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夏季休暇前の

 テスト勉強のおかげで、期末テストも乗り切り、結果……中の上あたり。うん…、勉強したからって完璧とはいかないものよ。私としてはいい方ではないかと思う。


 赤点ギリギリのメイズは〝ギリギリ〟は免れたそうだ。生徒会長をしてるから、成績5位内とかと思ってた。

「生徒会長に成績は関係ないよー」

と、言っていた。

「他の生徒はこいつの見た目に騙されてる」

と、シーブルは冷ややかに言ってた。


 無理やり誘ったツインテの娘は、成績が上がり大喜び。

「勉強会に誘ってくれてありがとう」と、感謝された。


もうすぐ夏季休暇。何をしようか。

この国の孤児院を訪問するのもいいかも。どこかのお店でアルバイトして、お小遣い稼ぐのもありかも。鍛冶屋にも顔出したい。


 貧困区へ里帰りもありかもだけど、馬車酔いが心配。馬車酔いがなければ……


 休暇に何しようか、どうしようかと考えながら、学園の食堂で、ランチボックスにおかずを詰めていく。学園のランチはすごくおいしい。どの料理も繊細な味で丁度いい。

「ちょっと、よろしいかしら」

声をかけたのは、同じクラスの綺麗な巻き髪の令嬢。と、他の令嬢も1人。前はもう一人いたような。

「はい、なんでしょうか」

互いに目を合わせ頷いている。

「この前は、酷いことを言ってごめんなさい。それに、あなたの合同訓練で、魔法の技術が上がりましたの。とても感謝をしています」

「いえ、私も良い経験を積ませていただいています」

ご令嬢が謝って褒めるなんて、珍しい。

「日ごろの感謝に、これをプレゼントしたくて」

もう一人の令嬢が持っていた箱を、巻き髪の令嬢に渡し、蓋を開けてみせる。中には綺麗な装飾のコンパクト。

「これは鏡ですのよ。我が家が贔屓にしている職人が造りましたの」

ランチボックスを一旦テーブルに置き、箱を受けとり、中のコンパクトミラーを手に取り眺めた。

「とても素晴らしい品です。とても腕の良い職人ですね。ありがとうございます」

「いいえ、喜んでいただけてよかったですわ。では、これで」

去っていく令嬢のあとに、さっきは見なかった令嬢が合流した。

鏡を箱に入れ、ランチボックスを持って生徒会室へ向かった。


 このところ、お昼は生徒会室で食べている。ベンチでは、やっぱり視線が落ち着かないのと、ルディと気軽に会えないから。

 ホントはここでの昼食はダメらしいのだが、メイズが(勝手に)許可してくれた。

 先ほど、プレゼントしてくれたコンパクトミラーの装飾をじっくり眺めながら、食事をする。よく見ると、装飾が細かくて見惚れてしまう。普段使いには恐れ多い。

「どうしたの?それ」

まだ、ルディは来てなくて、メイズとシーブルと私の3人。許可してくれてから、メイズもシーブルもお昼は生徒会室で食べている。

「さっき食堂で、同じクラスの令嬢からお詫びと、お礼にと、いただいたんです」

メイズにも渡して見てもらう。

食事の続きをしようとフォークを手にした時、指先にチリッと痛みが走ったような気がした。気のせいかもと食事を続けた。

「精巧な造りだね。どんな令嬢なの?」

「こう…キレイな巻き髪で……」

あれ?足と手が痺れた感覚。

「遅れてすまない」

「あ、先生!」

立ち上がったが、足に力が入らなくなり、後ろによろめき倒れてしまった。起き上がろうとしたが、手足に力が入らない。

「…ぁ…、ル……」

声も…、頭も痺れた感じがして、意識が遠のいていった。最後に見たのは、何度も私を呼ぶ、苦しそうな表情のルディ。


>>>>>>>


 ナナが目の前で倒れた。

後ろによろめき、椅子とともに倒れた。一瞬頭が真っ白になって、メイズの声で正気を取り戻した。シーブルがすぐに状態を確認してくれる。

「息は正常。脈も少し乱れはありますが、大丈夫です。ただ、体…特に手足がかすかに痙攣してます」

「どうして…」

「先生が来るまでは、いつも通りに会話して食事もしてました」

机を見ると食べかけのランチボックス。小さな箱もある。

「メイズ君、魔道具で呼びかけてください。もしかしたら、食事に毒が入ってるかもしれません。シーブル君は治癒師を!」

「はい!」

なんとか冷静に言葉に出来ているが、取り乱しそうな気持ちを押さえつけている。本当ならすぐにナナを抱きかかえたい。


「「緊急です。食堂の料理に毒が混入されている疑いがあります。すぐ食事を辞め、すぐに治療師の元に…」」


なぜ、こんなことに…。誰が、

「あの…小さい箱は?」

「食堂でクラスの令嬢から、詫びとお礼でもらったんだって」

細工の細かい、コンパクトミラー。これが原因とも思えない。やはり食事か。

「先生!連れて来ました!」

息切れした治癒師が、シーブルと一緒に入って、ナナに治癒魔法をかける。

痙攣は治まったが、意識はまだ戻らない。

「殿下、さっきの呼びかけ……もし毒なら私の治癒だけでは治らないかと」

分かっている。治癒も万能ではないし、治癒自体、状態異常の治癒から欠損まで治癒できるものもある。学園は主に怪我の治癒だ。

「王城へ行きます!ランチボックスは捨てずに!」

ナナを抱えて、馬車の元へ走った。


 あの時、想いを伝えたけど、まだナナの気持ちを聞いてない。聞かないまま……終わらせない!

 速く!速く!急げ!

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