始まる寮生活
王城に泊まった翌日、入学前に学園長に会いにきた。さすがにルディは用事があって、いない……と、思ってたら学園長室にいた。
用事とはこのことだったのか……。
「はじめまして、隣国から来ました。ナナシと言います」
メガネをかけ、長い顎髭を蓄えた学園長は優しい笑顔。隣のルディにもお辞儀を、する。
「長旅お疲れ様。ようこそ、我が学園へ。隣はフェルディオ。王太子ではあるが、今期より剣と魔法の指導教師になります」
教師?旅の道中、そんな話なかったけど?
……えぇっと、本題…
「学生寮に今日から入ろうと思います。案内をお願いしてもよろしいですか?」
学園長はうんうん…と頷き了承してくれた。ルディはなにか………。
「…私が案内します」
「フェルディオ殿、女子寮は男性禁止ですよ。まあ、せっかくだから、寮前まで案内しなさい」
えっ…。女性教師を呼ばないの?……なんか気まずい…。
ルディが先行して歩く。先ほどから何もしゃべらない。私も道を覚えるのに、周囲を確認しながら歩いているし、ルディの雰囲気がヤバい。
「どうして寮なんですか」
「え?」
漸く喋ったと思ったら、どうしてって…。
「隣国から来たので、住む所がないからですよ?」
「……でも……、いいのに」
え?なに?…聞こえなかった。なんて言った?
……あ、ルディの向かう先に建物が見えた。あれが寮かな。
ルディが急に立ち止まり、建物を見ていた私は立ち止まれず、ルディにぶつかった。
「いたぁ」
ルディが振り向き、私の肩をつかんだ。
「王城でいいじゃないですか!」
は?
「いやいやいやいや!ダメですよ!住む理由が無いじゃないですか!」
ルディは俯いている。旅の間はずっといっしょだったから寂しいのかもしれない。
「会えないわけじゃないですし?これから殿下は私の…………」
「……わたしの?」
「『先生』になるんですから!」
「…………はぁ…」
…?ため息……?あれ?
「…そう…ですよね。私、『先生』ですからね」
おお、昨日ぶりの笑顔……
けど……ちょっと暗いような。ルディの不安はなんだろう。先生という立場へのプレッシャー?…私では解決は難しいだろうな。
「寮の管理人がいますので、中は案内してもらってください」
「先生……ありがとうございます」
ルディは手を振りながら、学園の方へ戻っていった。
寮の管理人を探す。入って右には、小窓がある。おそらく管理人の待機する部屋の小窓かな?目の前には階段。呼んでからしばらくして、足音が聞こえた。奥からスラリとして白いブラウスにタイトなスカートを穿いている女性が現れた。
「今年、入学するナナシです。お世話になります」
「ふーん…貴女が噂の…」
噂?まったく有名人ではないですよ?
管理人さんって、スタイルもいいし綺麗。管理人をするくらいだから、それなりの年齢かな。
「まあいいわ、私がこの寮の管理人のジュリよ。よろしく」
おースナックのママさんって感じだぁ。
ジュリさんは寮の説明をしてくれた。
寮は3階まで。食堂があり、食事は時間が決まっている。トイレ、入浴場は共同。掃除は各階ごとで当番制。男性連れ込み禁止。門限あり。庭には狭いが、剣と魔法の訓練場が備えられている。
「で、ナナシちゃんの部屋は1階の端っこ」
ちゃん?…鍵を渡してくれた。この世界に来て、鍵は初めてかも。
「剣を持ってるってことは、貴女。剣なの?」
「今はどちらも使えるのですが、選択は剣にしようと思って…」
「へー…私も剣なのよ。ちょっと貴女の剣見せて」
ジュリさんに鞘ごと渡す。重さや長さを確認している。おもむろに剣を返された。
「とりあえず、部屋行って着替えて。ちょっと相手させてちょうだい」
「は、はい…」
またか…。まぁずっと馬車移動で体動かしてなかったから、ちょうどよかったかも。
1階西側の1番端の部屋。鍵を開け、入るとちょっとホコリっぽかったので、窓を開ける。部屋はクローゼットとベッド、勉強机。シンプルな造りだが、落ち着く。カバンと剣を置いて、一旦窓を閉めてから着替えた。一通りの着替えは持ってきたが、足らないものはあるだろか……誰かに相談できればいいが……
着替えてから、寮の出入り口に行くとジュリさんが待っていた。スカートのままでいいのかな?ジュリさんの剣は騎士団でも使われている剣のようだ。私の刀身は細身だから、折れないかな…。
「ついてきて」
案内されたところは、寮の庭にある訓練場。
「ここを使う時は入り口に、使用中の札を下げること」
「はい」
中に入り、ジュリさんは早速構える。私も同じように構えた。
お互い呼吸を合わせ、踏み込み剣を交える。ジュリさんの一撃が重い。受け止めれるが、跳ね除けるのに相当な力がいる。このまま受け続けたら、私の手が保ちそうにない。
「はい、ここまで」
3回くらい交えたあと、終了となった。3回でも、結構な疲労だ。
「剣の選択してないのに、いい動きと力ね。剣を選択したらもっと強くなるわ。その剣、確かに貴女にぴったりよ」
「は、はい。鍛冶の親方が私の動きを見て、作ってくれたんです。刀身は私の希望ですが」
自分の剣を改めて眺める。親方に認められるまで、何度も通い、断らて、鍛錬して、を繰り返していたあの頃を思い出した。
「すごく腕と目がいい親方さんね」
「はい……。…あ、ジュリさんこの街の鍛冶屋を知りませんか?手入れしないといけないし、選択後に、剣が合わなくなったときの為に」
目を細め、笑顔を私に向け、頭に手を乗せてワシワシ撫でられた。
「もちろん、いいわよー。ただし、選択後にもう一度私と手合わせすること」
「はい!もちろんです」
やった!
訓練場の出入り口から、ドンドンと音がして聞き覚えのある声がした。
「ちょっといいですか?管理人さん?」
あ…ルディだ。どうしたんだろ?
中に入ってきて、チラリと私を見た。
「あらあら、フェルディオ様?」
なんか、怖いぞ〜。なんだ?2人のただならぬ雰囲気…。
「ナナを街に案内しようと思ってね?」
街!あ、そうだ!
「ジュリさん!お願いがあって!着替えの他に足りないものとか、私の荷物を見て、アドバイスをもらえればと…」
「ナナ!ジュリに荷物を見せるな!」
見たことのない形相で私を見てる…
「あらーいいじゃない。見たって」
なんで、見せるなって言ったの?
「だめだ!………ジュリは……男なんだ!」
は?えぇ〜!…だってこんなにスラリ体型なのに…それに…
「スカート穿いてるのに?」
「ジュリの趣味だ」
趣味!?
「髪長くて、スタイルも顔も綺麗ですよ?」
「ふふふ。褒めてもらえるなんて〜努力した甲斐があったわ」
努力の結晶のスタイル…うらやましいっ…
「でも!なんで女子寮の管理人なんですか!?」
「それはね、男が好きな、女になりたい男だからよ。それと…元騎士団」
この世界にも、そんな要素があったんだね……イザベラ…。(それはーネタキャラだよーbyイザベラ)
ちょっと寮生活…楽しくなりそう。
「はぁ……寮の警備にうってつけって、わけだよ」
「なんで、騎士団辞めたんですか?怪我もなさそうなのに」
ジュリさんは、ぐっと堪えた表情で、
「男が好きって言ったら、辞めるハメになったの…」
あ、そうなりますよね。あちらの国の騎士団もほとんど男だったし、貞操の危機と思われたのかも…。
「おかしいと思わないの?」
「思いませんね。愛の形は人の数だけあると思いますし」
「ふふふ。なんか気が楽になっちゃった。あ、荷物は見れないけど、だいたいの必要物品は分かるから、紙に書くわね」
ジュリさん、楽しそうにしながら、寮に戻っていった。
…で、訓練場にはルディと2人きりに…なっちゃった。
「2人きりの時だけでいいから…ね、ナナ」
耳元で囁かないでー
「……ルディ…」
すっごい満足げな顔してる。その顔、反則!
「あら、愛称で呼ばせてるの?殿下」
え!?ジュリさんに聞かれた!は、恥ずかしい〜
油断してた…
「独占欲、強すぎない?誰かに取られたくないなら、早く手を打ちなさいよ」
「わかってる」
私が羞恥心で悶えてるときに、何やら会話が進んでいた。