*メイズ*
僕の家門は魔法で、父も母も兄弟も魔法を選んでいる。本来、自由である選択も、我が家門は自由ではなかった。産まれたときから魔法であると決定づけられているようなものだ。
決められていることが、不服でもあったが、周りが魔法なのもあり、それでもいいと思う反面、剣への憧れもあった。
シーブルとは、学園に入る前に、貴族同士の交流の場で初めてあった。男は男同士でかたまり、自分は剣にするだの、親や自分の自慢話をする。僕が選択は魔法にする、と話すと笑われた。魔法を選ぶのは女が多いため、魔法を選ぶ男は『女々しい』だの『弱い』だの言われた。
魔法を選ぶのは家の都合で、自分のせいじゃない。弱いわけでもないのに、なんだか泣けてきた。
「魔法だって強いじゃないか、何が悪い」
口々に言われてたときに、割ってきたのは、シーブルだった。
「女々しいだの、弱いだの言うことは、わが国の王太子を侮辱していることに気づかないのか?」
確か、フェルディオ殿下は魔法を選んでいる。シーブルの言葉は、僕を嘲笑っていたみんなを黙らせた。
「剣が戦えるのは、魔法あってのものだ。魔法もそうだ。どちらか欠けても戦えないんだ。魔法を馬鹿にするお前たちは強くはなれない」
その時は名前を聞けず、終わってしまったが、再び会ったときは学園だった。
僕は、シーブルの言葉で自信を持ち、魔法を選択した。だが、シーブルは剣。あんなかっこいいことを言っておいて、剣を選んでいたことにショックだった。
訓練では別々だが、合同での動きに衝撃を受けた。木剣では軽すぎて自分には合わないと、シーブルの武器を持ち込んでいた。
「おいおい、マジかよ」
周りがどよめくのもムリもない。シーブルの武器はハルバード。弱点があるものの、複数の武器がひとつになっている。その武器を振り回すシーブルについていける魔法の人はいないだろうと言われた。
「僕がパートナーをします!」
あの時庇ってくれたことも、名乗り出た理由のひとつでもある。入学するまで、弱いと言われないために、魔法の練習と、技術を磨いた。シーブルにどこまでついていけるか、わからないが今まで練習した成果を、さらに精度を上げるため立候補した。
最初はついていくのがやっとだった。強化系、防御系は何とかなった。ハルバードの弱点。重みがあるため振りかぶったときに隙ができる。その隙を埋めるタイミングが難しかった。速すぎても遅すぎても、シーブルが不利になる。
「焦るな」
なかなかタイミングが合わず、内心焦っていた。シーブルにお願いし、訓練場で繰り返し練習をして、ベストなタイミングを掴んだ。
1人でも練習をかかさない。練習のしすぎで、テストは毎回、赤点ギリギリ。いっしょに練習しているはずのシーブルは毎回成績上位だ。あんな重い武器を扱っているにも関わらず、いつも余裕だ。
練習のしすぎで、テストの成績が悪いことを心配してくれ、いっしょにテスト勉強をしてはくれたが、赤点ギリギリから抜け出せなくなっていた。
勉強よりも、魔法を極め、シーブルとパートナーとして戦うことが、やりがいを持ってしまった。
そんなことを繰り返していくうち、学年で、学園で1番最強となっていた。
3学年になる前、『次の生徒会長は誰か』。その話題で持ちきりになり、赤点ギリギリの僕か、シーブルの名が挙がった。
なぜ名前が挙がったのか。まず強いこと。それと、僕たちでは分からなかったが、ルックスがよいこと。女生徒が云うには、『顔がいい』らしい。悪い印象ではないならよかったと思う。
名前が挙がり、その後…、
本当に生徒会長に選ばれてしまった。シーブルは副生徒会長。僕が選ばられたことに、シーブルは不服を言っていたが、覆らないので諦めたようだ。
新入生を迎え、2~3ヶ月たったころ、面白い話が飛び込んできた。
『1年の剣の娘が、女生徒全員を打ちのめし、特別訓練を開いている』
しかも、そこ娘はフェルディオ殿下の婚約者(噂)だという。
その話はシーブルも興味を持っていた。その娘を呼び出し、見学をさせてもらった。
相手をしてもらうための口実。
あの娘は初めてパートナーの難点を自分が動くことで、カバーした。剣として見本となる動きだ。あの娘と訓練できることは幸運だ。
手合わせをした時は、シーブルは楽しそうだった。無表情だが、長くパートナーをしている僕にはわかる。手加減はしているが、半分本気ということも。
あの娘の咄嗟の動きは、魔法の娘を守るために剣がないのに素手でかわすなんて、驚きだ。
殿下が惚れただけあるかもしれない。殿下とあの娘を応援したい気持ちが産まれた。
生徒会に誘ったのも、堂々も会えるようにしたかっただけなのだが……
あの娘が倒れた。殿下の前で、
もっと気をつけて上げればよかった。命を狙われる可能性を……