表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/60

妃陛下

 数日が過ぎ、解呪が進み足首から足の指が動かせるようになった。支えがあれば立てるようになったが、歩くまでには遠い。

 どうやって歩いてたっけ?メイドの支えで立ってみるが立ってるだけで、変な筋肉を使ってる感覚。足が震える。これもリハビリ!踏ん張れ!私。


「いつもありがとう」

お世話してくれるメイドに感謝しかない。1人では着替えも食事もできない。

「いえ、それが仕事なので」

できれば、仲良くなりたい気持ちがある。他愛ない話とかしたいけれど、彼女たちも〝仕事〟としてお世話してるし、線引きも大切なんだろうな。公私混同はダメみたいな?


 立つだけでも疲れ、またベッドに横になった。ノックが聞こえ、扉が開いた先にはメイドと騎士といっしょに妃陛下が立っていた。

「少し…お話、よろしいかしら」

「は、はいぃ。ど、どうぞ」

ベッドから降りようとした私を止めた。

「そのままで」

騎士がベッド側まで運んだ椅子に、妃陛下は座る。気品あるたたずまい、ただそこにいるだけなのに、私にも他の貴族にも、ない雰囲気がある。

「無作法、失礼します」

「いいのよ。仕方のないことですもの」

妃陛下は、なんのご用事で来たのか…。滞在してるのにあいさつもお礼もまだだ。

「妃陛下、治療のためとはいえ、長く滞在させていただきありがとうございます」

「いいの。貴女は被害者よ。しかもフェルディオ絡みの……」

まぁそうなんですけど……。毒と呪い、2段構えなんて。

「私も、陛下絡みで、学園で嫌がらせがノート3冊分あったの」

「!?3冊!」

過去のこととはいえ、笑顔で語るには壮絶な感じがする。ノートって自分で書いたんだ。

「それがあって、私と同じ年代の貴族たちは、その子共たちに言いつけてるそうよ。王族の良き人に手をだすなってね」

 それで、陰口はあっても露骨な嫌がらせはなかったんだ。でも今回、毒と呪いがあったわけだよね。

「たぶん、()()()()だろうって高をくくったのでしょうね」

 バレなければ、何をしてもいい?人として終わってるんじゃ……


 それで、ルディは…私が倒れて…、自分を責めて……

「貴女は、フェルディオの良き人なのよ」


「その……殿下はずっと何か考え込んでいるようで…もしかしたら……私のことで迷惑がかかって」


なんだろ…言葉が勝手に出てくる。我慢していたことが、不安なことが……。


「私がいると……ルディが苦しんで悲しんで……」


涙が、あふれて…止まらない。


「私のせいで…わたしのっ……」


「フェルディオのこと…、こんなに想ってくれてるなんて幸せ者ね」

妃陛下は私を抱きしめて、背中を擦ってくれた。ひたすらに泣いた。泣き止むまで……ずっと。

「あらあら…せっかくかわいい顔がぐちゃぐちゃになっちゃったわ」

メイドからタオルを受けとり、顔中の水気を拭いた。泣きすぎて目と鼻が痛い。

「取り乱して、申し訳ありません。妃陛下」

「泣きたいときに泣かないと、心が壊れてしまうわ」

それと、と続けた。

「私のことは〝お義母(かあ)さま〟って呼んでね」

へ?それは、まだ早いのでは……

約束よー……部屋から出ていってしまった。



「フェルディオ、聞いてたの?」

「は…い」

「寂しい思いをさせないの!…自分のせいだと思うならしっかり側で支えなさい」



この国に来て、泣くことが増えたな。


私、こんなに情緒不安定だったのかな。



 妃陛下が去った後に、そぉっと覗くルディに気づいた。私の泣いていたの見られてた?たぶん、顔……ひどいかも。思わずタオルで隠してしまった。

「ナナ……あの。…どうしたら、ナナを守れるだろうかと、ずっと考えていた」

私を、守る?

「婚約者として発表も考えたんだが………それではナナの気持ちを無視してしまう」

そう……私が自信がないと言って、ルディの気持ちの応えを待ってもらってる状態。

わたしを守るために、ずっと悩んでくれてたことが嬉しかったし、それでもルディを悩ませてしまった、そんな思いもある。

「これだけは言っておくよ。私はナナを手放す気はない」

ふぇっ…タオルで隠したままの、顔が熱い。


「ナナを守るために、イザベラ王妃にお願いした」

イザベラに?……久しぶりの友の名前に、懐かしさを感じだ。元気にしてるだろうか。お腹の赤ちゃんは無事に育っているか…

「ナナには悪いが、この国でナナに起こったことを手紙で伝えたんだ」

タオルの隙間から、ルディの顔を覗く。

「そしたら、私がついていながら、なんて事になってるのか!ってお叱りを受けたよ。そして、ナナを心配していた」

イザベラ…心配してくれてるとはいえ、ルディにはどうしようもないんじゃないかな…

でも、イザベラ元気そうで、よかった。

「で、私の提案を受け入れてくれたよ」

「ていあん?」

「ナナはイザベラ王妃にとって()()()()だ」

あの出来事のことか。


イザベラに扮していたときに、リリアーナに魔法で攻撃され負傷した。それがあったことで、リリアーナの罪を問うことができたのだが。


「命の恩人として、王妃が後ろ盾になってくれた。これは学園と国全体に公表する」

後ろ盾があれば、私に何かあった時に、その国の敵と見做(みな)される。

確かにこれは、強い味方だ。

「後ろ盾になってくれる人がもう一人」

「?」

「私の……母だ」

妃陛下!これは…願ってもない申し出だ。

「それって……」

でも…ルディの身内が後ろ盾になったら……もう確定、間違いなし!になるよね。


『お義母(かあ)さまって呼んでね』


Oh……決定事項になってませんか?

「大変、ありがたい…もうしでです…」

「すまない…ナナの身の安全と、天秤にかけられては、断れなかった…」

返事を返していない内に、外堀から迫られてる感じだぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ