表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

復讐勇者~召喚勇者の待遇が良くなった話

作者: 山田 勝

 勇者、実体は、異世界から召喚した黒い髪の獣だ。


 姫と結婚させてやるとでも言えば、喜んで魔獣、いや、ドラゴン、魔王にすら挑む。

 まあ、もちろん大事な姫はやらなかったが。

 聞けばあちらの世界では平民と言うではないか。



「陛下、女神信仰圏公会議より、勇者派遣の要請です」


「ほお、きたか。公式には勇者はいることになっているからな」


 勇者ケンジは15年前に誅殺をした。表向きは病死だ。

 その後、魔道士との間に子をなしていたと判明した。



「ケンジの子をつれて来い。勇者殿が魔王城に出立する儀式を行う」


「御意」



 ・・・・



 数日後、王都近郊から連れてこられた勇者は、今年14歳か。女だ。背が低い。ボロいローブを羽織っている。手には不格好な魔法杖を持っている。鉄と木で出来た杖だ。

母が魔道士だからか。


 一応、暴走しても大丈夫なように、宮廷魔道士たちが、ワシの前に障壁を展開している。



「平伏をせんか!膝をつけ」


 どうにも様子がおかしい。


「何故、平伏するます?」


 まるで、痴呆のような言動だ。




「クス、やはり、野蛮人だ」

「まあ、うちの5歳の子の方が賢いわ」


 見物に集まった貴族の面々は遠慮がない。

 言語もおぼつかないのか?





「陛下・・・」


 宰相が耳打ちをした。

 何?世話係を任せた男爵は、教育を施さずに、塔に閉じ込めたままにした?

 中抜きをしたか。


 6歳で教育を打ち切り。

 食事、トイレ、湯浴み。最低限の世話はやってきた。


 王都郊外の勇者専用の塔、勇者の居室ではあるが、牢屋でもある。

 意にそぐわない言動をしたら、塔に閉じ込め餓死させる作戦だ。



 ワシはこの場では、好々爺を演じる。

 これでも、こいつのおかげで援助金が出るからだ。


 各国から勇者養育援助金が出る。ワシは愛妾と住む為の離宮の造営を命じた。

 その一部を男爵に渡して任せたのに。


 まあ、いい。一応、勇者の娘だ。こいつでも、出陣をさせて、戦死すれば、弔慰金をせしめられる。



「勇者殿、フードをとり。名を名乗られよ」


「名・・・分からない」


 と言いながら、少女はフードをとり。顔をさらした。


「「「ホオー」」」


 思わず驚嘆のため息がもれた。


 顔は整っている。

 髪は、まるで、月のない夜のような闇を思わせる黒、目は紺色、母の色だ。

 肩までのショート、肌は若干濃いのがエキゾチックな雰囲気を醸し出す。


 ワシの愛妾にしてもいいな。

 しかし、自分の名前も知らない?



 そう言えば、皆、こいつの名前を知らない。


 そうか、赤子を抱いて供出を拒む母親の腕ごと切断して、赤子を奪ったのだった。



「屋敷では何と呼ばれていた?」

「誰も呼ばない。亡霊はマスターと呼ぶ」



 また、不思議な事を言う。

 まあ、いい。後で、メリーとでもつければ良かろう。



「王命である。勇者殿、魔族領に出立し、魔王を討伐せよ」


 しかし、少女はキョトンとしている。



「いつ?」

「今からだ」


「どこでぇ?」

「魔族領だ。後で地図をやる」



「誰が?」

「お前が!!」


「なぁぜ?」

「はあ、魔王を討伐するのは勇者の血統の使命だ!」



「何を?」

「魔王をだ。討伐せよ」


「如何に?」

「3ゴールドやる!それで、冒険者ギルドに行き仲間を集めて討伐せよ!」



 まるで、子供のような口ぶりだ。

 まあ、いい。勇者を出したことが他国に対する実績になる。遠征の援助金を出させる!



「わかぁった」


 すると、少女は、手に持つ杖をくるっと回して、

 杖の太い方を肩につけ。杖の細い方を宮廷魔道師長に向けた。

姿勢は、武道で言う前屈立ち。前からの衝撃に強い立ち方である。


まるで、ボウガンを撃つように見えた。



「ほお、魔法杖の使い方もしらないか。障壁を展開していることも分からないか・・・ギャア」


 バン!カラ~ン


 ドタン!


 魔道師長は倒れ、床には血が広がった。

 障壁は消えた。


少女の持っている杖は64式7.62ミリ小銃であった。この世界の者には分からない。



「ヒィ、何だ。あれは・・・」

「何故、殺した!」



「私、勇者、魔王討伐の職制上は国王より上と聞いた。だから、殺した」


「意味が分からぬ!」


「お前らが行く」

「意味不明だ!衛兵捕まえろ!」


 そう言えば、こいつは何故一人で来た?

 男爵は?まさか、こいつが殺したのか?



 少女は顔を伏し。「ククククッ」と笑った。



「(自衛隊召喚!一個小銃中隊!本部管理中隊召喚、編成完結式省略!ハーグ陸戦規定適用除外!命令かたぁ~つ。貴族たちを捕縛せよ!)」



 ボア~~~


 魔方陣が浮かび。輪の中心から人が浮かんでくる。


「何語を話している?」



 バン!バン!


「ヒィ、雷魔法?」

「勇者、いや、勇者様だ!」



「(本部管理中隊本部、捕虜収容所の要領、その他の小隊支援!小銃中隊は援護!)」



 国王を筆頭に、次々に捕らえられた。




 ・・・・・・



 あれは、マダラ模様の服に、全員、鉄で出来た魔法杖を持つ。召喚獣なのは青く光っているから分かる。奴は異界から魔道士を召喚したのか?

 仲間を呼び寄せたのか?



 カツカツカツ~


 奴は歩いて、玉座に座った。

 足をだらしなく投げだし。


 顎を動かし、ワシを呼ぶ。


「(さあ、マスターがお呼びです)」


 言葉が分からない。


「ああ、命令下達、敵情、分からない。友軍、王と適当な貴族・・・う~ん。武器、剣でいいか。捕捉三ゴールドやる。これで、仲間を集めて、魔王討伐をせよ」



「ヒィ、そんな無茶な」



「無茶?父様はこれで魔王を討伐した聞いた」


「そうだが・・・」



「(マスター、意見具申です)」


「(許可する)」


「(それは、非効率的です。チヌークを召喚して、魔族領近くの冒険者ギルドに落とせば良いのではないですか?)」


「(チヌーク?燃料持つ?)」


「(マスターの魔力が尽きなければ召喚は解けません)」



「(分かった)」



 また、未開な言語を話す。





 ☆☆☆人族領魔族領国境の街、ラクド



 バタバタバタ~


 街の記録によると、鉄の箱が4、空から降りてきた。



「降車よ~い。降車!」


 ドン!


「「「ヒィ」」」


 と蹴飛ばされて、王冠を被った者と、数十人の貴族が降りてきた。



「ヒィ、勇者様、お考え直しを!」


「配る。金貨3枚、並べ」


「(並べ!)」


 一人の黒髪の少女が指揮を執る異様な集団だった。



「隊長!あれは、ミドル王国の国王と高位貴族たちです。救出しますか?」


「やめておけ、あのマダラ模様の服の召喚英雄は、女神教外典によると、終末の軍隊。『ジタイタイ』だ。魔族との最終決戦で現れると云う。実体はあちらの国の騎士団だ」



「ミドル王国、中抜きがヒドイと聞いた事がありますが・・」


「それよりも、報告だ。早馬だ。法王庁にも忘れるな」


「畏まりました!」



街の喧騒とは別に、召喚英雄たちは整列し、国王に対して儀式を行った。


「(勇敢なる国王と、その貴族達に、敬礼!)」


ビシッ!


「(直れ!)」


「(御武運を祈ります)」

「(国に帰ってきたら、命令不服従で処刑しますからご注意を、魔王を討伐するまで帰れません)」


「ヒィ、いったい何を話しているのだ!」


召喚英雄たちは、国王達に声をかけ終わると。また、鉄の箱に乗り。元来た方向に飛び立ったと伝えられる。



 国王達が冒険者ギルドで登録した記録は残っているが、それ以後の成果記録はない。

 王冠を被ったゴブリンがいるとの報告はあった。



 少女の行方は掴めない。

 鉄の箱に乗って、名前を探しているとのもっぱらの噂だ。


 ミドル王国は他国の共同統治になり。調査が行われた。

 

 召喚した勇者は、厚遇するとの規則が出来。監察官制度が早急に出来上がった。




最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ