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やっと復学

 医師とルディの許可を得て、久しぶりの学園に来た。2学期が始まって半月が経っていた。座学は取り戻す分には問題ない…と思う。

 あとは生徒の反応……心配して声をかけてくる人、遠巻きに見る人様々。


ツインテの娘は2学年だけど、わざわざ会いに来てくれ、無事を喜んでくれた。


取りあえずは、勉強ができたらいいかな。私がいなかった間の授業は、(令嬢には逃げられてしまうので)ロイに教えてもらおう。

「教師に聞けばいいんじゃね?」

「冷たいね〜……ロイから聞いて、わからない所があったら先生に聞くよ」

「俺といっしょにいたら、恨まれそうなんだけど?」

ルディのことか……まさかとは思うけど、ないこともないのかな…

「わかった、先生のとこへ行く」

授業と授業の合間には行けないから、クラスが訓練に行っている間に先生のところに行くことにした。それまでは、大人しく授業を受ける。



 お昼はいつもならランチボックスにして、生徒会で食べるが、食堂の1階から、生徒会室のある3階へは距離があるので、やめた。でも、食堂での目線も気になるので、ランチボックスにして庭へ行くことにした。


 どこで食べようか彷徨っているうちに、校舎裏の植木に囲まれたベンチを見つけた。校舎裏だけあって、通る生徒は少ないし、静かだ。ここなら気兼ねなく食べれそうだ。

 吹き抜ける風が気持ちよく、ご飯も進む。お昼からの授業が始まる前に少しうたた寝をしよう……と。



「ナナ!……ナナ!」

ルディの声がどこからか聞こえた。目を開け見渡すが、近くにはいない。でも、声は聞こえる。

「……こ、ここです」

植木を覗き込むように、ルディの顔が見えた。走ったのか、息を切らしている。

「ここにいたんですか……探したんてすよ。教室にも生徒会室にもいないし……」

「なにか、あったんですか?」

ベンチに座り、息を整えている。私の返答に、ため息をはいた。

「病み上がりの、登校初日だから、今日は午前まで、ですよ」

え!そんなこと言った?……言ったかな〜

「そんなこと、言ってました?」

………満面の笑みだが、これはウソだな…。

「ここ、見つけんだね」

「はい…たまたま……」

答えをはぐらかされた気がする。

この場所、ルディは知ってた?

「ここは父と母が密会してた場所なんだ」

「………ここ…が?」

「ナナが見つけてくれて、うれしいな」

陛下と妃陛下が密会してた場所。

妃陛下も嫌がらせを受けていた、と言っていた。

陛下がらみで……

「ねぇ、ナナ。あんな事があったのに、怖くないの?」

ランチボックスを指差した。

「ランチボックスにも料理にも罪はないから。悪いのは、食べ物を粗末にした、あの人です」


私が倒れたあと、学園全体に呼びかけたために、食堂の料理は検査後、廃棄された。他の料理に毒は入ってなかったけど、食べ物に困ってたことがあるだけに、無駄にしてしまったことが許せない。


「ナナらしいね」

ルディは私が孤児で、貧困区の育ちということは知っている。私の過去すべて話してはないけど、それとなく察してくれている。

「さ、帰るよ」

「え?冗談じゃないの?……まだ、私のいない間の授業内容を聞きに行きたいんだけど…ロイは、教えてくれないし……。……!」

ルディが笑顔から悲しみの顔になった。まっすぐ私を見つめる。

「ねえ、なんで私に頼ってくれないの?」

「………でも」

「私は、ナナのためなら何でもするよ」

遠くに聞こえる生徒の声も、吹き抜ける風に揺れる木の葉の音も、耳に届かなくて、ルディから目が離せなくて…。ホントにどうしていいかわからない。

「教室のカバン取っておいで、その後寮に行こう」

「寮?」

「荷物を王城に持っていくんだ」

復学の条件。

〝王城に住むこと〟

もう後戻りできないんだな。

「……わかった。とりあえず教室に行ってくる」

なんで、あんな条件飲んだんだろ。思い返せば、他にやりようがあったんじゃないかと思うけど、今は思いつかない。



 教室にカバンを取ってきてから、ルディといっしょに寮へ行った。

「ナナシちゃ〜ん!心配したんだからぁ〜元気になってよかった〜」

ジュリ姐さんが抱きつこうとしたところを、ルディが押さえた。

「姐さん、元気になったけど…まだ力が戻らないんだ」

「え?そうなの!?」

「ええ、解呪はしたのですが、まだ残滓が残っていると思われます」

解呪した人も言っていた。私にかけられた呪いは強力なものだと。強力すぎて、身体の負担も鑑みて、1日1回の解呪になった。まだ微かに残っているため、解呪は続けている。力もそうなのだが、魔力も安定していない。

「んも〜!ムリしないでね」

「ありがとう」

私は荷物をまとめるために、寮の部屋へに行く。


「まさか、後ろ盾とはね〜」

「早く手を打てと言ったのは、ジュリですよね。あのことがあったから…というのもありますが、後悔はしていませんよ。最善の方法なので」

「この先もしっかり守りなさいよね」

「言われるまでもないですよ」


私の部屋から、2人の話し声は聞こえるけど、内容まではわからなかった。

厄介な呪い……

この呪いの苦しみは、私だけにおさまらなかった。

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