに、謝罪を言って回っている。
私は助けてくれた剣士と魔法師といっしょに休んでいた。無理やり魔力を引き出した反動で動けなくなっていた。
「久しぶりね、ナナシ。元気だった?」
魔法師は私の体を抱きとめてくれている。
「まぁ……はい。魔法師さんがコントロールしてくれてなかったら、そこにいた人たちを傷つけていました」
「ナナシの判断は間違っていないわ」
「なあ、魔力が暴走するなど、滅多にあることではない」
剣士さんは、私と魔法師のとなりに座り胡座をかいた。
私は呪いを受け、解呪はできたが、呪いの残滓が残っていること、この残滓の影響で疲れやすいことや魔力が乱れていることを説明した。
「その呪い…別の核があるのではないかしら」
「別の?」
「そう、鏡がもとの呪いは解呪ができた。今、ナナシの中に残っているのは、別の核がもとの呪いだと思うわ」
別の呪いなら、なかなか解呪が進まないのも納得がいくかも。その核を見つけないといけないということになる。
でも……どこに核が…
「そういえば、お二人どうして学園に?」
「あなたに会いに来たの」
「え?」
動けない私の頭をずっと撫でている。そんな魔法師さんも剣士さんも、すごく優しい目を私に向けていた。
「お前と会ったあの国に行ったんだが、すでに旅立った後でな、こっちの国の学園に行ったと聞いたんだ」
「それで、わざわざ」
私も会いたいと思っていたから、会いに来てくれたことがうれしい。
「私も、また会いたいと思ってた」
「あら、泣いてるの?」
腕が重たくて、涙が拭けない私の代わりに魔法師さんが拭いてくれた。
遠くでルディの声がした。
「ナナ!」
「ルディ……」
駆け寄る足が止まった。剣士さんと魔法師さんがいるから?
「ルディ…この2人がみんなを守ってくれたの」
改めて深くお辞儀をした。
「市民と生徒、そしてナナを守ってくださり、ありがとうございます」
「私達のやるべきことをしたまでです…。ナナシ、素敵な人に巡り会えたのね」
素敵な人……
「はい」
「じゃぁ、再開した記念と、素敵な人に巡り会えたお祝いに…」
魔法師さんは私の手を取り、目を閉じた。私の体から何かが魔法師さんへ流れていっているのがわかる。
魔法師さんと、また目が合ったときには、私の身体が軽くなっていた。
「何をしたの?」
動かせなかった身体が動く。
「まさか……」
「ルディ?」
ルディが動揺してる。剣士さんはいつもどうりだ。
「なんてことをしたんだ!」
身体が動く……。もしかして!
「ナナシ…あなたの呪いを私に移したの」
呪いを移す?そんなこと出来るの?でも、魔法師さんの症状が私のときより酷い。
「人の呪いを移すと、呪いの効果が増すんだ」
どうしよう…私のために?
「こいつはそれを承知でしたんだ。お前のために」
苦しんでいる、魔法師さんの髪を覆っていた布が、落ちた。
剣士は倒れそうな魔法師さんを支え、露わになった髪を撫でた。
私と同じ髪色。
「こいつは…お前の母親だ」
おかあさん!?……じゃぁ…
「…俺が……、父親だ」
そんな…。あの時、狩場で教えてくれたときも、魔法を教えてくれていたときも、あの優しい目は…我が子を見る目。なんで、あの時教えてくれなかったの?
なんで、私を捨てたの?
「ナナ、一旦医務室へ行こう」
剣士さん……〝母さん〟を抱えた、〝父さん〟とともに医務室へ向った。