期末テスト
『……好き……なんだ…』
ん゛ん〜〜!
何度も思い出してしまう……。
好き…ん゛んっ…、と言ってくれたことは嬉しい、反面私でいいのか、もっと相応しい人がいるんじゃないか、とか考えてしまう。
「ナナシさん、顔面が五月蝿い」
生徒会長のメイズに注意された……。思い切り顔に出てた。
今、生徒会室。結局他の令嬢からの視線を気にせず、ルディに会うために……
違った、生徒会長とシーブルに気に入られ……
これも違うな……
痛い視線からの避難所……
ともあれ、生徒会の仕事を手伝っている。
「そろそろ期末テストだけど、大丈夫?」
……、……!あ、テストがある!
「その顔だと、忘れてたね」
「はい……」
授業も聞いてたし、前世の授業内容よりはそんなに難しくないと思う。
語学は必要として…
数学は、四則演算のみ。問題ない。
社会は地理歴史と地理経済…
語学と社会が覚えることが多いな。
「生徒会の仕事の合間に、テスト勉強しますか」
「おい!なに勝手なことを」
突然の提案に、シーブルは反対のようだ。そりゃそうだ。生徒会室を個人的に使用しようとしているものだ。メイズはずっとこんな感じなのかな…マイペースというか。それに振り回されるシーブル……かわいそう。
「だいたい、誰が教えるんだ!?」
「僕とか、シーくんとか……?」
シーブルの大きなため息が聞こえた。
「お前な…いつも赤点ギリギリの奴が!『教える』なんて言うな!」
はー?生徒会長なのに?赤点ギリギリって……。
「えーそんなに褒めないで〜」
「なんで褒めてると思えるんだ!?お前の補修のせいで生徒会の仕事が滞るんだからな!」
シーブル……苦労人だ。ホントに振り回されてたのか。
「シーブル先輩!生徒会長が勉強する気になってるんですから、もしかしたら……成績良くなるかもですよ?」
?シーブル…今、成績と生徒会の仕事を天秤にかけてる?眉間にシワ寄せて悩んでる。
「はぁ…、しかたない。メイズ!勉強サボるなよ」
「わかった!がんばる」
「お前の言葉が1番信用できん」
これで、テスト勉強ができる!寮でもできるけど、1人だとどうしてもサボりがちになっちゃうし、気晴らしに………って、剣の訓練しちゃうしな。
「俺は、自身の勉強するから、教えれないぞっ」
「えぇ~……」
落ち込むメイズだが、何か閃いた顔をした。
「あ、そうだ!」
生徒会長の机の傍らに箱のようなものに手をかざす。よく見ると箱に魔力石が埋め込まれている。石が光り……。
「指導教師のフェルディオ先生〜」
同じ声が校舎中に響く。
「至急、生徒会室まで来てください」
私もシーブルも驚きのあまり言葉が出ない。誰を呼び出してんだ!
「至急ですよ。至急。最近生徒会に入ってくれた娘がぁ……」
扉の向こうから、走ってはいけない廊下を走る音が近づき、勢いよく扉が開いた。
思い切り息切れしている、ルディの姿が……。
「メイズ!呼び出しの魔道具をそんなことに使うな!」
シーブルが怒って当然です。
もしかして…ルディに勉強を教えてもらうつもりなの?
「本当ですよ。メイズ君?」
息切れを抑えて、冷静に話すが……。
ルディもちょっと怒ってるかも…。だいたい、私を餌に呼び出してるし。
「で、用事はなんですか?」
「もうすぐ、期末テストなので、みんなでテスト勉強をしようと思いまして。わからない所を教えてくれる人がいないので、先生にお願いしようかと」
「なんで私なんですか?」
「先生は剣と魔法の指導なので、科目には関係ないと思いまして」
メイズの言い分に、ルディもシーブルも呆れてる。
そんなメイズは笑顔のままだ。
「それに……」
ルディに耳打ちする。何を吹き込んでる?
ルディが私の方に視線を向けた。
「……わかった」
「やった!」
何を言ったんだ?何を!メイズが私の方を見て手を振った。
次の日から、生徒会の仕事を終わらせたあとにテスト勉強をすることになった。
私は、教科書とノートで復習し、覚えないといけない単語や地名などは、ひたすら書いては読み上げて、を繰り返し暗記する。
ルディはミニテストを作ってくれた。意外と躓く所が多かった。暗記だけではダメだと、実感する。
テスト勉強にロイとグレア、ツインテの娘も参加している。テスト勉強のことを話したら、参加したい!と言われたのだ。男ばかりになってしまうので、ツインテの娘も呼んだ。
この男どもは、顔の偏差値高めだな。……。
「わかはないところは、先生に聞いてね」
「おぉぉ〜!恐れ多いですぅ…」
そんなこと言ってたら、勉強にならないよ。何回かテスト勉強に参加していくうちにルディに慣れたようで、質問ができるようになっていた。
提案者のメイズは集中力が続かず…居眠りしたり、違うことを始めたりしている。今回もダメかもしれない。
そんなメイズの横ではミニテストをスラスラ解いているシーブル。
グレアは地理に関しては得意みたいで、難なくミニテストで答えられている。各国を知り尽くしている冒険者め。
ロイは2度目の1学年なので、問題はなさそう。
「ねぇ、ナナシ。なんか失礼なこと考えてない?」
いえ?ダブりだなんて考えてないよ。
ルディはテスト勉強の時だけ、メガネをかけて学習塾講師って感じがする。私と目が合うたび微笑む。顔が熱い。
そんな私をみんな見てて、ほっこりしている。
ルディのミニテストやわかりやすい説明で、期末テストを乗り切ることができた。ありがたい。
テスト勉強の前に、メイズがルディに話していたこと。
『頭いいところが見せれるよ』だったそうだ。
テストを乗り切ったあとは、夏季休暇だ。