表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

犬と猫の愛され勝負

作者: カルムナ

 ある日、犬と猫が言い争っていた。テーマは「どちらが人間のパートナーとしてふさわしいか」。

 両者ともに一歩も引かない、真剣勝負だ。


「俺たち犬は、人間のために働くことができるんだ。家を守り、狩りに協力し、災害の時には命を救う。常に従順で信頼されているのは俺たちだろ?」

 犬は胸を張り、自信たっぷりに言った。


「ふん、それが何だっていうの。私たち猫は、人間と対等な関係を築いてきたのよ。私たちがネズミを捕って食料を守らなければ、彼らは生き延びられなかった。依存するのではなく、共に生きる。それが本当のパートナーシップでしょう。」

 猫も負けじと、鋭い瞳で犬を見据える。


「それに何より、俺が一番可愛い。」

「何言ってるの?私こそが一番可愛いに決まってるわ。」

 そんな調子で、二匹の言い争いは止まらない。


 しかしそんな言い合いの最中、飼い主が部屋に入ってきた。二匹は言葉を止め、期待の眼差しを向ける。

「さあ、2人の大好物よ。」

 飼い主が持ってきたのは、犬には骨のおもちゃ、猫にはまたたびだった。それぞれの大好物を手渡されると、二匹は目を輝かせて受け取った。


 犬は骨を噛みながら、ちらりと猫を見て鼻を鳴らす。

「ほら見ろ、俺にはこんな立派なものをくれるんだ。お前のその小さなまたたびなんか比べものにならない程大きくて噛み応えがある。」

 猫はまたたびに顔を擦りつけながら、口元に笑みを浮かべる。

「見てごらんなさい、素敵な匂いに深みのある味。ただ硬いだけの骨なんか比べ物にならないわ。」


 自分にこれほど素晴らしいものをくれるのは、こちらを一番に思っている証拠だろうから。

 互いに大好物を満喫しながらも、心の中で競り合いを続ける。こっちの方が愛されている、と。


 そんな二匹のやり取りを横目に、飼い主は微笑んだ。

「本当に、この子たちは可愛いわね。」

 犬は骨を転がして幸せそうに遊び、猫は夢中でまたたびを抱きしめている。どちらかが特別というわけではない。ただ、二匹ともいてくれるだけで、飼い主はこの上なく幸せだ。


「どっちも大好きだよ。」

 飼い主の小さなつぶやきは、遊びに夢中な二匹には届かない。そっと両手で二匹を撫でると、それぞれ気持ちよさそうに声を上げた。


「やっぱり俺が一番だ。」

「やっぱり私が一番よ。」


 こうして犬と猫の愛され勝負は、互いに勝利を確信して終わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ