外堀が埋まってる
まだ解呪はつづき、歩けるようになったが、まだ力は半分以下だ。今まで動けなかった分の鈍った体を少しずつ運動をして慣らしていく。
そういえば……私、王城にずっといるよね……。
はっ!夏季休暇!あれやこれやしようと思ってたのに、夏季休暇もう終わってるよね。じゃー授業も始まってる?
「おや?何か思い詰めた顔してるね」
運動のためと、王城内を歩いていると、ルディにクリソツな陛下と鉢合わせした。
お辞儀をしようとする私を止めた。
「長く滞在させていただき、ありがとうございます」
「貴女は息子の良き人だからね。構わないよ」
ん?
「妃陛下には私の後ろ盾になっていただき感謝しております」
「もちろん、貴女の命を守るために、当然のことをしたのだ。それに貴女は、貴女だけの問題ではないのだからね」
ん゙ん!?なんだろ……?
「そ、それはどういう…」
「ふふ…では、そろそろ行くよ。あ、私のことは〝お義父さま〟と呼んでくれ」
え゙ぇぇ!?外堀がやってきた。陛下と妃陛下という外堀が、間近に迫ってる。
メイズとシーブルがお見舞いに来てくれた。
「本当に治ってよかったよ」
私が倒れたあとのことを教えてくれた。
すぐに毒ではないかと、魔道具で学園全体に呼びかけたことで、大混乱が起きたという。しかし、その日の食堂の食事に毒は検出されず、私だけを狙ったものとわかった。
「せんせ……殿下は冷静さを取り繕ってたけど、焦っていたのバレバレだったよ」
私だけでなく、学園を巻き込んだ事件になり、それを引き起こした令嬢は拘束。その家族は避難の嵐で、まだ収まってないのだとか。
〝人を呪わば穴二つ〟
「なにそれ?」
「他人を不幸にしようとすると、回り回って自分も不幸になるんです」
「つまり?」
「自業自得です」
そうだよねーと、笑顔でいるが、この2人の前で倒れたんだよな。
「ご心配おかけしました」
「問題ない。こちらはそれどころではなかったからな」
生徒の混乱の収拾に忙しかったそうだ。特にシーブルは。
「夏季休暇のほとんどが潰れたよ」
「!もう授業、始まってるんですよね」
「ああ、そうだ」
やっぱり。色々しようと楽しみにしてたのに、体が動かずに何もできなかった……
ノック音がして、ルディが入って私の隣に座る。『後ろ盾』のことから遠慮がなくなってきた気がする。
「せ…殿下、夏季休暇が終わってますよ。学園に行かなくていいのですか?」
メイズの言っていることはもっともなのだが…
「それは、大丈夫。このことは私にも原因があるからね。ナナのことは、私の責任でもあるんだ。私が責任を持つのは当然のことだよ」
指導教師が学園に行かないのは、いかがなものかと…。
肩を抱き寄せ、体を密着させてるぅ〜。
力が戻っていないため、離れようにもルディのほうが強いから、引き剥がせ無い。途中であきらめた。
「学園は先生が必要なんですよ。学園に行ってください。私のことは、少しは自分でできるし、メイドさんたちが手伝ってくれます」
「問題ないよ。指導教師は私だけではないのだし」
それは……そうかもしれないけど……
「君のことは、学園だけでなく、国全体に知らせが行き渡っているから……そうしていると、本当だと確信するね」
後ろ盾のことだよね。
「分かってないようだから、言うけど…。君は、殿下と正式に婚約したと、認識されてるよ」
あ………
あぁぁ〜!私の知らないうちに、話がどんどん先に進んでいるよ〜
そのあとメイズたちは帰っていった。ルディと見送って…。
「後ろ盾の話から、ナナは分かっていたはずだよ」
はい、わかっていました。わかってたけど、こうして現実となると…どうしていいかわからないんですが?
「ナナ、認識されているだけだから」
そういう、問題!?
「…私は言ったよね。努力すると」
自信が持てるように、努力する……確かにルディは言った。
「自信はあとからついてくるものだ。剣や魔法も、自信があるからするのではなくて、鍛錬して実践して自信がつくのだから。そう思わないかい?」
「いや…そうだけれども……」
そういう感じなのか?それでいいのか?努力の方向性は……
ルディの努力が私の自信につながるように、私も努力するしかないのか……?いいように、言いくるめられているような……