*学園帰り✜デート*
「どんなお店に行ってみたい?」
午前の授業が終わり、ルディといっしょに帰城している時に、そんなことを聞かれた。
急に言われても、思いつくはずもなく、学園が始まる前の買い出しで回ったお店しか知らない。……じゃあ…
「鍛冶屋はダメだよ」
う゛…、言おうと思ってたのに。なんで私の言おうとしてたこと分かったんだろ。そんなに分かりやすいかな………。
「食べ物でもいいよ」
たべもの……
「あっ、クレープ食べたいな。あと焼き菓子を買いたい」
いつだったか、馬車の中から遠目て見た気がする。前世でも好きだったし…定番の『チョコバナナ』
この世界は、どんなトッピングがあるのかな……。
ルディは馬車の窓から外を確認し、御者に合図を送ると、馬車が止まった。
「ここから歩いて行こう」
変装魔法を使い、馬車から降りる。ルディの差し出された手は、慣れてしまった。始めのうちは、なかなか慣れず恥ずかしいかった。こう…何度もあると慣れるもので、それが当たり前になってしまった。
前に行ったお店の並びとは違う、路地。建物はお店なんだろうけど、この並び方は商店街といった感じ。アーケードもあるから、本当に商店街だ。屋台も所々にあって、見ているだけでも楽しい。
あちらはちょっと高級店なら、ここは庶民の味方的な親しみやすさ。
八百屋、精肉、お惣菜、パン屋、生花。屋台は、串焼きに…フライドポテト……ケバブ……
ケバブ!?この世界に、なんでケバブがあるのさ!ケバブってトルコの料理だったよね。肉を何層にも串に刺し、クルクルと回りながら焼いていく。まさにケバブだ。
「お昼もまだだったし、食べてみようか」
じっ…と見ていたから、食べたいと思ったのか、買ってくれた。ピタパンにキャベツとそぎ落とした肉を詰めソースをかける。人の邪魔にならないように通りの端で、いただく。まんまケバブだ。でも、前世以来だから懐かしくておいしい。
「くせになる味だね……ぁ…」
さっと取り出したハンカチで私の口元を拭いてくれた。ケバブのソースか……どうしても、ついちゃうんだよね。私を拭いてくれたルディも口の端にソースがついていた。
ルディにソースがついているところを指で教えたが、私にハンカチを差し出して「取って」と顔を近づけた。
顔立ちが整ってるルディが目を閉じ拭かれるのを待っている。つい…じっと見てしまう。ソースがついているその口が、私に好きだと言った。
その瞬間を思い出してしまい、顔が熱くなってしまった。素早くソースを拭いて顔を反らした。
反らした先に、ケバブと並び、トルコアイスもあった。購入者で遊ぶ様子は同じだ。
色んなお店や屋台を見ながら歩いていると、クレープ屋があった。ホイップクリームがメインで、トッピングはチョコレートソース、カスタード、フルーツは季節でないものはジャムで。ホイップクリーム以外のもある。シュガーバター、シュガーバターとキャラメルソース。
「私は、シュガーバターのキャラメルソース」
気にはなってたけど、食べれずじまいだったから、こうやって巡りあったんだから、食べてみよう。
「そうだな、ホイップクリームとカスタードのハーフと苺ジャム」
先に渡されたのはルディのクレープ。私のは温かいクレープだから少し時間がかかる。
「先に食べてもいいよ?」
「いや…いっしょに食べたいから、待つよ」
私の分が出来上がるまで待っててくれた。できたてはアツアツ。バターの香りがいい。
ベンチを見つけて座り、さっそくかぶりついた。生地はもちっりしてるけど、端がパリパリしてて、おいしい。キャラメルの風味もいい。でも…砂糖とキャラメルは甘すぎたかも。
「どう?」
「おいしいよ。このパリパリのところ、食べてみる?」
そこだけ千切ろうとしたら、手を止められ直接食べた。あ……これ、その部分も含め私が食べるんだよね。
「バターの風味がいいね」
間接……かんせつ……わざと?わざとなのでは?
続きを食べようにも、余計なことが頭を巡って……
食べ物は粗末にしたくない。食べる。食べるよ。
…………あまいなぁ…
本当にわざとだったことは、気づくはずもなく。
その後は、焼き菓子のお店へ向かう。途中の屋台で瓶入りの飴を見つけ購入した。金太郎飴みたいに、真ん中に花の絵がある。一瓶は母さん。もう一瓶はルディに。寒くなって乾燥するから、丁度いいなと思って。
焼き菓子のお店は外観はノスタルジックな風合い。柱も梁も年月を経ているように見える。
焼き菓子の種類は、クッキー、ドライフルーツのカップケーキ。パウンドケーキはカットしているものから、まるまる1本分まで。
……、シフォンケーキがある!ここで会えるとは!軽くてふわっとして、おいしいんだよね。
「よかったら、試食どうぞ」
小さくカットされたシフォンケーキを摘み、食べる。うぁぁ…、やっぱりシフォンケーキだぁ。
シフォンケーキを作れるなんて!このお店タダモノではないな。常連になろう。
「これは……、ナナのフルーツティーに合いそうだね」
「ぜひ、買わないと」
ホールで2つ購入した。
…、シフォンケーキに気を取られてたけど、私がフルーツティーを淹れることになってしまった。