オープンワールド38
昔、私はカッコいい女性を目指していた。
そんな時代だった。外で働く自立しいた女性。それが最高の生き方だとそう信じていた。
が、素敵な男性に愛されて、守られ束縛されてみたいとも思っていた。
それを認めたくなかったんだと思う。
歪んだ願望は、好みのイケメンに捕まって世話される物語を好きになる事で満たしていたんだと思う。
昔の自分にそれを言ったら、顔を真っ赤にして否定するんだろう。でも、コッソリと集めたあの先生のコミックと黒王子の付録のレターセットはしっかり21世紀に持ち越されてる。
まあ、そんなことすっかり忘れていたんだけれど、まさか、その位格好いいイケメン悪魔が私の目の前で、少女時代、夜中にコッソリ眺めていた、お気に入りのレターセットの挿絵のような歪んだ微笑みを浮かべて笑っている!
全く…アストラル界、万歳って気持ちだわ( ;∀;)
「このまま、地獄に落ちたくなかったら、結界を解きなさい。」
突然、ドロッセルの声がしてハッとした。
いかん、少女漫画の夢に浮かれてる場合じゃない。
「できないわ。」
私は叫んだ。だって、解除も何も、どうしてこんなもんが発動してるのかわかんないもん。
こんな変な術式、ミステリーまがじん『みぃ・ムー』にも書いてなかったもん。大体、地理の知識で発動するって、どうなんだろうと思うもん。
と、同時に、参考書の物神、ジオの強い願望を感じずにはいられない。
あの子、本当に地理を教えたかったんだな。
ジオを思うと、ほとんど読まずに卒業し、捨てられた自分の参考書を思い出して申し訳ない気持ちにもなる。
もう少し、あの本を読み込んでいたら、今頃は、もっと…
「おい!」
「はい∑(゜Д゜)」
ドロッセルに声をかけられて返事をした。いかん、つい、現実離れした環境に気持ちがついてゆけなくなる。
「ふざけてる場合ではないぞ。」
ドロッセルに言われて頷く。申し訳ないとは思う。でも、本当にどうにもできない。
「私と地獄に行きたいのか?」
煮え切らない私の態度にドロッセルが皮肉混じりに言う。
「行きたくはないわ。」
私はドロッセルを見ないように視線を外す。もう、こんなキラキラのイケメン顔を見てると、危機感が湧いてこない。
「何を隠している?あまり、賢い選択とは言えないぞ。」
ドロッセルの言葉に同意しかなかった。でも、貴方が少女時代コッソリ好きだったイケメン、ヤンデレ王子に似ていて頭が回らないなんて、そんなこと、絶対に言えない。
「ばか、だもん。それに、どうしても術式を解除はできないの!」
うつむきながら叫ぶ。私を守って抱きしめるドロッセルの逞しい胸元がチラリと見えて辛い。ついでに、自分のバカさ加減も加算されてなお辛い。
「お願い、もう、何も言わないで!そして、私は地獄なんかにいかないわ。
だって、私の術なのよ、私が引っかかるなんて間抜けな術式、使うわけないでしょ。」
と、私はドロッセルから力任せに離れた。
もうっ、心臓に悪いんだから。ああ、本当にそうであって欲しい。
「何か、作戦があると言うことか、まあ、いい。術を解かないなら一緒に堕ちて行くのみ。」
と、笑うドロッセルをコッソリと覗き見る。
ああ、こんなシーン、漫画にあったわ。天国に行けるとは思ってなかったけれど、地獄、いかなきゃいけないのかな。私、こんな陽気で間抜けな死に方するんだろうか。
不思議と怖くはなかった。
なんだか、みんな夢の世界のようでどうでもいい気持ちになる。




