オープンワールド40
わかるわ。小説書いていると、本当に言葉がこんがらかる。
私も若向けを意識して、トックリのセーターなんて書かないように気をつけている。タートルネックと表示するように意識している。
でも、気を抜くとトックリが出て来るし、今はタートルネックでもなく、ボトルネックとかいうんだそうだ。
数千年を生きている悪魔なら、混乱して叫んだりするときはいろんな時代の言語が混ざるんだろう。うん。
そんなふうに考えると、なんだかドロッセルに親近感を感じる。
少しリラックスして、思い切ってお願いをすることにした。
「ねえ、私たちがピンチなのは分かったし、私には貴方に危害を加える気はないし、もうここで、本来の姿にかわっくれないかな?
その姿、闇王子のコスプレなんでしょ?確かに、その攻撃は効いてるけれど、なんだか気恥ずかしくて話が出来ないんだもん。」
私の言葉にドロッセルは怪訝そうな顔をする。
「闇王子?」
「あああっ、お願い、声に出して言わないでよ。恥ずかしい。そから、ポーズもしなくていいからっ。」
本当に目のやり場に困る。
ドロッセルは不満そうに、それでいて、胸元が開いているのに気がついて服を魔法で直した。
「これでいいだろう。」
「いや、よくないよ。もうっ。からかわないで、さっさととり着ぐるみとヘルメットの姿になってよ。」
恥ずかしくて叫ぶ。
「なぜ、私がそのような馬鹿げた姿をしなくてはいけない?」
ドロッセルは怒っていた。が、私だって譲れない。
「それが本来の姿なんでしょ?鳥頭のヘルメットと着ぐるみ。コラン・ド・プランシーの挿絵になってるじゃない!」
恥ずかしさに叫ぶと、倍の声量で返された。
「何を申すか!これは吾輩の本当の姿だ!コランドなどという詭弁師に騙されるな、馬鹿者がっ!」
詭弁の悪魔に詭弁師とディすられるコランって一体…
複雑な気持ちで、でも、とりあえず、あやまった。
「ごめん。その姿、昔、好きだった少女漫画の推しメンに激似なんだよ。
いつもは、そんなこと、気にもならないんだけれど、と、いうか、そんなイケメンに会うことないから分からなかったけれど、恥ずかしくって、そっち見れないんだよ(〃ω〃)お願いだから、前のドロッセルの姿になってくれない?」
ああ、なんて敗北感なんだろう。ドロッセルを見れなくても奴のドヤ顔が見るようだわ。
なんだか分からない敗北感に包まれながら、一つの過程を思いつく。
ここはアストラル界で、私の想像を具現化したゲームの世界だ。
悪魔の姿なんて誰も見た事はない。コランも自分のイメージを深層心理から取れ出したに過ぎない。
と、するなら、ここにいるドロッセル姿も、私の深層心理が作り出した幻難ではないかと。
まずいわ…
ここに来て、アストラル界にリアルを感じた。私、もしかしたら、本当に、本物のアストラル界に迷い込んで、本当の悪魔と語り合ってるのだろうか?
ゾッとしたが、批判する自分もいる。
異世界召喚なんて、ゲームじゃなきゃ、そうそう出来るもんではないし、カイムは大総領なのだ。
リアルで私が財務大臣にタメ口で話すくらいありえない、それくらい珍しい事なのだ。
が、カイムには30柱の手下がいるから、その中の1柱がカイムを名乗っているとも考えられる。
ま、そのあたりはいいんだけれど、でも、そうだとするなら…
ここで思考がショートした。
いきなりドロッセルが抱きしめてきたから。
「私を無視をするとは、いい度胸だ。」
耳元で囁かれてぞくっとする。この声、私が闇王子の声だったらいいと思っていた声優さんの声じゃん。
「目を開けろ。それともキスをされたいのか?」
と、イケボで言われると恐怖が半減する。現実離れしていて混乱する。
キス、キス言われるとロンマンスっぽいが、キスは、西洋では契約の意味もあるようだから、判子を押せと脅されるようなイメージなんだろう。
「だったら、だったら、さっさと返信してよ!もう、頭、まわんないいんだもん。それに、二重契約とか出来るの?私、メフィストと契約してるんだから。」
叫んだ。するとドロッセルが離れる。
「目を開けなさい。姿を変えたから。」
ドロッセルの言葉に恐る恐る目を開けた。




