*イザベラ王妃*
貧困区で、同じ転生者と出会って、唯一前世の話ができる友として、仲良くなったナナ。
ナナは親友であり、悩みや愚痴を言える存在。
王様を味方にする提案はナナ。私は将来を変えたいために、藁にも縋る思いで、提案を受け入れて実践した。
王様の仕事のことを知りたいと言ったが、「まだ早い」と断られ続けた。何度も繰り返す内に、諦めたのか、私の真剣さをわかったのか、「書類内容は見せれないが、まず大まかに説明すると…」説明してくれて、徐々に書類も見せてくれるようになった。
王様の仕事をする姿、何か問題があっても冷静で余裕もあって、豊富な知識。王とはこうであるべき姿。
気分転換にと、騎士団と共に剣を交えている。ほどよく体が鍛えられている。
言葉遣いも所作もとてもキレイで、そんな王様を知っていくうち、尊敬から尊愛に変わっていった。
それに比べザッオールは、私がいてもいなくても、女性を侍らせ、別の女性を口説く。女癖の悪さに幻滅していた。
仕事の手伝いをしている時に、ザッオールを思い出し、ため息をついしてまった。王様は心配し、話を聞いてくれた。
王様の知らないところでのザッオールの行動に呆れを超え怒ってくれた。
すでにこの時にはザッオールは学園に入学していて、きっと女子生徒に手を出すかもしれない。心配で……と、愚痴をこぼすと、王様は影を使い見張りと、事細かく行動の報告をさせた。
もう少し先には、ヒロインと恋仲になることもある。
女にだらしないザッオールと、亡くなった王妃を一途に愛する王様。
ザッオールと別れ、王様といっしょになりたいと心から思うようになった。
気がかりなのは、ヒロインが私に敵視すること。私が何かしてもしなくても、悪者にされてしまうこと。なら、それも利用してやろうと、邪魔なザッオールを押し付けた。
私の計画に、ナナが協力してくれて感謝しかない。ザッオールから邪魔されないよう、ヒロインが起こすイベントの回避のために、ナナは動いてくれた。
ザッオールの女癖は治ることはなく、王子としての公務から逃げ、つい…王様に『婚約者が陛下ならよかったのに』と言ってしまった。
王様は私の好意を受け取ってくれた。
「私は、王妃を愛していた心をなくすことはできない。それでも…よいか?」
「もちろんです。その心も陛下の大事な一部です」
2人の心が通った日だった。
ザッオールには内緒で、婚約の解消を進め、王様と婚姻をした。その時には、2年と3年の履修科目を終わらせ、学園からも卒業の資格をもらっていた。
新学期の時には、卒業資格を取得したあと、ザッオールがやるべき、ほとんどの公務を私がしていた。王様と共に行く公務もあった。
そんな時、私のお腹に新しい命が宿ったことがわかった。
それから少し経ったときに、ナナが魔法の攻撃で怪我を負ったことを知った。教えてくれたのは隣国の王太子フェルディオ。
ナナと会わせてから、やけに執着するようになってしまった。会わせたのは失敗だったかと、思っていたが、怪我を負ったときには保護してくれた。
私は身重の体で、動けないところをフェルディオがナナを助けてくれたことに、感謝した。
ナナとフェルディオのおかげで、私の望んだ結末をむかえることができた。
身重とはいえ、することは山程ある。二月ほど経った頃、フェルディオが会いに来て、ナナを隣国の学園に連れていきたいと言ってきた。
ナナの事情は知っている。本当に隣国へ行けるのか心配だった…。
「ナナは小さい世界しか見ることしかできませんでした。もしこの地図を見せて、ナナが自ら行きたいと切望するのであれば、かまいません」
この国の地図とフェルディオの国の地図2つを渡した。もし行きたいと言ったときに、この手紙を渡すようにと、お願いした。
ナナは隣国へ行った。
フェルディオに託したナナが、毒と呪いで伏せっていると手紙が来た。こんなイベントは確かにある。フェルディオルートのひとつ。
シナリオ通りとは言え、親友が苦しむのは耐えられない。
一頻り文句を綴った後に、あの一文に気づいた。
『ナナを守るため、後ろ盾になってほしい』
ナナのためなら、ナナを守れるなら、盾にでも剣にでもなる。
シナリオでは、後ろ盾はあちらの王妃だけ。私への申し出は、シナリオから外れている。それは、私がシナリオを変えたせい。でも、そのシナリオは第1作のみ。
フェルディオが、ナナを守るために動いてくれている。そばにいてあげられないけど、ここからナナを守るしかない。