ストレス発散!
翌々日には各学年に、通達が出された。
✕月○日 午後より
女子生徒全員
合同訓練場に集合
各自 剣・魔法のパートナーと参加すること
不参加は認めない
参加しない者は実技を減点する
そして、当日。合同訓練場に各学年の女子生徒が集まった。
「呼びかけに応じてくださり、ありがとうございます」
「強制的に参加させたんじゃない!」
「私に不満があるそうなので、ひとりひとり話し合ってもいいのですが、直接話してくれなさそうなので、ここは剣と魔法で話し合いましょう」
拳で語ろうみたいな感じで。
もちろん、不平不満が飛び交う。
私だって、我慢の限界なんだから!
「こっちはケンカ売られたんだ!相手してやるっていってんだよ!」
一気に静かになった。今まで黙ってたから、怒鳴ってビックリしたんだろう。
「まずは3学年から相手してやるよ」
ルディの前で大泣きしたあの日、全員を相手をして力で黙らせる、と言ってみた。
いくらなんでも、全員は無謀。でも、負けても別にいいと思ってる。
相手は剣と魔法のペアで、私は…、ルディこの事態を招いた責任とってね。
ルディがパートナーになって、魔法攻撃はしない。あくまで補助のみ。
ルディが学園長に訓練場の使用とこのやり方の許可をもらった。条件つきだ。医務の治癒魔法師を控えさてること、1人はやっぱりダメと言われ、ロイを特別参加させた。
「なんで俺もなんだよ!2人の問題に巻き込むなよ」
「あの恩を今返して!」
まず、3学年のご令嬢方。他学年は観覧席にいてもらってる。相手は私とロイ。2人分の魔法補助をルディ1人で担う。
「時間かけたくないんで!いっぺんにいくよ!」
力強く踏み込み、突っ込んでいく。相手の剣を薙ぎ払い、足元がふらついたら足払いで倒す。
「足元ががら空き!」
剣の後方から魔法が飛んでくるが、ルディの防護壁で弾かれる。
「女の子相手ってやりづらい〜」
「じゃぁ手加減していいよ、私がトドメさすから!」
「それもこえーよ」
3年の魔法さんごめん!
木剣に風を集め、振り下ろし吹き飛ばす。
「魔法攻撃しないんじゃないの!?」
「先生はね、私が使ったの」
さぁ覚悟しなさい〜どんどんいくわよ。ニヤリ
泣いてスッキリしたあと、威力は弱くなったけど使えるようになっていた。慣れない環境と新生活で緊張していたのも原因かもしれない。
「おいおい、まじかよ。魔法使えるのか!」
「ロイにも魔法使ってるとこ見せたよ?」
「夜の?気づかねーよ」
今の戦いで、もっとスッキリした。それにしても3年なのに…こんなもんなの?それか、ルディの補助のお陰かも。
3年のみなさんは観覧席で、治癒を受ける。続いて2年。
「あ、あの私、不満なんて何も」
「だまって悪口を聞いていたなら同罪です」
「ナナシーどす黒い笑顔ヤメレ!」
ロイ、遠慮なくなったな。ツッコミするどい。
先程の戦いを見て、剣の生徒が全力で打ち込んできた。
「最初から全力でくる奴があるか!」
思い切り打ち返す。魔法の補助が甘いな。
今度は土の飛礫を用意する。
「防護壁を張れよ!」
飛礫を飛ばし、瞬時に防護壁を張れなかった生徒に直撃する。
「遅い!怪我した奴は治癒師のとこへ行け!残り!行くぞ!」
斬り込んでくる者にはしっかり受け止め、弾き返す。
尻込みしている者は足払いをする。
「おいおい、先輩方〜弱いですねー。そんなんで殿下の横に立とうとしてんですか?こんな弱っちーのが国を背負えるんですかぁ」
「ナナ…油を注ぐな」
ルディがツッコんだ。おっと調子に乗りすぎた。
「いえ、違いますよ。横に立ちたいなら鍛錬しろと言ってるんです。特に心を」
訓練のときに教わった『心得』は剣や魔法の物理的なことだけじゃない。
「君たちは、ここで教えられた『心得』を守れていない。傷つける物は何も剣や魔法だけではないんだ。無視することも、影で悪口を言うことも、すべて刃となって心を傷つける」
それがわかっていれば、悪口なんてしなかっただろうに。
1学年と交代し、私と向き合う。
「では、ここから先生の補助はありません。私は動かないので、打ち込んで来てください。ロイは、下っていいよ」
3年と2年の様子を見て怖気づいたのか?誰も来ない。仕方ないので、指名すると、ヤケクソに突っ込んできた。木剣で受け流す。
「相手を見ろ!魔法と連係が取れていない!次!」
「先生、なんですかアレ」
「指導だ」
剣と魔法の連係、補助の弱さ、攻撃魔法の軌道がめちゃくちゃ。1学年だから仕方ない。合同訓練で(しかたなく)見学してやり方甘いな、なんて思った。これは実戦の訓練だ。手加減はするが、ビシビシ指摘する。師匠はもっと厳しかったからな。
「ロイも知ってるだろ、〝豪傑の鬼神〟がナナの師匠だ」
「はぇ~!ど、どうりで強いのか……というか、あいつ…もう鬼神だろ」
「………。かもな…」
全員を相手できてスッキリした。力に振り回されていたのが、だんだんと力に慣れてきたようだ。
みんなの犠牲サマサマ。
あんなにボコボコにしたのにコソコソヒソヒソできるのか…
「みなさーん。この訓練を『半年』間、月2回とおもいましたが、ヒソヒソできる元気があるようなので、3回にしまーす」
ふふふ、静かになった。私も訓練になるし、みんなは技術が上がる、丁度いいよね。一石二鳥というやつよ!
半年間、剣と魔法の指導教師をつけてくれるようお願いしている。私が言うまでもなく、教師が指摘してくれる。
そののち、ナナに剣の師匠が、豪傑の鬼神と判明し、ナナに『無慈悲な鬼神』の異名がつけられるのはまた後の話。
ジュリ姐さんにバッサバッサとなぎ倒す私を見たかっと、言われた。いやそんな風には…して……、たな。特に2年と3年に。
今日はよく眠れそうだ。