学園祭〜2日目〜
2日目の客足は、昨日よりも多かった。今日行われる、演武と模擬戦のためだ。演武と模擬戦は毎年人気で、それだけの目的で訪れる人もいる。
これだけ多いと、会場には入れないな。立ち見が出るくらい多いと聞くし。早く解呪して、来年には模擬戦に参加したいな。
くじ引きの出店は、昨日のうちに集めた景品がなくなり、他のクラスから提供してもらった。売り上げがよかったため、自らすすんで景品を提供してくれたそうだ。
そしてまた、長蛇の列が……。
「やあ!君のクラスの出店、人気だね」
「会長」
生徒会会長のメイズが、列を見ながらやってきた。片手にはジュースとクレープ。その組み合わせ、似合っている。
「たぶん、今までにない、出店だよ。他の出店と協力するっていうのもいいね!」
「彼女達が頑張ったので」
出店の申請の許可は、生徒会が行うので、私のクラスの出店は、初めての試みで、許可するか悩んだそうだ。
「君の発案だと聞いたよ」
「ええ…まぁ…」
知られてたのか…。噂は、どこからともなく現れる…。
「これだけ人気なら、来年他の学年もするかもね」
「そうですね」
学園祭がもっと楽しくなればいいし、より良いものをと切磋琢磨したほうが、やる気がでるもんだ。
メイズは、おいしいものを求めに出店の通りに歩いて行った。
「やあ、体調はどうだ」
バインダーをもったシーブルがこちらに歩いてくる。シーブルは生徒会の仕事の一環で、出店のチェックをしている。正しく販売ができているか、申請した項目に間違いはないかなど。
ジュースとクレープを持ったメイズとは大違いだ。
「はい、おかげさまで。先輩は忙しいそうですね」
「ああ、ったくアイツはどこいったんだか」
あ…ジュースとクレープを持って歩いてましたよ。
「では、ムリしないように」
バインダー片手に去っていった。
………お疲れ様です。後ろ姿にお辞儀をした。
「よぉ!」
「ロイ……ロイはポップコーンなのね」
「?」
メイズはジュースとクレープ、シーブルはバインダー、ロイはポップコーン……。グレアは学園地図。
なんだ、この差は。
「ねえ、この列の整理手伝ってよ」
食べながら、列を見ると「仕方ないな」と、残ってたポップコーンを口に積めて、列の最後尾まで走った。
助かる〜。
「ナナ、疲れてない?」
後ろからの、聞き馴染みの声に振り替える。
カップを2つ持ったルディが立っていた
「まだ、大丈夫ですよ」
「いや、休憩しよう」
近くにいた、グレアに声をかけて、その場から離れる。
校舎裏のベンチに座る。本当にここは外界から離れた聖域といった感じだ。微かに声は聞こえるが…それくらいだ。
「はい、どうぞ。どちらがいい?」
ルディが持ってたのは、チョコとラズベリーの2種類のアイス。
私はチョコを選んだ。カップを受け取り、スプーンで口へと運ぶ。冷たくて甘くて、おいしい。
「味はどう?」
「おいしい。ルディも食べて」
つい、何気なく……自分のスプーンで差し出してしまった。ルディは驚いてはいたが、パクっと食べた。
「おいしいね」
……あ…か、関節キス…、してしまった。残りのアイス、このスプーンで食べるのか…。
「じゃ、私のもどうぞ」
ラズベリーアイスの乗ったスプーンが差し出され、さっき気づいてしまった、関節キス……
でも、せっかくのアイスを…
ナムサン!
「さ、さっぱりして…、お、おいしいです」
もう頭がいっぱいいっぱいで、手も顔も熱くなって、アイスが溶けそうだった。
ルディと別れて、案内係を再開する。少し人が落ち着いたのは、演武の会場へ人が流れているのかも。
「さー見てみて!」
突然の声に、みんながそちらのほうを一斉に振りむく。出店が立ち並ぶ中の、1つ。
「さあ!俺たちが作り、魔力石を埋め込んだ魔道具だ!この魔道具で光を放ち、今まで見たことのない演出ができる!」
何アレ…そんな出店、聞いてない。
起動させた魔道具はカラフルに光輝き、それでさらに人が集まってくる。
「申請と違います!ヤメてください!」
人混みをかき分け、出店に近づく。
しかし、光輝いていた魔道具は、突然炎や雷を放ち、それに驚いた出店の生徒は人だかりの中に投げてしまった。
剣がないから、弾き返すことができない。咄嗟に風魔法で落ちる方向を変えようとしたが、安定しない魔力でうまくいかない。
ーなんとかしないと!
無理やり魔力を引き出したが、今度は魔力が大きすぎて暴走しそうになった!
どうしよう…みんなを巻き込んでしまう!!
「落ち着いて!私の魔力を感じ取って」
私を後ろから抱きしめ、魔力が流れ込んでくる。その魔力が私の暴走しそうな魔力を安定させコントロールしてくれる。
聞いたことのある…懐かしい声…
人のいないところへ魔道具が落ち、そこに駆けつけた剣を持った人が真っ二つに斬る。振り向いたその人は眼帯をしていた。少し老いてはいるが、知っている顔だった。
獲物の取り方、捌き方を教えてくれた剣士。
じゃぁ、私を抱きしめてくれている人は……
後ろを振り返ると布で髪を覆った女の人…、あの時の魔法師だ。
なつかしい、顔ぶれに涙が出た。