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オープンワールド20


「スパダリ候補ですって?あんた、何歳(いくつ)よ?」

私はスパダリ候補を睨んだ。が、ヤツは不敵に笑い、そして、優雅な声で答えた。

「永遠の23才」

「Σ(T▽T;)はあっ?」

ヤバイ人だよ。人かとうかもわからないけど…


私は、スパダリ候補を刺激しないように逃げようと思った。


永遠の23才なんてフレーズからしてヤバイけど、何より、現在、ディアーヌは3才。

20年も年上なんて、絶対に無理だ。


ネットじゃ、女子高生っぽいコメントで、あの名作『あしながおじさん』がキモいとか言われてるんだから(T-T)


20年も上なんて、考える値もない。


と、回れ右をして、ふと考えた。


永遠の23才…と言うことはつまり、いつかは年が近づくと言うことじゃないだろうか?


確かに、ディアーヌの相手には不適切な気がする。でも、もし、彼が図書館にすむ妖精だったら…


私は金鉱をドブに捨てようとしているのではあるまいか?


ちょいと前に妄想した図書館の妖精の話が頭をめぐる。


幼い少女…

秘密の出来事…

妖精との淡い恋…


はぁぁっ、そうよ、そうゆうのに飢えているのよ!

なんか、最近の少女漫画って、すごぉーく発展してるんだもん!


キッスとか、そうゆうのはいらないのよ。

あってもラストに額でいいのよ。

淡くて、切なくて…


夏の金魚鉢に太陽が照らして偶然出来た小さな虹のように、人知れず輝く美しい恋物語!


ああっ…懐かしいわ(>_<)


そう、私は、人気ジャンルで一旗あげるんだもん。

もう一度、死ぬ前に昭和の少女漫画の新作を見るんだもん。


その為には、イケメンが描けなければダメなんだわ。


そう、私は、服とか、イケメンとかが良くわからない。

良くわからないと言うのか…上手く、説明できない。

いや、確かに、昔のテレビにはハンサムがいた。

テレビの司会者も、家族や友人も皆認めるハンサムが!

そんなハンサムを説明する事は可能だ。

でも、これを読者がときめくように描写するとなると難しい。


これ、やってみると分かる。

絵と一緒で描けることは描けるけど、人を共感させるのは難しいし、個人差が出る。


私の場合、男を口説くセクシーな台詞は苦手だが、

剛を口説く、美味しそうな食べ物の描写にはちょっと自信がある。


まあ、そんな感じで、説明は出来ても、人を共感させる描写は難しいのだ。


ハンバーガー一つにしても、ただ説明しても旨そうにならない。


まずは、湯気、香り、いつもとのちょっとした違い…

季節感や限定素材。


一口、口に入れた時の感触、鼻腔をくすぐる香り、舌を惑わせる食感と味…


香りと同じく、味覚もまた、初めの味、真ん中の味、後味と食後の余韻…


細かく観察したら、オーケストラの曲の如く複雑な旋律に酔うような…食とはそんなものなのだ。


が、イケメンとかハンサムを描写するとなると、途端に、この超絶感覚が消える。

小5の頃の事だ。

漫画雑誌は友達同士で別の雑誌を買って貸し借りした。


で、昔は、初めのページのとじ込みに、たまにアイドルのミニポスターがついている事があった。


私は、2次元の王子様推しなので、リアルな男は興味がなかった。

寧ろ、夢の少女漫画の世界にリアルな男の写真なんて迷惑だとすら考えた。


ある日、そんな話をしていると、雑誌の名前を聞いて、あまり親しいとは言えないクラスメートが話しかけてきた。


しかも、人が私の回りにいないときにコッソリと。

で、話題の新人綴じ込みアイドルのポスターについて恥ずかしそうに聞いてきた。


「そのポスター、貰えないかしら?」


彼女からしたら、厚かましくて、恥ずかしい申し出のようだった。

でも、それをおしても、欲しいと思う衝動が彼女を突き動かしていた。


告白されるって、こんな感じかな?


と、私はボンヤリ思いながら混乱していた。

「あんなの…本当に欲しいの?」

私の質問に、彼女はうれし、恥ずかし、と言った顔で何度も頷いた。


ニキビ顔の中学男子の写真のどこがいいんだろう?


あぁぁぁぁ〜(〃〜〃)


恥ずかしい…そのポスターの男子は後に凄く人気のアイドルになった…


ああ、あの時から、私、1つも進化してないんだわ。


イケメン…ときめきのイケメン描写!

異世界恋愛で一旗あげるには、これが一番必要なんじゃないだろうか?


寧ろ、手から魔法を出すよりも!!


頑張るのよ、私!

このままじゃ、死んでも死にきれないわ。


私は覚悟を決めた。


ここにいる永遠の23才のスパダリ候補をなんか、いい感じに描写する。

なんか、知らないけど、自分でいってるんだから、イケメンには違いない。


私は、方向転換してスパダリ候補様に勇気を出して近づいた。

そして、目を大きく見開いて、奴をじっくりと観察した。

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