学園祭〜1日目〜
学園祭があるので、いつもは午前中だけが、1日いてもいいとルディが許してくれた。
一般の人が入ってくる門に、1学年の生徒2人で、あのスタンプカードを配っている。
1家族1枚のスタンプカード。これは1学年の出店で、飲食や商品を購入し、スタンプ3個溜まったら、1家族1回ハズレありのくじを引くことができる。くじ引きの看板の横に、『運試し!』『ハズレあり』と書いてある。書いてないと文句を言う人が必ずいるから。
私の担当は誘導と案内係。身体の負担にならないことを選んでくれた。学園の地図には、どこに何の催しがあるか書かれている。それを見せながら案内をする。
地図だけでわかる人、現地まで案内をする人様々。
案内をするため、出店を調べた。各学園の出店の場所。出店で売っているもの。もちろん、くじ引きの説明も忘れずに。
来る人が多い。多い…とは聞いていたけど、ここまで多いとは……。その人混みの中に、眼帯をしている人をみた気がした。見失ってしまった。
合間をみて、くじ引きの出店に行ってみた。
「さっそく、くじを引きに来たんだよ。ハズレだったけど」
ハズレだった場合に、ミニマドレーヌをあげるようにした。
私の提案したあと、もっと内容を積めて決めたそうだ。
「うまく行くといいね」
「ありがとう、ナナシ!」
私は案内に戻った。
時間的に、そろそろ学術発表会が始まるころだ。
講堂へも勧める。
午前は学術発表会、午後は演奏会。
「ナナシさん、交代で休憩にするから、先に行ってきて」
同じ案内係にグレアがいる。私の体調をきづかってくれている。
「ありがとう、先に休憩するね」
学術発表会がどんなことを、発表するのか気になっていたので、講堂へ向った。
講堂の席はスカスカで、人気のなさがうかがえた。ちらほらいる人たちの前で、学術発表が行われる。まずは魔道具。『新しいものを開発し、生活を便利にする』というのが、テーマとして発表する。
魔力石の埋め込まれたお皿に水の入ったポットを置くことで、あっという間にお湯が沸くというもの。
前世でいうと…アレだな。
筒に火と風の魔力石を使い、持ち手をつけ、筒から温風を出し、髪を乾かす。
ん、まさしくアレだな。
2つともあれば便利だと思う。湯沸かしのポットは場所問わず使えるし、髪を乾かすのだって魔力の使えない人が使える。
魔道具発表のあとは、魔術発表なのだが、そろそろ休憩が終わる頃なので、戻ることにした。別の案内係と交代する。
休憩から戻った時には、くじ引きの出店は長い列を成していた。両隣の出店にもあふれている。
声をかけ、列を整理する。
クラスからの提供された、景品は貴族の物もあり、かなり豪華だ。中には手縫いの刺繍や小物もある。
『なんだ!この景品!店で3つも買ったんだ!交換しろ!」
「運試し、と書いてますので、ルールも説明しました」
あ〜ぁ、難癖つける人はどこにでもいるんだな。
他の迷惑になるから、止めないと。
「お客様!周りのご迷惑になりますので、おやめください」
「あ?うっさいな!」
突き飛ばされて、後ろにふらついたところを、誰か受け止めてくれた。後ろを振り向くと……
陛下!?妃陛下も、王女様も?
「おやおや、威勢のよい人だね。迷惑をかける国民がいたとは知らなかったな」
陛下の服装は、貴族かな?といった感じだ。お忍びなのだろうか。貴族の人は気づいている人もいるが、騒いでいる男は、一般の市民のようだから、見た目ではわからないみたいだ。
これ以上、陛下に無礼にならないようにしないと!
「お客様!向こうでゆっくりお話を伺いますので〜」
首根っこを捕まえて、無理やり引きずっていく。
離れたところで、男にそっと伝えたところで、青ざめた。
「スミマセンでした〜」
男が去った後、陛下に受け止めてくれたお礼をした。
「今日はフェルディオ先生に会いに来られたのですか?」
「いや、私と妻はこの学園の卒業生だからね。後輩たちを見ておきたくて…それと」
「ナナの頑張っているところを見たくてね」
はは…ははは……そうですか。
「ねえ、お義姉さま〜私…おいしい飲み物がほしくて」
「姫様…あ、ナディ……えっと…」
地図を広げて、オススメの出店を紹介する。たぶん1学年の出店はスタンプほしさで混んでいるはず。ここはスムーズに買えるほうがいいと思う。
「1学年の出店を紹介しなくていいのかい?」
「恐らく、すごく混んでいるのと、商品がなくなるのではないかと」
「よく考えているんだね。わかったオススメの方へいこう」
「はい、お気をつけて」
その後もくじ引きの出店は、てんてこ舞いで、ここまで人気になるなんて予想できなかった。1学年の出店も1日目で、売り上げを伸ばした。