オープンワールド43
気がつくと屋敷の図書館のソファーに座っていた。
色々、ありすぎて頭が混乱していた。
やはり、ここは生命の樹のパスの中らしかった。
細かいことは分からなけれど、とにかく、希望の、エンディングにはタロットカードの愚者の支配するケテルか、世界の支配するマルクトに向かうかを選ぶことになるようだ。
ベストエンディングは、私の場合はケテルの世界にあるようだ。
が、そんな事より面倒なのは、やはり悪魔と魔女の契約は『キス』で行われるらしい事っだった。
私は間違っていた。
おっさんとキスするわけがないと偉そうに言ったが、おっさんと悪魔は別の契約の仕方があるんだそうだ。
「私だって、ファウスト爺さんとキスなんで嫌っですよぅ。」
と、メフィストに笑われた。
そうだった。メフィストも女性専用の悪魔というわけではなかった。
「なんにしても、知らない人の前で目を閉じてはいけませんよ。BBAと言ったって、悪人には魅了的ですからね。」
と笑うメフィストに、熟女クラブとか、エログロの世界を妄想した私にメフィストはマジレスした。
「スマホ、盗まれたら、ちゃんと連絡先わかっていますか?スマホに登録していても、盗まれたら使えませんからね。ちゃんと、ノートに連絡先を書いて置くんですよ。」
メフィストを見ている時、昭和のお昼のワイドショーを思い出した。
自分が物凄く中高年になった気持ちになったが、ただ頷いた。
と、言った風にいろんな問題がある。
基本、悪魔は他の悪魔と魂を取り合ったりしない。時に、目上の悪魔が他の悪魔の獲物を狙うことは稀なんだそうだ。
まあ、そんな事をしていたら、すぐに組織が崩壊するんだろうから仕方ない。今回はベルフェゴールの新しい依代の問題なのでカイムが登場したらしかった。カイムはベルフェゴールが推しのようだった。
特に女神バージョンの。
だから、コランのあのベルフェゴールの姿をなんとかしたいと考えていたようで、私は渡りに船の存在らしかった。
ついでに自分の好みの依代にする為に私を利用したいようだった。
メフィストは言った。
「いいですか、これはチャンスなのです。なにしろ、魔王なんてVIPに人間が遭遇するなんて、ラノベかゲームの世界限定です。
貴女は魔王と大総領の加護を貰える可能性がすんですよ。すごいと思いませんか?」
興奮するメフィストに 私も底辺webのラノベ作家もどきですが。 と、心の中で突っ込んだ。
「加護、そんなものを受けられる前に死んでしまう気もするけれど。」
と、私が渋く笑うと、メフィストは物凄く同意してくれた。
「そうです!貴女が死んでしまったら、他の人間が貴女の貰えた加護を受ける事になるんですよ!憎たらしいでしょ?だから、それは阻止しなくては。」
メフィストは前のめりに言ったけれど、悪魔の加護って、欲しいんだろうか。
「それはどうでもいいよ。まずは完結。その前に剛に会いたいよ。」
私の泣き言にメフィストはすごく同意して深く頷き、そして、どこかへ行ってしまった。
静かな図書館で、私はただ、楽しそうに地理を語るジオの話を聞いていた。
いかん、つい、脱線して他の事を考えてしまう。
学校の授業より切実なスキルアップの情報なのだ。
地中海性気候についてはなんとか理解した。剛…ディアーヌの生まれたなごみの国は地中海性気候のようだから。
で、それが決まると特産物が決まってくる。
なごみの国はワインとオリーブが有名なようだった。
そして、この特産物や自生植物はさまざまに影響してくる。
例えば、王家の紋章とか、姫の紋などだ。
確かに梅とか松を家紋にはしないだろうとは思ったけれど、こんな面倒だとは思わなかった。
ラノベ作家ってみんな、適当に書いてるイメージなのに、と、文句も言いたくなるが、今はジオの地理の執着だけが魔力の源なので仕方がない。
「ありがとう。ジオ。少し休もう。」
私は立ち上がった。どうにも集中できなくなったので休みたかった。
「うん。いいよ。」
ジオの笑顔に私は聞いた。
「じゃあ、コーヒー飲みたい。甘いやつ。ええと、地球は6大陸ある。」
私が言うとジオはその知識でコーヒーを取り出す魔法にする。
「ユーラシア、アフリカ、北と南のアメリカ、オーストリア、あと一つは?」
ジオ、最近、地理のクイズ王である。
「うーんと、北極、じゃなくて、南極大陸!」
ああ、面倒くさい。が、いつ、戦闘になるか分からないから、レベルあげは大切だ。
「正解。じゃあ、チョコレートをプレゼント。」
ジオはチョコをくれる。私はそれを口にしながら久しぶりの甘さにうっとりとする。ああ、なんとかレベルを上げて好きなだけ食べたいわ。
「ありがとう。でも、6大陸じゃ、五芒星は描けないね。」
私はため息をつく。あの、常任理事国の花の精は役に立ったのか知らないけれど、でも、登場するだけでも今は嬉しかった。
「そうでもないよ。そう言う時は南極大陸でダイレクトアタックすればいいんだよ。」
ジオの無邪気な笑顔に甥の幼少期を思い出してほっこりする。
「余りを必殺技にするのね。じゃあ、四国のように足りないときは、どうするの?」
「徳島、香川、愛媛、高知…ここに総人口3500万人とか、四国の最長の川は四十万川とか付け加えたらいいんじゃないかな。」
ジオのアドバイスをメモする。
格好はよくないけれど、知恵はつくのは間違いない。
四国、一瞬、みんな言えなかったし。
「うん。わかった。頑張るよ。」
私がそう言いながらコーヒーを口にしていると騒がしくメフィストが現れた。
後ろには、美しい長い髪の妖精
「セイレンさん!」
思わず駆け寄った。セイレンさんは少し慌てたように笑う。
「すみません。少し遅れてしまって。」
セイレンさんが照れながら微笑んだ。




